ERA・EMMA・ALICE検査のご案内

ERA(Endometrial Receptivity Array)検査とは?

ERA検査とは、着床に最適なタイミングを遺伝⼦レベルで見つけるための検査です。子宮内膜着床能検査とも呼ばれます。具体的には、子宮内膜組織を採取し、胚移植当日の子宮内膜が着床に適しているかどうかを遺伝子解析で明らかにします。

子宮内膜には、受精卵を受け入れ、着床を成立させることができるタイミングが決まっており、その時間帯や時期には個人差があることがわかっています。受精卵を受け入れ可能になるタイミングを「着床の窓(Implantation Window)」と呼びます。胚移植による着床・妊娠率を向上させるためには、この着床に最適なタイミングに合わせて胚移植を実施することが重要です。

ERA検査は、胚移植の時期と着床の窓のタイミングが合っているかを評価するために開発された検査であり、現在では世界中のクリニックで実施されています。海外での報告では、ERA検査を受けた約30%の人が、着床の窓のタイミングがずれていたことがわかっています。2016年にアメリカ生殖医学会議にて、ERA検査の結果をもとに、胚移植の時期を最適化したところ、妊娠率が24%上昇したというデータも報告されています。

当院では、良好胚を複数回(3回以上)移植しても着床しない反復着床不成功の方に対し、ERA検査を実施し、患者さまの着床の窓のタイミングに最適な移植時期を判断しています。

着床障害の原因

着床障害とは、体外受精で良好胚(受精卵)を何度か移植しても着床せず、妊娠に至らないことをいいます。体外受精で着床がうまくいかない原因としては、大きく2つに分けて考えられます。

子宮に原因があるもの

子宮に原因があるものとしては、子宮内膜ポリープ、子宮筋腫、卵管水腫などの器質的な問題や、「着床の窓」の時期のズレによって、子宮側が受精卵を受け入れる準備が整っていないなどの子宮環境の問題が考えられています。

母体の血液や免疫系に原因があるもの

母体の血液や免疫系に原因があるものとしては、ホルモンや血液の凝固能異常などの問題や、免疫系の異常などの問題が考えられます。着床を成立させるためには、母体側の免疫系が受精卵に拒絶反応を示すことなく、受精卵を受け入れる力(免疫寛容)が求められますが、免疫系の異常によって受精卵を受け入れられず、着床障害が起きることがあります。

ただし、着床はいくつかの複雑な過程を経るため、着床障害の原因を特定できないことも少なくありません。

ERA検査の方法

ERA検査の周期を設定

子宮内膜の着床時期を確認するため、実際の胚移植周期とは別に検査のための周期を設け、ERA検査を実施します。
※自然周期の場合は排卵を確認してから5日目、ホルモン補充周期の場合は黄体ホルモンを開始して5日目におこないます。

ERA検査における検体採取の仕方

子宮内膜の組織を採取します。
子宮内膜の採取には、当院では専用の細い管を使用し、痛みやストレスの少ない方法でおこなうため、基本的に麻酔は使用せずに実施します。所要時間は3~5分程度です。

検体を海外の検査機関に郵送(結果報告 2~3週間後)

検査自体はスペインにある検査機関に組織を郵送し実施されるため、結果報告には通常2~3週間程かかります。

検査結果(結果を踏まえて移植準備、又は再検査)

「子宮内膜の状態が着床に適している」と判定された場合は、次回の周期から移植の準備を進めます。「子宮内膜の状態が着床に適していない」と判定された場合は、もう一度ERA検査をおこないます。子宮内膜組織の採取日を3~4日目、または6~7日目にし、着床に最適なタイミングを評価します。

ERAの検査方法

ERA検査の対象者

当院では、良好胚を複数回(3回以上)移植しても着床しない反復着床不成功の方や、将来のために健康な受精卵を大切に取り扱いたい方などを対象にERA検査を実施しております。ERA検査をご希望の際は、医師にご相談ください。

ERA検査に関するよくあるご質問

ERA検査に関して、患者さまからよくいただく質問についてお答えいたします。

ERA検査をおこなう時期やタイミングは定められていますか?

ERA検査をおこなう時期は、自然排卵周期とホルモン補充周期の2つのタイミングがあります。自然排卵周期の場合は、排卵を確認してから5日目に実施します。ホルモン補充周期の場合は、黄体ホルモンの投与を開始して5日目に子宮内膜の組織を採取し、検査を実施します。

子宮内膜日付診との違いはなんでしょうか?

