胚移植
胚移植とは
胚移植とは、夫婦から卵子と精子を採取し、体外受精や顕微授精によって受精を成立させた後、胚(受精卵)を培養器の中で培養して育成してから、子宮に戻すことをいいます。
胚移植は細い移植専用のカテーテルを用いて、超音波で子宮内の状態を確認しながら行われます。平成20年の日本産科婦人科学会のガイドラインによって、移植する胚は原則1個とされています。しかし、女性が35歳以上の場合や2回以上続けて妊娠が不成功だった場合は、2個の胚移植が許容されています。
胚移植は細い移植専用のカテーテルを用いて、超音波で子宮内の状態を確認しながら行われます。平成20年の日本産科婦人科学会のガイドラインによって、移植する胚は原則1個とされています。しかし、女性が35歳以上の場合や2回以上続けて妊娠が不成功だった場合は、2個の胚移植が許容されています。
体外受精との関係
体外受精の工程は体外で受精した胚を培養し、子宮に移植するまでの全てです。
一方、胚移植は体外受精の最終段階にあたり、培養した胚を子宮に戻す過程を指します。
一方、胚移植は体外受精の最終段階にあたり、培養した胚を子宮に戻す過程を指します。
胚移植の種類
胚移植の種類は、胚を培養する日数によって、培養から2~3日目の胚を移植する「初期胚移植」、培養から5~6日目の胚を移植する「胎盤胞移植」、また、初期胚移植と胚盤胞移植を組み合わせた「2段階移植」など、さまざまな種類があります。
また、胚移植方法として、採卵後すぐに移植する「新鮮胚移植」と胚を一度凍結した後に移植する「凍結融解胚移植」があります。日本においては胚凍結技術が発達しており、近年では新鮮胚移植よりも凍結融解胚移植のほうが高い妊娠率だといわれています。
また、胚移植方法として、採卵後すぐに移植する「新鮮胚移植」と胚を一度凍結した後に移植する「凍結融解胚移植」があります。日本においては胚凍結技術が発達しており、近年では新鮮胚移植よりも凍結融解胚移植のほうが高い妊娠率だといわれています。
初期胚移植(新鮮胚移植)
初期胚移植とは、受精した胚を2~3日間培養し、それから胚を子宮に戻すことです。移植可能な胚が複数ある場合は、最も良好な胚の順に移植していきます。良好な胚を移植でき、さらに胚移植のキャンセル(胚の分割不良などで胚移植ができないこと)が少ないメリットがあります。
胚盤胞移植
初期胚移植で妊娠が不成立だった場合、さらに胚を培養して胚盤胞まで成長させ、子宮に戻す方法があります。その方法を胎盤胞移植といいます。
胚盤胞移植とは
胚盤胞移植とは、受精後、培養5~6日目の胚盤胞まで成長した胚を子宮に移植する方法です。この時期になると、将来胎児になるところ(内部細胞塊)と胎盤になるところ(栄養外胚葉)が観察できます。
胚盤胞移植のメリット
胚胎盤移植には次のようなメリットがあります。
着床率が高い
確実に胚盤胞まで培養した胚を移植することで、初期胚に比べて移植1回あたりの着床率が高くなります。
良好胚を選別できる
胚盤胞まで培養することで、より正確に良好な胚を選別することができます。
子宮外妊娠率が低い
胚盤胞移植の子宮外妊娠の確率は初期胚移植より低いと言われています。
胚盤胞移植のデメリット
胚胎盤移植には次のようなメリットがあります。
胚移植のキャンセル率が高い
胚盤胞にまで発育する胚が得られなかった場合、予定していた胚移植ができなくなることがあります。
一卵性多胎の増加
孵化の際に受精卵が分断されたり、胚盤胞が成長する過程で内部細胞塊が分裂することで、一卵性双胎が増える可能性があるといわれています。
2段階胚移植
2段階胚移植とは、先に受精後2~3日目の初期胚を移植し、さらに2~3日後(受精後約5日目)に、胚盤胞を移植する方法のことです。最初に初期胚を移植することで、子宮内の着床準備が進み、次に胚盤胞を移植することで、より妊娠率の上昇が期待できると考えられています。
SEET法(シート法)
SEET法とは、移植前に胚を培養した液を子宮内へ注入する方法です。
