不妊症とは

不妊症とは?

「不妊」とは、妊娠を望む健康な男女が避妊をしないで性交をしているにもかかわらず、「一定期間」妊娠しないことをいいます。日本産科婦人科学会では、この「一定期間」について「1年というのが一般的である」と定義しています。

妊娠する仕組み

妊娠する仕組みとして、排卵、受精、受精卵の移動、着床というプロセスがあります。

1排卵
「排卵」とは卵巣内で育った卵胞(卵子が入っている袋)から成熟した卵子が飛び出し、卵巣を出て行くことを言います。卵子はその後卵管に取り込まれ、精子が来るのを待ちます。

2受精
性行為により男性側から放出された精子は、膣から子宮頸管を通り、子宮内に入ります。一般的に1回の射精で1〜3億個程の精子が放出されますが、その寿命はおよそ72時間で、卵子のいる待つ卵管までたどり着ける精子は数十個程度と言われています。この険しい道のりを超え、なお、卵管で出会った精子と卵子が融合することを「受精」といいます。

3受精卵の移動
無事融合した受精卵は、卵管から子宮内膜まで移動します。ホルモンの影響によりふかふかのベッドのように厚くなった子宮内膜に受精卵がもぐりこむことを「着床」といいます。着床が完了すると、妊娠が成立します。

妊活を始めて1年が不妊症の目安

「妊活を始めてから2年も経つのに、妊娠できません」「不妊症かもしれない…」と思っても、不妊症かどうかを検査する方法やどのタイミングで検査すればよいか分からない方が少なくありません。

避妊せずに性交をし、1年経っても子どもができなければ、検査せずとも不妊症の可能性が高いといわれています。

不妊症と病気の違い

一般的に病気とは、個人の健康や生命を脅かすものと考えられますが、不妊症は「妊娠をしない状態」のことを意味します。病気も含め原因はさまざまですが、「妊娠しやすい時期に性交をしなかったから妊娠できなかった」や「ストレスで妊娠がしづらい」など、いわゆる病気とはいえないことが原因となっている場合もあります。
不妊治療とは、可能な限りその原因を特定することで、速やかに妊娠という結果に導くことです。また、不妊の原因が不明の場合でも、治療法によって解決策を見出すことが重要となってきます。

不妊症の原因

「不妊症」と聞くと女性側に原因があると思われがちですが、実は男性側に原因がある可能性も否定できません。このため不妊問題の原因を調べて適切な治療を行っていくためには、夫婦で協力することが必要です。
治療は、基本的に不妊の原因によって決まります。原因が詳しくわかれば、より明確な治療ができ、成功の確率も高くなります。

女性側の原因

女性側の不妊症の原因はさまざまですが、大きく分けて以下の5つの原因に分類されます。そのほか、年齢による不妊や原因不明であることも多くあります。

原因概要
排卵の
問題
卵胞が育たない、排卵が起こらないといった問題があること。
原因としては、卵巣機能自体に問題がある場合と脳の視床下部や下垂体に問題がある場合などが考えられる。
卵管の
問題
卵管狭窄や卵管閉塞など、卵管の通過性に問題があること。
原因としては、クラミジア感染症、子宮内膜炎、腹腔内の炎症などが考えられる。
子宮の
問題
子宮筋腫や子宮内膜ポリープがあることで着床がうまくできずに不妊になること。
子宮頸管の
問題
子宮の入り口である子宮頸管に以上があることで精子が通過できずに不妊になること。
頸管の炎症やポリープ、頸管粘液の量が少ないことなどが問題となる。
免疫の問題免疫異常により女性が抗精子抗体などの抗体を持っていると、
子宮内への精子の侵入を妨げるため不妊となる。

男性側の原因

男性側の主な不妊症原因としては、遺伝子的要因や性機能不全による先天性のものと、ストレス、アルコールや喫煙、機能損傷などの後天性のものが挙げられます。生活習慣が要因となり、精子数が減少する場合もあります。

男性の不妊症についての詳細は「男性不妊・男性不妊治療について」でご紹介していますのであわせてご覧ください。

双方に考えられる原因

女性の加齢による不妊についてよく耳にしますが、これは女性だけでなく男性にも起こりうることです。女性の場合は30歳を過ぎると妊娠する確率はだんだん減っていくといわれています。男性の場合は35歳から精子の質が低下する傾向にあるため、不妊の原因のひとつでもあるといわれています。

不妊治療の種類と流れ

不妊治療を始める場合、そもそもどのような不妊治療があるか、どの治療法が自分の身体に合っているかなど、分かりづらい部分がたくさんあるでしょう。
ここでは、不妊治療の種類とそれぞれの流れを解説します。

タイミング法

「タイミング法」とは、排卵日を把握することで最も妊娠しやすいタイミングに性交をする方法です。医師の指導をもとに、月経周期や過去の排卵を把握してから排卵日を想定し、より効果的な性交タイミングを計画します。

人工授精

人工授精

「人工授精」とは、運動率の高い精子を、排卵日にあわせて子宮内に注入する不妊治療です。

超音波で卵胞の発育を把握し、卵胞が成熟したタイミングを予測し、人工授精を行う日付を決定します。 人工授精当日は子宮内に管を使って遠心処理した精液を注入します。

人工授精は、タイミング法で妊娠できなかった場合の、次のステップとして受けられる方が多くいます。

人工授精(AIH)とは:治療の流れや妊娠率について

体外受精

体外受精

「体外受精」とは、女性の卵子を体外に取り出し(採卵)、男性の精子と結合させる治療法です。主な流れは、薬を使って卵胞を育て、採卵できるようになるまで育てます。その後、採取した卵子を男性の精子と体外で結合させ、できた受精卵を子宮に戻して着床させます。

体外受精(IVF)とは:治療の流れと当院のポイント

顕微授精

顕微授精

「顕微授精」とは体外受精の治療のうちのひとつで、体外受精とは受精の方法が少し異なります。体外受精はシャーレの中で卵子と精子を掛け合わせ自然に受精させるのに対し、顕微授精では一個の卵子に対し一個の精子を直接注入して授精をさせます。

精子の数が少ない、受精障害があるなどといった理由で体外受精では受精に至らなかった場合に、次のステップとして顕微授精を選択される方が多くいます。

顕微授精(ICSI)とは:方法や料金について

監修医師紹介

小松 保則

六本木レディースクリニック

小松 保則医師

(こまつ やすのり/Yasunori komatsu)

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  • 経歴
  • 帝京大学医学部付属溝口病院勤務
  • 母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
  • 国立成育医療研究センター不妊診療科
  • 緑風荘病院 血液浄化療法センター
  • 六本木レディースクリニック勤務
  • 資格・所属学会
  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 日本産科婦人科学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本産婦人科内視鏡学会

体外受精・不妊治療の六本木レディースクリニック