体外受精の胚移植後は、移植した受精卵が無事に着床すると体調に変化が出る方がいます。
ただし、着床していても体調変化を感じない方もいるため、胚移植後は体調変化の有無に関わらず、規則正しい生活を送り、主治医の判断に従うことが大切です。
この記事では、体外受精の胚移植後の体調変化や理想的な過ごし方について解説し、胚移植後の不安を抱える方に役立つ情報をお伝えします。
目次
胚移植後は主治医の判断に従いましょう
体外受精の胚移植後は、さまざまな体調の変化が出ることがあります。体外受精後に体調の変化を感じたときは、まずかかりつけの病院に相談し、判断を仰ぎましょう。
胚移植後に起きうる症状・体調変化
体外受精での移植後は、自然妊娠の場合と同様に、受精卵の着床にともなって熱っぽさや倦怠感・吐き気・嘔吐・頭痛をはじめとする妊娠初期症状が現れることがあります。
ただし胚移植によって妊娠していても、必ずしも体調の変化や妊娠初期症状が出るわけではありません。体調変化や症状が出ない方もいるため「変化がない=妊娠していない」と自己判断するのは早計です。
妊娠初期症状や体調変化の有無に捉われず規則正しい生活を心がけ、最終的な妊娠判定は主治医に委ねましょう。
移植後に起きうるものとして、主に次のような症状・体調変化があります。
倦怠感・頭痛
胚移植後に、倦怠感や頭痛の症状が現れる場合があります。風邪のような症状に似ており、めまいや熱っぽさがあることもあります。これらは妊娠初期症状であり、移植後に着床した可能性が考えられます。
風邪と勘違いして市販の風邪薬を、自己判断で服用しないように注意しましょう。
腹痛
移植後は、下腹部にチクチクとした痛みを感じる場合があります。原因ははっきりしていませんが、子宮の収縮による痛みであることが考えられます。
出血・おりもの
少量の出血や、血液が混じったおりものが生じることがあります。移植時にカテーテルを挿入する際や、膣内や子宮腟部を洗浄する際に出血することがあり、これが原因で移植後も数日の間は少量の出血やおりものが出ることがあります。
吐き気・つわり
胚移植による痛みではありませんが、移植後に生じる不調として「つわりによる症状」があります。
妊娠初期症状の出方には個人差が大きく、ひどいつわり症状を経験する方もいれば、妊娠していても症状がまったく出ない方もいます。
妊娠初期症状の有無だけでは妊娠判定が難しいため、まずは主治医に相談して判断を仰ぎましょう。
胚移植後に避けるべきことと注意点
体外受精の胚移植後は、通常どおりの生活に戻っても問題ありません。ただし、医師から説明される生活上の注意点をしっかり聞いて守りましょう。
ここでは、胚移植後に避けるべきことと、主な注意点をとりあげます。
移植当日の入浴
移植した当日の入浴は控えましょう。傷口から感染症を起こす恐れがあるためです。翌日からは入浴が可能になりますが、長時間の入浴は避けてください。
着床期の性交渉
移植後3〜5日程度を目安に着床します。この着床期の性交渉に関しては意見が分かれますが、下腹部に過度な刺激を与えないよう、着床期の性交渉は避けるのが無難です。
なお、妊娠中の性交渉は問題ないとされていますが、身体に負担のない範囲内が推奨されます。
激しい運動
フルマラソンのような激しい運動や、下腹部に刺激が加わるような激しい筋トレなどは避けてください。水泳も膣に雑菌が入ってしまう可能性があるため、避けたほうがよいでしょう。
ただし、安静にしないといけないということはなく、日常的にこなしている家事や仕事、ウォーキング、ヨガ、ストレッチなどの軽い運動であれば問題ありません。
偏った食生活
移植後に限ったことではありませんが、不妊治療中はバランスのよい食事が大切です。偏った食生活は、母体の健康維持に関わります。
後述しますが、過度なアルコール・カフェインの摂取は禁物です。また、妊娠初期は避けたほうがよい生魚・レバー・うなぎなどの食べ物もあります。避けたほうがよい食べ物を事前に把握し、バランスのよい食生活を心がけましょう。
飲酒・喫煙
アルコール摂取や喫煙は控えましょう。過度なアルコール摂取は、妊娠率の低下や流産リスクの上昇などを招く恐れがあるため、飲酒習慣のある方は要注意です。
