体外受精は、採卵や胚移植などの高度な医療技術がともなう不妊治療です。なかでも「採卵」は重要なプロセスで、その後の妊娠成功率を左右すると言っても過言ではありません。

この記事では、知っておきたい採卵の基礎知識や採卵できる平均個数について解説します。

採卵とは?

採卵

体外受精は、排卵する前に女性の卵巣から卵子を取り出し、体外で精子と受精させる不妊治療です。その際、卵子を取り出すことを「採卵」といいます。

採卵時は経腟超音波で卵巣内の卵胞の位置を確認しながら、専用の細長い採卵針を用いて膣から卵胞へ向かって針を刺し、卵胞液ごと卵子を採卵します。採卵の個数にもよりますが、処置の時間は10〜15分程度です。麻酔を使用すれば、処置中の痛みはありません。

その後、精子と受精させて受精卵(胚)をつくり、培養した質のよい受精卵(胚)を凍結保存するのが一般的な流れです。凍結した受精卵は、後日融解して女性の子宮へ移植されます。

卵子の残存数がわかる?AMH検査とは

不妊治療を始める前に、多くの方がAMH検査を受けます。AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査とは、卵巣内を卵子のおおよその残存数を把握する血液検査のことです。今後どれくらい排卵可能な期間が見込めるか、そして採卵個数の見立てにも役立つため、治療方針や卵巣刺激法を決める判断材料として用いられます。

AMHが低い場合(AMH1.5未満)

AMH値は年齢が高いほど低い傾向にあり、1回あたりの採卵数が少なくなる可能性があります。ただし個人差が大きく、若年層でも値が低くなる場合があります。目安としてAMH1.5未満の場合は、負担の少ない低刺激な卵巣刺激法が選ばれるケースが多いでしょう。

なお、「AMHが低い=妊娠できない」というわけではなく、早めに不妊治療を開始して妊娠を目指したほうがよいという指標になります。

AMHが高い場合(AMH1.5以上)

一方でAMH値が高いほど、採卵個数が多くなる傾向があり、1回の採卵で必要とされる個数が得られる可能性が高いことを示します。AMH1.5以上の場合は、高刺激な卵巣刺激法が選ばれるケースが多いでしょう。

ただし、値が4.0〜5.0以上と高すぎる場合、多嚢胞性卵巣症候群(卵巣に卵胞が溜まる疾患)の可能性もあるため注意が必要です。

体外受精の採卵数平均はどれくらい?

採取できる卵子の個数は個人差がありますが、年齢によっておおよその平均があるとされています。体外受精の採卵数平均は25歳で10個弱、35歳で5個前後、40歳になると3個弱です。採卵数平均は年齢を重ねるほど、個数も低下していきます。

採卵数が3個以下の場合、受精卵(胚)が得られない割合は15%以上になるとされています。一方、採卵数が7個以上あれば、受精卵が得られない割合は1%程度に抑えられるといいます。つまり、採卵数が多いほど受精する確率は高くなるということです。

実際の採卵数は10個以下が多数

東京都福祉局の卵子凍結に関する調査においても、採卵数が10個以下だった方が最も多いという結果が示されています。凍結できた卵子数で最も多かったのは5〜9個、次いで1〜4個、10〜14個の順でした。

1人の子を産むには、一般的に10〜15個採卵する必要があるといわれています。このことから10個以上の採卵を目指す方が多いですが、実際の個数や凍結できる卵子が、必ずしも理想の数に達するとは限りません。体外受精の場合は受精卵(胚)の凍結になりますが、同様のことが考えられます。

参考:東京都福祉局「みんなで一緒に知りたい卵子凍結のこと

重要なのは個数よりも卵子の質

体外受精においては、数よりも質が重要とされています。採卵数が多くても卵子の質が良好でない場合、受精卵(胚)が育たなかったり、着床できなかったりすることもあります。

しかし1個の卵子だったとしても、質がよければ体外受精が成功し、その後妊娠する可能性も十分にあります。採卵の個数も確かに重要ですが、卵子の質はより重要です。
年齢とともに卵子の質は低下し、体外受精などの不妊治療をしても成功しないケースもあります。老化してしまった卵子は元には戻りません。

