おりものは妊娠においても大切な役割を果たします。
また、おりものの状態は月経周期で変化するため、おりものをチェックすることで妊活のタイミングを図るのに役立つでしょう。

この記事では、排卵期のおりものの変化や役割、排卵日を予測する方法について解説します。

「おりもの」の役目とは?

おりものは、腟内や子宮から出る分泌物であり、通常はわずかな匂いがある程度で、乳白色や透明の色をしています。月経周期によって、色や匂い、性状が変化することもあります。

普段はわずらわしく感じるおりものですが、実はさまざまな役目があります。

腟内環境の維持

おりものが分泌されることで、腟内が潤って環境が整い、摩擦や乾燥、炎症から粘膜を守る働きがあります。さらに、腟内を弱酸性の環境に保つことで、細菌の侵入を防げます。

老廃物を押し流す自浄作用

腟内に繁殖した細菌や子宮の古くなった細胞がある場合、おりものの量が増加し、老廃物を押し出す自浄作用があります。おりものとともに老廃物が体外へ排出され、腟内を清潔に保つことができます。

受精のサポート

おりものの分泌により、精子が子宮頸管を通りやすくなることで、卵子にたどり着きやすくなる受精のサポート役も担っています。排卵日にかけておりものが増えたり、伸びるおりものになるのはこのためです。

そもそも排卵とは?妊娠する仕組み

排卵は妊娠に欠かせないプロセスのひとつです。月に一度、卵巣から成熟したひとつの卵子が排出されることを「排卵」と呼び、排出された卵子と精子が卵管内で出会って受精します。その後、受精卵(胚)が子宮に着床することで妊娠に至る仕組みです。

妊娠しやすいタイミング「排卵期」

排卵日の前後は「排卵期」と呼ばれ、ゼリー状に伸びるおりものが増加します。おりものが増加することで、腟内の環境が整い精子が卵子にたどり着きやすくなることから、排卵期は妊娠しやすいタイミングでもあります。

排卵日前後の妊娠率画像

〈参考資料〉
1)Practice Committee of the ASRM. Fertil Steril. 2017; 107(1): 52-8.

最も妊娠しやすいのは排卵日の2日前といわれており、妊活においては排卵日を予測して夫婦生活をとることで、妊娠の可能性を上げられます。

タイミング法についてはこちらの記事でも解説しています。

> 「タイミング法とは?正しい方法や成功率を高めるポイントを解説」を読む

おりものの状態からみる排卵・月経周期

ここからは、タイミング別で変わるおりものの状態をそれぞれ解説します。

排卵日直前:ゼリー状ののびるおりもの

排卵日直前は、粘度のあるゼリー状になるのが特徴です。卵の白身のような透明な色に変化し、長くのびるようになります。
このおりものの状態のときが、夫婦生活をとるベストなタイミングです。精子と卵子の寿命の関係から、排卵日が来てからではなく排卵日3日前~当日にかけて性交することで、より妊娠確率を高められるでしょう。

排卵後:白いどろっとしたおりもの

排卵期を過ぎると量が少なくなり、色は白く濁ってどろっとしていることが多くなります。妊娠していなければ、おりものの量は生理開始日まで徐々に減っていくのが一般的です。

生理(月経)後:さらりとした少量のおりもの

生理3日目くらいまでは、おりものはほとんど出ません。それ以降は少量でさらりとしたおりものとなります。生理が終わり、排卵期が近づくと再びおりものの量と粘度が増えていきます。

おりもので排卵のタイミングを予測するには?

おりものだけで正確な排卵日を予測することは難しいものの、ある程度の目安となります。妊活で排卵日を予測する場合、以下のような方法があります。

おりものの状態を確認する

生理が終わり、排卵期が近づくにつれて徐々に量や粘度が増していきます。サラサラだったものがとろみを帯びて、色も透明から半透明くらいに変わっていきます。つまむと長く伸びるようになったら、卵子が成熟して排卵期が来たサインです。

排卵日前は、精子がスムーズに子宮まで行き着くことができるよう、頚管粘液とも呼ばれるおりものを多く分泌するようになります。この頚管粘液は排卵前にしか分泌されません。その影響で、普段のおりものはとくに粘り気を帯び、ゼリー状になります。

このようなおりものの状態をチェックすることで、排卵日の大体の予測が可能です。特に生理不順の方は、おりものをチェックして排卵日に目星をつけることで、妊活がしやすくなるでしょう。

排卵おりものシートを使用する

最近は、おりものの成分から排卵日を予測できる「排卵おりものシート」も活用できます。シートに成分を判定できる箇所があり、判定サインの反応をチェックすることで、妊活のタイミングを把握できます。通常のおりものシートと同じように使える手軽さも特徴です。

ただし、排卵おりものシートはあくまで目安であり、シートに反応があった日が確実に排卵日であるとは言い切れません。参考程度に活用することをおすすめします。

より正確性を求める場合は、排卵日予測検査薬(排卵チェッカー)があります。薬局などで購入できますが、薬剤師による説明や確認が必須です。

基礎体温の記録をつける

おりもの以外でも、基礎体温から排卵日の予測が可能です。女性の基礎体温は通常、卵胞が育つ低温期と排卵後の高温期の2つに分かれます。

女性の基礎体温画像

排卵するとプロゲステロンというホルモンの分泌が増え、基礎体温が上がります。その後高温期となり、次の月経まで高温で推移します。

このような性質から、体温の急激な上昇が見られた場合、事後的に排卵があったと予測できます。基礎体温だけでは事前の排卵日予測が難しいですが、記録をつけることで月経周期や身体のリズムも把握できるため、おりものの変化と合わせて記録しておくのがおすすめです。

ただし、基礎体温はホルモンバランスの乱れや生理不順の場合に体温が安定せず、ズレが生じることは留意しておきましょう。

「グミ状のおりものの塊」が出るのはなぜ?

