2022年に保険適用となった不妊治療ですが、人によっては依然として治療費が重い負担となることもあります。継続的に無理なく治療を受けるためにも、なるべく費用負担は抑えたいところです。
そこで活用したいのが医療費控除ですが、控除の対象となるもの、対象外となるものがあり複雑に感じている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、不妊治療の医療費控除や確定申告の方法、さらに費用負担を軽減する方法をご紹介します。
目次
そもそも「医療費の控除」とは?
医療費控除とは1年間に世帯でかかった医療費の合計が、10万円以上となった場合に適用される制度です。
確定申告をすれば、納付した所得税の一部を還付金として取り戻すことができます。
医療費控除の対象となる不妊治療
不妊治療の費用は、所得税法施行令第207条に基づき、医療費控除の対象となっています。
通院に必要となる交通費や、薬局で購入した薬なども医療費控除の対象となるため、1年を通して領収書の保管や、記録をつけておきましょう。
控除対象となる不妊治療の主な項目を以下で紹介します。
不妊治療(人工授精・体外受精など)の費用
不妊治療に関わる医師の診療費や治療費は控除として認められます。
さらに、2022年4月からは不妊治療が保険適用となる法改正がありました。
現在控除の対象となるのは、自己負担で支払った3割分です。
一般不妊治療(タイミング法・人工授精)はもちろん、生殖補助医療(体外受精・顕微授精など)も、原則3割負担となります。
マッサージ指圧師、鍼師、灸師、柔道整復師の施術費用
マッサージ指圧師、鍼師、灸師、柔道整復師の施術は、医療費とみなされ控除の対象です。不妊治療の一環として、体質改善のために施術を受ける場合なども含まれます。
医薬品・漢方薬の費用
病院で処方された内服薬・外用薬・漢方薬などは控除の対象です。
そのほか、不妊治療のために個人で購入した漢方薬なども、医薬品として認められるものは控除の対象となります。
通院にかかった交通費
通院のためにかかった交通費は控除の対象です。
ただし、電車・バスなどの公共交通機関に限られます。ガソリン代・駐車場の利用料金などは対象外となります。またタクシー代も原則対象となりません。
医師の紹介料
高度な不妊治療を受けるためにクリニックを変えることがあります。不妊治療の現担当医から、紹介状を作成してもらう際の紹介料も控除の対象です。
医療費控除の対象外となる不妊治療
医療費控除の対象とならない費用は、以下のような項目です。
- 通院のためのタクシー代・ガソリン代・駐車場の利用料金
- 健康増進用の薬やビタミン剤の購入代
- 妊活用サプリメントの購入代
- リラクゼーション目的のマッサージ代
- 健康診断の費用
- 医師に対する謝礼金
上記の項目は不妊治療のための直接的な費用として認められず、控除の対象外となります。
医療費控除でいくら還付金が戻る?金額の計算方法
控除として認められる費用は、不妊治療の費用だけでなく、世帯全体がかかった治療費全般を含められます。
離れている家族を扶養している場合は、その家庭でかかった治療費も医療費控除の対象です。
医療費控除の適用には年間10万円以上が目安ですが、所得金額によってはそれ以下でも適用されることがあります。
医療費控除はかかった費用全額だけ税金が安くなるのではなく、計算式に当てはめて考えることが必要です。具体的な計算方法や手順をご紹介します。
1月1日~12月31日の医療費を計算する
まずは1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費を計算しましょう。医療費の計算ができるように、領収書などは保管しておく必要があります。
会社や自宅に届く医療費の通知書「医療費のお知らせ」でも確認が可能です。
医療費控除対象額を計算する
1年間に支払った医療費の合計額がわかったら、医療費控除額を計算します。
このとき、総所得金額の合計が「200万円以上の人」と「200万円以下の人」で計算式方法が違ってきます。
総所得金額等が200万円以上の場合
200万円以上の人の計算式は、次のとおりです。
具体的な例を挙げて計算すると、以下のようになります。
50万円 - 20万円 - 10万円 = 20万円
上記の例の場合、医療費控除額は20万円です。
総所得金額等が200万円以下の場合
200万円以下の人の計算式は、次のとおりです。