子宮内を着床しやすい状態に整えるには、女性ホルモンの他に、胚が分割する際に分泌される物質が関わっていると考えられています。そのため、胚を培養した液に含まれている胚から分泌された物質を子宮内に投与し、子宮内膜を着床しやすい状態へ整えることで、続いて移植される胚盤胞の着床率を高めることが期待できます。
子宮内を着床しやすい状態に整えるには、女性ホルモンの他に、胚が分割する際に分泌される物質が関わっていると考えられています。そのため、胚を培養した液に含まれている胚から分泌された物質を子宮内に投与し、子宮内膜を着床しやすい状態へ整えることで、続いて移植される胚盤胞の着床率を高めることが期待できます。
凍結融解胚移植
凍結・融解胚移植とは、初期胚、または胚盤胞を一度凍結したあと、別の周期で融解して子宮内に移植する方法です。複数の胚を得られた場合でも凍結して保存が可能です。
排卵誘発剤の投与により卵巣が刺激されると卵胞ホルモンが多く分泌されるため、採卵後の子宮内膜の着床環境に影響を与えます。凍結・融解胚移植では、あえて採卵周期に新鮮胚を移植せずに良好胚を凍結保存することで、採卵周期以降の子宮環境が整い、体調がよいときに移植をおこなえるメリットがあります。
排卵誘発剤の投与により卵巣が刺激されると卵胞ホルモンが多く分泌されるため、採卵後の子宮内膜の着床環境に影響を与えます。凍結・融解胚移植では、あえて採卵周期に新鮮胚を移植せずに良好胚を凍結保存することで、採卵周期以降の子宮環境が整い、体調がよいときに移植をおこなえるメリットがあります。
体外受精・胚移植が適応になる方は
胚移植が適応になるのは、一般不妊治療や外科的な治療では妊娠の可能性が極めて低いと判断される方です。具体的には、次のような要因が考えられる方です。
卵管性不妊
両方の卵管がつまっていたり(卵管閉塞)、幅が狭くなっていたり(卵管狭窄)することにより卵子の取り込みが困難であり、卵管を拡張する卵管形成術などの手術も適応できない方。また、卵管に機能障害がある方。
男性因子
乏精子症(精子の数が少ない)や精子無力症(運動率が低い)、精子奇形症(奇形率が高い)などで、数回の人工授精をおこなっても妊娠できない方。
免疫性不妊症
精子を障害、もしくは精子の運動を止めてしまう抗体を持っていることによる免疫性不妊症で、通常の方法では妊娠できない方。
原因不明の不妊症の方
原因不明のまま長期にわたり妊娠できない方。
胚移植の流れ
胚移植の流れは次のようになっています。体外受精の全工程を踏まえて解説いたします。
排卵誘発(卵巣刺激)
排卵誘発剤を使って卵巣を刺激し、複数の卵胞を発育させます。採卵前の排卵を防ぐため、排卵を抑える薬を使う場合や、卵巣を刺激せず完全自然周期でおこなう場合もあります。
採卵・採精
成熟した卵子を排卵直前に体外に取り出すため、膣壁から卵胞に針を刺し、吸引して採卵します。採卵と同じ日に採精も行い、運動性の高い精子を選択して、受精の準備を整えます。
受精
胚培養士が、採取した卵子と精子を受精させます。
体外受精
シャーレやスピッツに卵子を入れて精子を加え、培養器に入れて受精を待ちます。受精の結果は、翌日に判明します。
顕微授精
体外受精で受精が成立しなかったり、精子が少ないため体外受精が難しい場合、顕微鏡を見ながら卵子に針を刺し、直接精子を注入して授精させます。受精の結果は、翌日に判明します。
胚培養
受精を確認したら、卵管と似た温度や酸素濃度の環境に整えられた培養器の中で胚(受精卵)を育てます。胚は、採卵2日目には2~4分割、3日目には6~8分割と細胞分裂を繰り返して成長し、5日目には胚盤胞になります。
胚凍結
通常は胚培養で成長した胚を子宮に戻しますが、場合によっては一時的に胚を凍結保存することもあります。子宮内膜環境が良好でない場合や、卵巣が腫れている場合に適用されます。
当院では、胚を良質な状態で保存する「超急速ガラス化保存法」を採用しています。胚の変形やダメージを軽減し、極低温保存する技術です。胚凍結することで、次回の良好なタイミングで胚移植をして妊娠率を上げたり、子宮を休ませて母体の負担を軽減できたりします。