どちらも子宮内膜が着床できる状態か調べる検査ですが、その違いは検出方法にあります。従来の子宮内膜日付診では、採取した子宮内膜の一部を顕微鏡で観察して、目視で子宮内膜の状態を判断します。一方ERA検査では、採取した子宮内膜から、着床能に関連する236個の遺伝子の発現レベルの解析をおこないます。
子宮内膜日付診では、観察者の違いによって結果に差が生じることや、再現性が劣るといった課題がありましたが、ERA検査では、客観性や再現性が向上したことで、より正確な着床可能時期の推定ができるようになっています。

ERA検査の結果はどのくらい有効ですか?

ERA検査の結果は3~4年間有効といわれています。ただし、体重(BMI:Body Mass Index)の増減があった場合は、ERA検査の結果に影響すると言われているため注意が必要です。

EMMA(Endometrial Microbiome Metagenomic Analysis)検査
とは?

EMMA検査とは、子宮の細菌環境が胚移植に最適な状態であるかどうかを判断する為の検査です。子宮内膜マイクロバイオーム検査とも呼ばれます。

子宮腔の菌共生バランスが崩れると 、生殖補助医療(ART)の治療効果に関連するとされており、特に子宮内膜の乳酸桿菌(Lactobacilli)が少ない場合、不妊の一因となっていることが示唆されています。

(Moreno et al. Am J Obstet Gynecol, 2016) 。

乳酸菌90%以上乳酸菌90%以下
着床率0.6010.231
妊娠率0.7060.333
妊娠継続率0.5880.133
生児獲得率0.5880.067

引用元:Preliminary results were presented at the 62nd Annual Scientific Meeting of the Societyfor Reproductive Investigation, San Francisco, CA, March 25-28, 2015.

不妊障害の原因

細菌感染によるもの

膣内には、細菌性の膣炎や性感染症、尿路感染症の原因となる細菌を繁殖させないように、豊富なラクトバチルス属と呼ばれる細菌が働いています。

子宮内に雑菌が繁殖することで細菌感染が続くと、感染症の為に免疫活動も活発になります。
そのため、受精胚異物として攻撃してしまう可能性があります。

EMMA検査の方法

EMMA検査では、子宮内膜の厚くなる時期(月経約15日~25日目)に、子宮内膜の一部を採取する処置を行います。

ALICE(Analysis of Infectious Chronic Endometritis)検査とは?

ALICE検査とは、微生物学的レベルで子宮内膜の状況を確認する検査で、慢性的な子宮内膜炎の有無を抱える患者様の臨床管理の向上を目指す事が可能となります。

子宮内膜炎の原因

子宮内膜炎とは、至急の内側にある粘膜に炎症が起きるものです。
この粘膜は月経の際に剥がれ出て、また新たに粘膜が作られることが繰り返されている為、何もなければ炎症は起きることはありませんが、何かのきっかけで細菌が入って、炎症が子宮内膜に起きる場合があります。

細菌感染によるもの

子宮内膜炎を引き起こす菌は様々で、連鎖球菌・大腸菌・ブドウ球菌・嫌気性菌などが挙げられます。
子宮の入り口から細菌が入り、それらの感染が拡大することで、子宮まで到達すると子宮内膜炎になります。

慢性子宮内膜炎では、細菌が子宮の中の基底層まで到達し感染している状態で、基底層は月経で剥がれることも無い為、自然には治ることはありません。

慢性子宮内膜炎は、不妊症の女性の約30%の方が罹患し、これにより何度か流産を引き起こしている患者60%にも及ぶと言われています。

ALICE検査の方法

ALICE検査では、子宮内膜の厚くなる時期(月経約15日~25日目)に、子宮内膜の一部を採取する処置を行います。

監修医師紹介

小松 保則

六本木レディースクリニック

小松 保則医師

(こまつ やすのり/Yasunori komatsu)

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  • 経歴
  • 帝京大学医学部付属溝口病院勤務
  • 母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
  • 国立成育医療研究センター不妊診療科
  • 緑風荘病院 血液浄化療法センター
  • 六本木レディースクリニック勤務
  • 資格・所属学会
  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 日本産科婦人科学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本産婦人科内視鏡学会

体外受精・不妊治療の六本木レディースクリニック