過度なストレス、喫煙、偏った食生活なども卵子の質低下につながるといわれています。年齢が若いうちに妊活や不妊治療を始めるのはもちろんですが、日頃の生活習慣も見直してみましょう。

より多く採卵するための卵巣刺激法

採卵する際は、大きく分けて「排卵誘発剤を使用して採卵する方法」と「自然排卵周期で採卵する方法」があります。

自然排卵の場合、1ヵ月に1回ひとつの卵子のみが排卵されます。しかし、排卵誘発剤を使用して卵巣を刺激することで複数の卵子を育て、より多くの卵子を採卵することが可能になります。そのため、多くの場合は採卵に向けて卵巣刺激をおこなうのが一般的です。

卵巣刺激法は、AMH値や年齢などを考慮して以下のような方法が選ばれます。

クロミフェン法

クロミフェン法は、卵胞を育てて排卵を促す薬剤「クロミッド」を月経後に服用して採卵する方法です。使用するのはほぼ内服薬のみで、卵巣への刺激が少ないのが特徴です。しかし薬剤の刺激が少なく、連続周期採卵もできますが、内膜発育不全を起こすリスクもあります。
自然排卵できても卵胞の成長が弱く、卵巣の機能が低下している方に適しています。より刺激を強めるのであれば、クロミッドと合わせてhMG・rFSH注射を併用することも可能です。

ロング法(アゴニスト法)

ロング法とは、GnRHアゴニストと呼ばれる点鼻薬を用いるアゴニスト法の一種で、卵胞を育てるために長期間かけて投薬します。月経前周期の高温期中期から点鼻薬を投与します。排卵を抑えつつ、生理3日目からhMG・rFSH注射で卵巣を刺激し、卵子を育てていく方法です。
刺激が強く身体への負担が大きいのがデメリットですが、採卵できる卵子の数が多いのがメリットです。

ショート法(アゴニスト法)

ショート法もアゴニスト法の一種であり、ロング法と比べて投薬期間が短いことが特徴です。GnRHアゴニスト点鼻薬は、月経が始まってから投与することになります。
hMG・rFSH注射を使用する点はロング法と同様ですが、投与期間が短いメリットがあります。

アンタゴニスト法

アンタゴニスト法は、月経3日目からFSH/HMG注射で卵胞を育て、卵胞がある程度育った段階で、GnRHアンタゴニスト注射を用いて排卵を調整します。費用はやや高額になりますが、排卵コントロールがしやすく、排卵誘発剤の使用量が少ないので身体への負担が軽いのがメリットです。

採卵の手順と流れ

ここからは採卵の手順や流れを解説します。

Step1.卵巣を刺激する

まずは質の高い卵子をより多く育てるため、卵巣刺激をおこないます。卵巣刺激法は、前述のとおりさまざまな方法があります。年齢や卵巣機能の状態などを考慮し、一人ひとりの身体に合った方法が選択されます。

採卵に向けて卵胞を成熟させ、超音波検査で卵胞の成長具合を確認しながら、最適な採卵日を決定します。

Step2.採卵日に卵子を取り出す(採卵)

超音波で卵巣の様子を確認しながら、専用の針を用いて膣から卵胞に直接刺し、卵子を採取します。採卵自体の処置時間は、卵子の数によりますが10〜15分程度です。

Step3.精子を採取する(採精)

採卵日に同じく精子も採取します。医療機関の採精室で採取する方法と、自宅で採取する方法があります。自宅で採取する場合は、精子の質を担保するために、採取から3時間以内のものを提出する必要があります。

Step4.卵子の状態を確認する(検卵)

採卵した卵子の状態を胚培養士が確認します。採取した卵子のなかには、変形しているものや、成長が十分でない卵子も含まれていることがあります。卵子は卵胞液に包まれているため、血液や細胞を取り除き、受精できる質のよい卵子を検卵します。