200万円以下の場合は10万円を差し引くのではなく、総所得金額等の5%の金額を差し引いて計算します。
具体的な例を挙げて計算すると、以下のようになります。
30万円−10万円-8万円(160万円×5%)=12万円
上記の例の場合、医療費控除額は12万円です。
医療費控除対象額に所得税率をかける
医療費控除対象額がわかったら、その額に所得税率をかけることで戻ってくる金額が計算できます。所得税率は、所得金額によって異なります。
所得金額に応じた所得税率は、以下の表から確認できます。
| 課税対象の所得金額 (給与所得控除−所得控除の合計額) |
税率 |
|---|---|
| 1,000円〜194万9,000円 | 5% |
| 195万円〜329万9,000円 | 10% |
| 330万円〜694万9,000円 | 20% |
| 695万円〜899万9,000円 | 23% |
| 900万円〜1,799万9,000円 | 33% |
| 1,800万円〜3,999万9,000円 | 40% |
| 4,000万円〜 | 45% |
引用元:国税庁「所得税の税率」
所得税率をふまえて、還付金の計算式は次のとおりです。
具体的な例を挙げて計算すると、以下のようになります。
12万円×5%=6,000円
上記の例の場合、還付金として6,000円戻ってくることがわかります。
医療費が10万円未満でも控除が受けられる場合
医療費控除は、原則として年間の医療費の合計が10万円以上の場合に適用される制度です。ただし、総所得が200万円未満の方は、「10万円」ではなく総所得の5%を超えた部分が控除の対象となります。
医療費控除を受けるのは、生計をともにする家族であれば誰が申告しても構いません。不妊治療の費用が年間10万円以下の場合は、総所得が少ない人で申告すると控除の対象になる可能性があります。
ここでいう「所得」とは、必要経費を引いた金額のことで、正社員やパートとして働いている場合は、給与所得控除を引いて考えます。給与所得控除額は収入金額に応じて定められており、収入額によって異なります。
控除対象となる具体例
医療費が10万円未満でも控除が受けられるケースを、以下で具体例で見てみましょう。
〈夫の場合〉
- 給与収入:500万円
- 給与所得控除:約154万円
- 所得:約346万円
→医療費控除の基準は10万円となり、受けられない
〈妻の場合〉
- 給与収入:130万円
- 給与所得控除:65万円
- 所得:65万円
→総所得が200万円未満のため、所得×5%が控除の対象に
妻の場合の控除基準は、65万円×5%=3万2,500円
つまり、医療費が3万7,500円を超えていれば、妻が確定申告をすることで医療費控除の対象になります。
不妊治療の医療費控除を申告するには?手順と流れ
医療費控除の制度を利用するには、確定申告をすることが必要です。手順や流れは以下のようになります。
- 確定申告の必要書類を揃える
- 確定申告書を作成する
- 確定申告書を税務署に提出する
- 還付金の入金を確認する
確定申告書は、国税庁のホームページよりダウンロード可能です。または税務署にて直接申告書がもらえます。
確定申告書に必要事項を記載し、会社や自宅に届く「医療費のお知らせ」と一緒に税務署に提出します。
e-Taxを利用してオンラインで提出することも可能です。提出したのち、内容に問題がなければ指定の口座に還付金の振込が確認できるはずです。
医療費控除に必要な書類
医療費控除を受けるために揃えておきたい必要書類は次のとおりです。
- 確定申告書
- 医療費のお知らせ(医療費控除の明細書)
- マイナンバーカード
- 本人確認書類
- 医療費の領収書
領収書の提出は不要になりましたが、確定申告書の作成に必要なほか、自宅で5年間保管するよう求められています。誤って捨てないようにご注意ください。
不妊治療の医療費控除、知っておきたいポイント
不妊治療の医療費控除をかしこく利用するために、知っておくべき点や注意点がいくつかあります。以下のポイントを押さえておきましょう。
夫婦の治療費は合算して申告可能
医療費控除対象の治療費は、世帯全体でかかった治療費全般を含めることができます。
つまり別々で申告する必要がなく、夫婦で合算して申告ができるのです。
納税者本人だけでは10万に満たない場合も、合算することで控除が受けられることもあります。不妊治療以外の医療費ももちろん対象です。
「所得が多い側」が申告したほうがよいケースも
