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内診でわかること
不妊症治療の検査はたくさんあるため、いつまで続くのかと不安に思う人もいるかもしれません。検査の目的がわかると、納得感が得られ、治療に前向きな気持ちになれます。
初診の際、問診に続いて行われるのが内診です。内診では、医師による視診、触診が行われ、他の検査ではわからない病気の発見に役に立ちます。視診では腟や子宮頸部の炎症や傷、びらんの有無を確かめます。また、触診では、腟や分泌物、子宮の大きさや動き、卵巣の様子などを確認します。このとき、細胞や粘液を採取する場合もあります。検査時間は3分程度です。
各時期に行う超音波検査
初診では、内診に続いて超音波検査が行われます。プローブという超音波を出す機器を膣内に入れるか、腹部の上からプローブを当て、子宮や卵巣をモニターに映し出して調べます。初診時の超音波検査では、子宮筋腫や卵巣腫瘍、子宮内膜ポリープ、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)など、妊娠の障害となる疾患の有無を確認します。
超音波検査は、初診だけでなく、月経周期の各時期にも行います。リアルタイムで卵胞径の測定や子宮内膜の状態を観察することができるため、排卵日の予測には必須の検査です。検査時間は3~4分程度です。
低温期に行う2つの検査
女性の基礎体温は、月経期間(3~7日)から排卵するまで低温に推移し、この時期を低温期(卵胞期)と呼びます。ここでは、低温期に実施する2つの検査を紹介します。
子宮卵管造影検査
子宮卵管造影検査では、不妊症の原因となる子宮奇形、子宮筋腫、子宮内膜ポリープ、卵管閉塞などの疾患の有無を確認します。腟から子宮内にカテーテルを通し、造影剤を注入してX線撮影を行います。子宮の形や卵管がはっきりみえるので、卵管閉塞があれば位置も確認できます。ただし、妊娠中や不正出血している女性、造影剤アレルギーのある女性は実施できません。検査時間は5~10分程度です。
ソノヒステログラフィー
ソノヒステログラフィーは、生理食塩水を膣から子宮に注入して、超音波検査で子宮内膜の状況を確認する検査です。子宮内膜の構造がはっきりわかるので、子宮内膜ポリープや子宮筋腫、腫瘍などの疑いがある場合には有益な検査です。とくに造影剤アレルギーがあり、子宮卵管造影検査ができない場合に有用です。検査時間は5~10分程度です。
ホルモン検査でわかること
不妊症の検査では、さまざまな目的でホルモン検査が行われます。血液中のホルモン値は月経の周期で変化するので、ホルモン検査は目的に合った時期に行います(表1)。なお、排卵誘発剤や低用量ピルなどのホルモン剤の影響を受けるため、服用した場合、通常は3週間以上、休薬して実施します。
表1 主なホルモン検査
ホルモン名 | 検査時期 | 目的 |
卵胞刺激ホルモン(FSH) | 卵胞期初期 | 卵巣予備能、視床下部、下垂体の評価 |
黄体形成ホルモン(LH) | 卵胞期初期 | 視床下部、下垂体の評価、PCOSの診断 |
排卵期 | 排卵のタイミングを予測 | |
プロラクチン(PRL) | 卵胞期初期 | 高PRL血症の場合、排卵発育不全や黄体機能不全の疑い |
エストラジオール(E2) | 卵胞期初期 | 視床下部、下垂体、卵巣機能の障害の評価 |
黄体期中期 | P4とともに着床にかかわる黄体機能の評価 | |
プロゲステロン(P4) | 黄体期中期 | 着床にかかわる黄体機能の評価 |
甲状腺刺激ホルモン(TSH) | 随時 | 甲状腺機能が低下すると、不妊の原因となることがある |
遊離型サイロキシン(FT4) | ||
抗ミュラー管ホルモン(AMH) | 随時 | 月経周期に影響を受けないホルモン。この値が低いと卵巣の予備能力が低下している |
吉村泰典(監), 生殖医療ポケットマニュアル. 医学書院 2014を参考に作成
その他の検査
クラミジア感染症の検査
クラミジア感染症は、クラミジア・トラコマティスという細菌により引き起こされる性感染症の1つです。性感染症の原因の半数を占めるといわれており、不妊症の原因となるさまざまな病態を招きます。
女性の場合、感染は子宮頸管から、子宮内膜、卵管、腹腔にまで広がり、炎症を起こし、卵管の癒着、閉塞の原因にもなります。膣の分泌物の検査や血液検査で、感染の有無を確認します。
抗精子抗体検査
何らかの原因で、精子の運動や受精能力を阻害する抗精子抗体ができることがあります。血液検査でわかりますが、複数回行う必要があります。
フーナーテスト
フーナー(Huhner)テストは、精子と頸管の粘液の相性を調べる検査です。相性が悪いと頸管内で精子が動けなくなり、不妊症の原因になります。
排卵の直前は、頸管粘液のねばりけが低下して精子が通りやすくなるため、検査はこの時期に行います。性交後24時間以内に女性に受診してもらい、腟内粘液、頸管粘液を採取し、顕微鏡で精子の数、運動状態を確認します。男性の体調による影響を考慮し、複数回行うこともあります。
これらの検査の目的を理解して、リラックスして検査を受けましょう。
《参考文献》
吉村泰典(監), 生殖医療ポケットマニュアル. 医学書院 2014