採卵後の流れ

採卵後は回復室で休むことになります。回復したのち、担当医から採卵の結果や個数を教えてもらえます。採卵は日帰りでおこなうことが可能です。

その後、卵子と精子を受精させて受精卵(胚)となり、これを培養して再び女性の子宮に移植する流れとなります。着床率を上げるホルモン補充をおこないながら、移植から10日目前後に妊娠判定をおこないます。

体外受精の全体的な流れは、こちらの記事でも解説しています。
> 「体外受精のスケジュールは?流れをわかりやすく解説」を読む

採卵に関するよくある質問

Q. 採卵は痛い?痛みを和らげる方法はある?

採卵の痛みは、一般的には耐えられる程度の痛みとされています。
不安な場合は細い採卵針を使用する、痛み止めの坐薬を使用するなどで痛みを和らげることができます。また静脈麻酔であればほとんど痛みは感じないといえます。

採卵の痛みについては、こちらの記事でも解説しています。
> 「体外受精の採卵は痛い?不妊治療の痛みや和らげる方法を解説」を読む

Q. 採卵前、採卵後に気を付けるべきことは?

採卵前にマニキュアやジェルネイルは落としておく必要があります。これは指先の酸素濃度を測る機械を装着するためです。
また、採卵後の帰宅時の車の運転は危険なため、公共交通機関を利用することを強くおすすめします。採卵当日は、無理せず安静に過ごしましょう。

採卵後の過ごし方は、こちらの記事でも解説しています。
> 「体外受精の採卵後の過ごし方とは?」を読む

Q. 採卵はいつ実施する?月経開始から何日目?

体外受精の採卵は、月経開始から10〜14日頃に実施されます。ただし、卵胞の成熟具合などによって採卵日は前後します。

採卵日の実施日については、こちらの記事でも解説しています。
> 「体外受精の採卵日は何日ごろ?」を読む

Q. 採卵は日帰りでできる?

採卵は日帰りでおこなえます。採卵自体の処置時間は、10〜15分程度です。ただし採卵処置前の準備や採卵後に安静にする時間があります。

Q. 体外受精の採卵は間隔を空けるべき?

排卵誘発剤を使用する場合、2ヵ月程度の間隔を空けることが望ましいとされています。卵巣を適度に休ませることで、次回の採卵でも質のよい卵子を採卵できる可能性があるからです。

採卵実施の間隔については、こちらの記事でも解説しています。
> 「体外受精の採卵は間隔をあけた方がいい?」を読む

不妊治療についてお悩みなら六本木レディースクリニックへ

採卵は体外受精のなかの重要なプロセスのひとつで、その後の妊娠率に関わります。質がよい卵子を数多く採卵できれば、成功率も向上するといえるでしょう。ただし採卵数の平均は、年齢を重ねるほど低下する傾向にあります。また卵子の質も同様に加齢によって低下するため、早めの治療を検討することをおすすめします。

六本木レディースクリニックは不妊治療・体外受精専門のクリニックです。患者さまの身体的負担にも配慮した、痛みを感じにくい無痛採卵をおこなっています。体外受精の豊富な実績があり、痛みに弱いという方も安心して採卵に臨んでいただけます。不妊治療・体外受精を検討中の方は、ぜひ当院にお任せください。

六本木駅・池袋駅から徒歩3分!
当院は六本木と池袋にクリニックがございます。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

ドクターのご紹介

帝京大学医学部付属溝口病院、母子愛育会総合母子保健センター愛育病院、国立成育医療研究センター不妊診療科を経て、2019年より現職。
資格・所属学会は、日本産科婦人科学会専門医のほか、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、日本産婦人科内視鏡学会。

医師からのメッセージ

当院は、不妊検査やタイミング指導、人工授精といった一般不妊治療から高度生殖補助医療までの不妊治療を専門としたクリニックです。
痛みが心配な方、ご安心ください。卓越した技術と最大限の配慮をお約束します。
また夜間や休日も診療を行い、不妊治療の苦労を少しでも軽減できるように努めています。

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院長 小松保則医師