また、胚移植の際に余った胚を凍結保存することもできます。妊娠に至らなかった場合も、凍結保存しておけば、次回に採卵やその他の工程を省いて移植できるメリットがあります。
当院では、胚を良質な状態で保存する「超急速ガラス化保存法」を採用しています。胚の変形やダメージを軽減し、極低温保存する技術です。胚凍結することで、次回の良好なタイミングで胚移植をして妊娠率を上げたり、子宮を休ませて母体の負担を軽減できたりします。
また、胚移植の際に余った胚を凍結保存することもできます。妊娠に至らなかった場合も、凍結保存しておけば、次回に採卵やその他の工程を省いて移植できるメリットがあります。
黄体ホルモン補充
胚の着床率を高めるため、黄体ホルモンを注射や膣坐薬、飲み薬を使用して補充します。
胚移植
胚培養、もしくは凍結保存された胚を融解したあとに子宮に戻します。通常の胚移植の場合、順調に育った胚の中から、良好胚を1~2個選択します。培養器から取り出した胚を培養液とともにカテーテルで吸い上げて子宮腔に挿入し、子宮内の様子をエコーで確認しながら、最も着床しやすい位置に移植します。
また、凍結した胚を移植(凍結融解胚移植)する場合は、胚が着床できる時期を考慮しながら移植をおこないます。凍結状態から胚を融解したあとに子宮に戻します。いずれの方法も多胎妊娠を防ぐため、1回に移植する胚は原則1個です。
また、凍結した胚を移植(凍結融解胚移植)する場合は、胚が着床できる時期を考慮しながら移植をおこないます。凍結状態から胚を融解したあとに子宮に戻します。いずれの方法も多胎妊娠を防ぐため、1回に移植する胚は原則1個です。
妊娠判定
妊娠判定は胚移植から約2週間後です。胚が子宮内膜に着床し、成長しているかを血液や尿検査で判定します。
PFC-FD療法(オプション)
PFC-FD療法は、患者様から抽出した成長因子を子宮内、卵巣内へ注入し、子宮内環境、卵巣内環境をケアし、改善を促すオプション治療です。
子宮内膜の厚さが7㎜以下の場合、胚(凍結融解した胚)が着床しにくいと言われています。
このPFC-FD治療を行うことにより、子宮内膜を十分な厚さにする等の子宮内環境の改善が期待できます。
また、卵巣内に注入した場合には、初期卵胞発育を促すなど、卵巣機能不全の方の卵巣内環境の改善が期待できます。
この治療方法は、既に整形外科や歯科、皮膚科等の様々な分野で行われており、人工物ではないご自身由来のものを使用するため、より安心してお受けいただくことができます。
治療スケジュール
STEP1PFC-FD作成
- 約50mlを採血
- 通常の献血量が200、400mlですので、それと比較すると少量で身体への負担も最小限に抑えられます。
- 専門機関で血液を加工し「PFC-FD」を作成(約3週間)
- 血液を加工し、それを特許技術によりフリーズドライしています。これにより、約半年の保存が可能です。
ですので治療周期等の細かなタイミングが調整しやすい治療です。
STEP2子宮内に注入する場合
- PFC-FDをカテーテルで子宮内に注入(計2回)
- 月経周期の10日目、12日目頃に注入します。
- 月経周期の17~19日目頃に胚移植
STEP2卵巣内に注入する場合
- 排卵期に局所麻酔、または静脈麻酔下で経腟超音波を用い卵巣を確認しながら、細い針を卵巣に直接刺してPFC-FD注入。
- 少量ずつ(0.1~0.3mL程度ずつ)何ヶ所か(計1mL、卵巣の状態によって決定)に分けて行います。
- 注入後の効果は投与から2~3ヶ月後の採卵時となります。
- その間は通常通りの採卵や胚移植が可能です。卵胞発育の効果には個人差があり、実施のタイミングや回数は主治医とご相談ください。
PFC-FD療法の料金
※2022年7月1日~の価格となります。
【血液採取】
- PFC-FD療法
- 165,000円(税込)
- 子宮内膜注入
- 22,000円(税込)
- 卵巣片側
- 44,000円(税込)
- 卵巣両側
- 88,000円(税込)
※麻酔使用する場合は別途算定
孵化促進法(アシステッド ハッチング)とは?