また、タバコはニコチンや一酸化炭素など、妊娠に悪影響を与える有害物質を含んでいます。能動喫煙・受動喫煙に関わらず、喫煙によって子宮の血流が悪化して子宮内膜が薄くなり、着床障害が起きやすくなります。
カフェイン
過度なカフェインの摂取は、早産や流産のリスクを高めるだけでなく、胎児の発育にも影響を及ぼす可能性があるので注意しましょう。
普段からコーヒーや紅茶を飲む習慣のある方は、カフェインレスのコーヒーや紅茶、緑茶などの製品を選ぶとよいでしょう。
胚移植後の流れ
胚移植後は状況に応じてホルモン補充をし、妊娠判定をおこなう流れになります。なおホルモン補充とは、受精卵が着床しやすく、妊娠を維持しやすい子宮内環境を整えることを目的におこなうものです。
着床・妊娠判定までにかかる期間
移植後、妊娠判定までかかる期間は10日目前後です。
胚移植後に胚が子宮内膜に着床するまでには通常約3〜5日、妊娠判定までは10日程度かかります。
なかには移植後、1週間ほどで妊娠初期特有の症状を感じる方もおられます。しかし検査で正しく妊娠判定するためには、10日程度の時間が必要です。
妊娠判定は、主に血液検査によって判定します。血液中に含まれるhCG(ヒト絨毛ゴナドトロピン)と呼ばれるホルモンの濃度を測定して判断されます。hCGは妊娠週数が進むにつれて分泌量が増加し、胚移植後10日目前後で正しく判断できる濃度に達します。ただし、稀に妊娠していても、妊娠判定当日のhCG値が低く、数日後に再検査を実施することもあります。
体外受精の全体の流れについてはこちらの記事でも解説しています。
> 「体外受精のスケジュールは?流れをわかりやすく解説」を読む
着床障害とは
着床障害とは、体外受精で胚移植を複数回おこなっても子宮内膜に着床できない状態のことです。着床障害は主に子宮に原因がある場合と、母体の血液や免疫に原因がある場合の2つのケースが考えられます。
着床はタイミングが重要といわれています。良好な胚を3回以上移植しても妊娠に至らなかった場合は、ERA検査と呼ばれる子宮内膜の検査をして、最適なタイミングを特定してから胚移植を実施することがあります。
体外受精の胚移植後に関するよくある質問
Q. 胚移植後は安静にすべきですか?
主治医の判断に従い、問題がなければ普段どおりの生活をしても問題ありません。ただし激しい運動・過度なアルコールとカフェインの摂取などは控えましょう。
Q. 胚移植後、すぐに仕事をしてもいいですか?
デスクワークなどであれば、仕事をしても問題ないといえます。
Q. 胚移植後に体調が変わらない場合、着床していない可能性が高いですか?
胚移植後の体調変化には個人差があるため、着床しているかの判断はそれだけではできません。
妊娠していても、胚移植後に体調変化や症状が現れない方もいますので、最終的には主治医が血液検査により妊娠判定します。
(まとめ)体外受精で胚移植後、体調はどう変化する?
体外受精の胚移植後は、通常どおりの生活ができますが、胚移植にともなう緊張やストレスも相まって、普段よりもデリケートな状態になっています。
特に胚移植後に着床した場合は、妊娠初期症状として熱っぽさや倦怠感・吐き気・嘔吐・頭痛などが現れることがあります。ただし、妊娠初期症状の内容や症状が出るタイミングには個人差が大きく、妊娠していても、そういった症状が出ない方もいます。胚移植後は、体調変化の有無にかかわらず、クリニックで妊娠判定を受け、主治医の判断を仰ぎましょう。
主治医による妊娠判定を待つあいだは、体調に不安を抱くことがありますが、ゆったりとした気持ちで規則正しい生活を過ごすようにしましょう。また着床後の生活は、妊娠の維持や胎児に影響するため、飲酒・喫煙・カフェインの過剰摂取を避け、激しい運動は控えましょう。風邪のような症状や体調変化を感じた場合は、自己判断で市販薬を飲むことは控え、主治医に相談してください。
当院では、体外受精・不妊治療専門院として胚移植後の体調の変化を考慮し、患者さま一人ひとりに合わせた治療をご提案いたします。不妊治療をお考えの方はぜひご相談ください。