医療費控除は合算して申告できるため、夫婦どちらが申告しても基本的に問題ありません。しかし、夫婦共働きの場合などは「所得が多い側」が申告したほうがよいケースがあります。
医療費控除は、支払った医療費そのものが戻る制度ではなく、課税所得を減らすことで所得税や翌年の住民税が軽減・還付される仕組みです。そのため税率の高い「所得が多い側」が申告したほうが、還付額が大きくなる傾向があります。さらに住民税額は、健康保険の高額療養費の自己負担区分や保育園の保育料算定にも影響する場合があるため、原則として所得の多い側で申告するのが有利といえるでしょう。
「領収書は捨てずに保管する
医療費控除の申告をする際には、医療機関等からもらった領収書を用意する必要がありますが、平成29年分から領収書の添付が不要になりました。
領収書は手元に置いておき、確定申告書類を作成する際に使います。
また、確定申告後も使った領収書は、原則5年間の保存義務があります。領収書は捨てずに必ず保管しておきましょう。
助成金と医療費控除は併用が可能
県や市区町村ごとに、不妊治療の独自の助成金制度を設けている場合があります。助成金と医療費控除は併用が可能なため、活用することで費用を抑えられます。
ただし、助成金などで補填された金額は、医療費控除の対象となる医療費から差し引く必要があります。つまり、実際に自己負担した金額のみが控除の対象です。
なお、東京都では独自に「不妊検査等助成金」「先進医療助成金」などの制度があります。
不妊治療の助成金については、以下の記事でも解説しています。
>「保険適用後の不妊治療の助成金について|対象の治療や費用を抑える方法」を読む
医療費控除以外で不妊治療費の負担を減らす方法
不妊治療は保険適用となったものの、3割は自己負担であり、繰り返し治療を続けた場合は依然として費用が高額になることもあります。
ここでは医療費控除以外で、さらに治療費の負担を減らせる方法をご紹介します。
高額療養費制度を利用する
高額療養費制度は、医療機関で支払った医療費が1ヶ月の上限額を超えた 場合に、超過した金額が支給される制度です。
不妊治療が保険診療になったことで、この制度を活用できるようになりました。
健康保険加入者であれば、どなたでも受けられます。1ヶ月の上限額は、年齢や所得によって変わります。
勤め先の福利厚生や制度を利用する
不妊治療のサポート体制がある企業を国は後押ししており、休職制度や不妊治療の補助金制度を設けている会社も近年増えています。
勤め先に不妊治療に関する福利厚生や制度があれば、利用することで費用負担軽減になります。
不妊治療や出産に手厚い医療保険に加入する
不妊治療や出産費用の給付金を受け取れる、女性に特化した医療保険が増えてきています。
不妊治療が保険適用となったことで、民間の医療保険で不妊治療の費用が備えやすくなったといえます。
不妊治療の医療費控除に関するよくある質問
医療費控除に関するよくある質問をご紹介します。
医療費控除の確定申告の期限はありますか?
原則として医療費を支払った翌年の2月16日〜3月15日までにおこないます。ただし、還付申告のみであれば、翌年1月1日から5年間は申告が可能です。過去分もさかのぼって手続きできるため、期限内であれば対応できます。
不妊治療や不妊検査は医療費控除の対象ですか?
不妊治療や不妊検査にかかった医療費は控除の対象です。
不妊治療の医療費控除の上限はいくらですか?
医療費控除対象額の上限は200万円になります。
不妊治療の医療費控除は夫婦のどちらが申告すべきですか?
どちらが申告しても問題ありません。ただし夫婦で収入差がある場合は、収入が多い側が申告した方が還付金が多くなる可能性があります。
まとめ
不妊治療は医療費控除の対象となり、確定申告をすることで還付金として一部が戻ってきます。
対象となる項目と対象外となる項目があるため、確定申告の際は注意しましょう。
基本的には、不妊治療に関わる「治療を目的」とした薬や施術などが対象となります。
また医療費控除以外でも助成金を併用したり、高額療養費制度を利用したりすることで、さらなる費用負担の軽減が可能です。
これらを上手に活用することで、不妊治療を無理なく続けることができるでしょう。
六本木レディースクリニックは、不妊治療・体外受精を専門としたクリニックです。
「ご夫婦が働きながら治療を継続できること」、「治療に伴う負担を最低限にすること」を大切に、無理のない治療計画をご提案しています。
不妊治療をお考えの方は、ぜひ当院にご相談ください。