孵化促進法(アシステッドハッチング)とは、胚移植をする際に、胚(受精卵)が着床しやすいように、胚の周りの透明帯の一部を切開したり、薄くしたりする技術のことです。
胚は透明帯と呼ばれるタンパクの膜に覆われていますが、自ら透明帯を溶かす酵素と胚内部の圧により、膜を破って外へ出ることで着床します。この現象をハッチング(孵化)といいます。
しかし、なかには透明帯が硬くて破れにくく、孵化がうまくいかないケースがみられます。一般的に胚を凍結した場合や年齢が高い場合、透明帯が硬くなる傾向があるといわれています。このような場合に、孵化促進法が有効です。従来は酸を使って透明帯を切開していましたが、最近ではレーザーが使われています。
胚は透明帯と呼ばれるタンパクの膜に覆われていますが、自ら透明帯を溶かす酵素と胚内部の圧により、膜を破って外へ出ることで着床します。この現象をハッチング(孵化)といいます。
しかし、なかには透明帯が硬くて破れにくく、孵化がうまくいかないケースがみられます。一般的に胚を凍結した場合や年齢が高い場合、透明帯が硬くなる傾向があるといわれています。このような場合に、孵化促進法が有効です。従来は酸を使って透明帯を切開していましたが、最近ではレーザーが使われています。
透明帯が硬く
孵化しにくい胚盤胞
正常に孵化した状態
胚移植のリスクや妊娠への影響について
妊娠のリスク(多胎妊娠、子宮外妊娠)
体外受精では、自然妊娠と比べ、多胎妊娠(2人以上の胎児の妊娠)の確率が上がります。
多胎妊娠により、切迫早産や妊娠高血圧症候群、低出生体重児・未熟児などのリスクが高まります。また、早産の管理のため、長期入院が必要になることも多くなります。近年、体外受精での多胎妊娠は大幅に減少していますが、移植する胚が1個であっても、一卵生双胎になることがあります。
多胎妊娠により、切迫早産や妊娠高血圧症候群、低出生体重児・未熟児などのリスクが高まります。また、早産の管理のため、長期入院が必要になることも多くなります。近年、体外受精での多胎妊娠は大幅に減少していますが、移植する胚が1個であっても、一卵生双胎になることがあります。
移植時の痛み
移植時にカテーテルが子宮にうまく入らない場合、器具で子宮頚部を引いてカテーテルを入れやすくするため、痛みが生じることがあります。それでもカテーテルが入らないときは、針で子宮筋層を貫き、子宮内膜に移植を行うこともあります。
胚移植に関してよくある質問
胚移植直後は普段通りの生活をしても問題ないでしょうか?
胚移植当日はシャワー浴のみにし、球技やジョギングなどの激しいスポーツはお控えください。翌日に出血がなければ、入浴など普段通りの生活を送っていただいてかまいません。移植当日、翌日に新幹線や飛行機での移動は特に影響はありませんが、激しいスポーツや夫婦生活は、移植後2~3日ほど控えていただくほうがよいと思われます。
胚移植後におりものや出血がありましたが、大丈夫でしょうか?
移植時のカテーテル挿入の刺激や膣内を消毒することにより出血することがありますが、少量であれば問題ありません。また、胚移植後に血液の混じったおりものが出ることがありますが、異常ではありません。ただし、量が多いときや出血が継続する場合は、クリニックにご相談ください。
胚移植後に食べられないものはありますか?
特別に食べてはいけないものはありませんが、冷たいもので身体を冷やし過ぎないようにするとよいでしょう。
監修医師紹介
- 経歴
- 帝京大学医学部付属溝口病院勤務
- 母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
- 国立成育医療研究センター不妊診療科
- 緑風荘病院 血液浄化療法センター
- 六本木レディースクリニック勤務
- 資格・所属学会
- 日本産科婦人科学会 専門医
- 日本産科婦人科学会
- 日本抗加齢医学会
- 日本産婦人科内視鏡学会
体外受精・不妊治療の六本木レディースクリニック