体外受精で生まれる赤ちゃんは増えている

1978年7月25日、世界で初めて体外受精(IVF:In Vitro Fertilization)により命を授かった赤ちゃんがイギリスで産声を上げました。日本では、1983年に初の体外受精による赤ちゃんが誕生しています。

以来、わが国では体外受精の治療数は増加傾向が続いており、2016年は5万4,110人の赤ちゃんが体外受精によって生まれました。この年の総出生数は97万6,978人ですから、18人に1人の割合となります1)2)。

受精を確認して、子宮に戻す

体外受精は、卵子と精子を体外で受精させて培養します。そして、順調に細胞分裂を繰り返し成長した受精卵(胚)を子宮に戻し(胚移植)、着床を待つという治療法です。卵子と精子が確実に出会えるようにセッティングし、環境を整えて行く末を見守ります。

卵子と精子をいったん体外に取り出すという手技を伴う場合、一般の不妊症治療とは区別し、生殖補助医療(ART:assisted reproductive technology)と呼ばれます。

不妊症に対する治療は、必要な検査を行い、原因を探りながら効果的で適切な方法を選択して進めます。女性の年齢や検査結果によりますが、通常は、タイミング法、人工授精というふうにステップアップしていきます。これらのトライで妊娠に至らない場合、生殖補助医療へのさらなるステップアップを行うかどうかが検討されます。

自然のままでは卵子と精子がうまく出会えない場合(卵管や、精子の数・運動度の問題)、排卵障害がある場合、抗精子抗体(女性の体内で、精子の動きを妨げてしまう抗体ができてしまうこと)がある場合、原因がわからない難治性の不妊症などの場合に体外受精が行われます。

体外受精の適応
卵管閉塞や卵管通過障害
精子数、精子濃度、精子運動率が低い
排卵障害があり、タイミング法や人工授精ができない
抗精子抗体陽性(女性の体内で、精子の動きを妨げてしまう抗体ができてしまうこと)がある
タイミング法や人工授精を試みても妊娠できず、原因がみつからない

生命の誕生や生殖にかかわる卵子や精子を体外で取り扱うという点では、倫理的な問題も含んでいます。そこで、日本産科婦人科学会では、体外受精を実施する際には、その必要性などを厳密に吟味・検討することを推奨しています。

体外受精は、人工授精に比べ、肉体的、精神的、経済的負担が増すため、夫婦で十分にコミュニケーションをとり、互いに納得したうえでステップアップを決めることが大切です。

凍結保存で、繰り返し挑戦できる

体外受精の具体的な流れとしては、(1)排卵の誘発(調節卵巣刺激)、(2)採卵、(3)精子の採取、(4)受精・培養、(5)胚移植、(6)妊娠の判定というふうに進められます(図1)。

図1 体外受精の治療の流れ

培養された受精卵は、2日目には4細胞、3日目には8細胞、4日目には桑実胚(そうじつはい)、5日目には胚盤胞(はいばんほう)と成長していきます。どの段階でも移植は可能であり、良好に成長を遂げている胚を慎重に選んで移植します。ただし、子宮の状態や排卵誘発剤の副作用などで、その周期は移植を見送ったほうがよいと判断されることもあります。こうした場合や、複数個の受精卵が得られた場合には凍結保存しておくことができます。

 

凍結保存すると、次の周期以降は、(1)~(4)のプロセスを省略して進めることができます。体調を整え、受精卵が着床しやすいように子宮の環境を調節したうえで、凍結胚を融かして移植する方法なので、繰り返してのトライが可能になります。

 

 

1)日本産婦人科学会, 登録・調査小委員会ARTデータブック 2016年版

http://plaza.umin.ac.jp/~jsog-art/2016data_20180930.pdf

2)厚生労働省, 平成28年(2016)人口動態統計(確定数)

 

 

《参考資料》

鈴木秋悦, 久保春海(編), 新 不妊ケアABC. 医歯薬出版 2019

竹田省,田中温,黒田恵司(編),データから考える不妊症・不育症治療 希望に応える専門外来の診療指針. メジカルビュー社 2017

成田収(著), 未来の赤ちゃんに出会うために 不妊治療・体外受精のすすめ(第3版). 南山堂 2019

日本生殖医学会(編), 生殖医療の必修知識 2017. 日本生殖医学会 2017

日本生殖医学会, 不妊症Q&A 平成25年4月

http://www.jsrm.or.jp/document/funinshou_qa.pdf

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

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院長 小松保則医師