グミのような白い塊のおりものが出る場合があります。このようなおりものは、状態や時期によって考えられる原因が異なります。

よく考えられるのは時期的な要因です。排卵期や生理前、妊娠時に、このようなおりものが出る可能性があります。この時期は白く濁ってどろっとしたおりもので、下着についたものが長時間経つと、白いグミのような塊に見えることもあります。また妊娠時は菌の侵入を阻害するために、おりものに粘度が増します。個人差がありますが、どろっとした白い塊として出ることもあります。

いずれも痛みやかゆみなどの症状がないのであれば、正常の範囲内として大きな心配は不要です。

次に考えられるのは、感染症などが原因で生じる場合です。
特に粒のようなポロポロの白い塊があり、陰部のかゆみを感じている場合は、カンジタ腟炎を発症している可能性があります。よくカッテージチーズや酒粕のようなポロポロの状態、ヨーグルトのようなクリームの状態などと例えられます。

これにかゆみがともなう場合は、何らかの病気の可能性が考えられるため、早めに婦人科のクリニックを受診しましょう。

こんなおりものには注意!おりものでわかる体調チェック

通常は排卵日前後にゼリー状になるおりものですが、なかには排卵日でないのにゼリー状になってしまう場合があります。またおりものが赤褐色や黄緑色など、普段見ない色に変化したり、異臭がしたりするケースもあります。

おりものの変化は、何らかの病気のサインかもしれません。
以下の表に、おりものの状態別に考えられる主な疾患をまとめました。


おりものの状態 考えられる疾患 症状 原因
ポロポロした白いおりもの カンジタ腟炎 かゆみ・痛み・排尿痛・熱感 主に免疫力の低下(ストレスや疲労)
大量の水っぽいおりもの クラミジア感染症 おりもの増加・下腹部痛・熱感 主に性交渉による感染
生臭い灰色・白のおりもの 細菌性腟症 おりもの増加・かゆみ・炎症 主に免疫力の低下(ストレスや疲労)
黄色く泡立つおりもの 腟トリコモナス症 激しいかゆみ・排尿痛・痛み 主に性交渉による感染
赤・茶・ピンクのおりもの 子宮頸がん・子宮体がん 下腹部痛・性交痛・不正出血 主に性交渉によるHPV感染
黄・緑の悪臭がするおりもの 淋病性感染症 おりもの増加・腫れ・かゆみ・下腹部痛・性交痛・不正出血 粘膜接触による感染

妊娠によっておりものの状態は変化する?

排卵や月経のサイクルに合わせておりものの性質・量は日々変わりますが、妊娠した場合はどうでしょうか。妊娠が始まると体内のホルモンバランスが大きく変わり、おりものにも以下のような特徴的な変化が現れます。

おりものの量が増える

通常は排卵日を過ぎると、生理日まで徐々におりものの量が減っていきます。しかし妊娠した場合は、黄体ホルモンの分泌が続くことでおりものの量が増えていきます。そのため、排卵後もおりものが減らず、逆に増えるなどの変化があった場合は、妊娠の可能性が考えられるでしょう。

妊娠中は、さらっとした水っぽい状態のおりものが多く見られるとされています。ただし個人差があるため、必ずしも同じ変化が見られるわけではありません。

茶色やピンク色のおりものが出ることも

妊娠初期には、茶色やピンク色のおりものが出る場合があります。このようなおりものは、受精卵(胚)が子宮内膜に着床する際に生じる「着床出血」が原因として考えられます。微量の血液を含んだおりものが、性交渉から約1〜2週間後に見られた場合、着床出血の可能性があるでしょう。

着床出血は1〜2日程度で終わることが一般的で、長く続く場合や強い痛みをともなう場合は早めにクリニックに相談してください。

不妊治療についてお悩みなら六本木レディースクリニックへ

​​おりものは、腟内を清潔に保つ自浄作用や妊娠しやすくするための役目があります。月経周期によって状態が変化し、排卵時期を予測できる目安としても活躍します。さらに、思いもよらない疾患のサインとしても役立つため、特に妊活中や不妊治療中は、おりものの状態もチェックしておくとよいでしょう。

六本木レディースクリニックでは、人には話しにくい不妊治療のお悩みや疑問について、親身にお応えしています。患者さまのお話を伺ったうえで、一人ひとりの不妊原因や身体の状態に合ったオーダーメイド治療をご提案しています。不妊治療を検討中の方は、お気軽に当院にご相談ください。

六本木駅・池袋駅から徒歩3分!
当院は六本木と池袋にクリニックがございます。


仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

ドクターのご紹介

帝京大学医学部付属溝口病院、母子愛育会総合母子保健センター愛育病院、国立成育医療研究センター不妊診療科を経て、2019年より現職。
資格・所属学会は、日本産科婦人科学会専門医のほか、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、日本産婦人科内視鏡学会。

医師からのメッセージ

当院は、不妊検査やタイミング指導、人工授精といった一般不妊治療から高度生殖補助医療までの不妊治療を専門としたクリニックです。
痛みが心配な方、ご安心ください。卓越した技術と最大限の配慮をお約束します。
また夜間や休日も診療を行い、不妊治療の苦労を少しでも軽減できるように努めています。

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院長 小松保則医師