生殖補助医療(ART)

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生殖補助医療(ART)とは?

一般不妊治療よりも高度な技術の不妊治療を「生殖補助医療(ART)」といいます。「生殖補助医療(ART)」は、近年進歩した新たな不妊治療法のことです。重度の男性不妊症や、卵管、子宮内膜などの異常、原因不明の不妊などにより、一般的な不妊治療で妊娠が難しかった方のためのステップアップした治療法です。

生殖補助医療(ART)には、体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)、凍結融解胚移植があります。それぞれ、以下のページで詳しく解説しています。

当院では、安心・安全な治療を提供するため、無痛採卵やタイムラプスインキュベーターを導入しています。

生殖補助医療(ART)の適応

一般不妊治療で妊娠できなかった場合、以下の原因が考えられますので、生殖補助医療(ART)で妊娠を目指します。
※当院では非配偶者間における精子又は卵子の提供による生殖補助医療は行なっておりません。

1. 卵管に原因がある場合

子宮内膜症の方で卵管周囲の癒着が見つかった場合や、子宮卵管造影などで卵管に閉塞や狭窄が疑われる場合、癒着や閉塞・狭窄によって精子あるいは受精卵の移動が妨げられ、妊娠に至らないことがあります。

2. 子宮に原因がある場合

子宮の中に子宮筋腫や子宮内膜ポリープがある場合、受精卵の子宮内膜への着床障害により、妊娠しにくくなります。

3. 免疫性の不妊の場合

何らかの免疫異常で、女性の体内に精子の運動を低下させる抗精子抗体(特に精子不動化抗体)や、卵子の発育を障害する抗体ができてしまうことがあり、受精や妊娠を妨げます。

4. 男性不妊の場合

正常な精子の数が少ない、精子の運動率が低いなど男性側に原因があり、薬物治療やサプリメントなどを用いても改善がみられない場合、妊娠に至らないことがあります。

5. 原因不明

一般的な不妊検査(ホルモン採血、精液検査、頸管粘液検査、Huhnerテスト、基礎体温、超音波検査、卵管疎通性検査など)をしても異常が見つからず、タイミング法や人工授精を行っても妊娠に至らないケースです。何らかの原因で卵子あるいは精子の機能が低下していたり、精子と卵子の受精ができていなかったりするケースも含まれると考えられています。

当院の生殖補助医療(ART)

一般的な不妊治療では妊娠が難しい方に対しては、近年進歩した新たな不妊治療法「生殖補助医療(ART)」を提供します。当院で実施しているART:体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)、凍結・融解胚移植についてそれぞれ解説します。

1. 体外受精(IVF)

体外受精(IVF: In Vitro Fertilizationの略)は、体外培養環境の下で、採卵した卵子と精子を受精させる方法です。培養した卵子1個あたりに約10万個の精子をふりかけて、精子自身の力で受精するのを待ちます。受精率は一般的に約60~70%といわれています。

2. 顕微授精(ICSI)

顕微授精(ICSI:Intracytoplasmic Sperm Injectionの略)は、顕微鏡をみながら針のように細い管(マイクロピペット)で精子を1個のみ吸引し、それを卵子の卵細胞質内に注入して受精させる方法です。ICSIの受精率は一般的に約70~80%といわれています。

3. 胚凍結

胚凍結とは、受精卵(胚)を一時的に凍結保存する方法です。子宮内膜環境が良好でない場合や、卵巣が腫れている状態の場合に用いられます。胚凍結することで次週期以降の良好なタイミングで胚移植ができ、高い妊娠率が期待できます。なお、当院の胚凍結は、超急速ガラス化保存法を採用しており、より安定した状態で受精卵の固化・極低温保存が可能です。

4. 胚移植

体外受精(IVF)や顕微授精で得られた受精卵(胚)を凍結保存したのち、子宮に戻して妊娠を促す方法です。胚移植には主に初期胚移植と胚盤胞移植の2つの方法に分けられます。初期胚移植は、受精後2〜3日目の発育した胚を子宮に戻す方法です。胚盤胞移植は、受精後5〜6日目に胚盤胞まで成長した胚を子宮に戻す方法です。胚盤胞移植の方が着床率が高い傾向にあります。

生殖補助医療(ART)の流れ

ここでは、生殖補助医療(ART)をお受けいただく際の、体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)それぞれの流れについて解説します。
体外受精(IVF)と顕微授精(ICSI)は、採卵後の受精方法が異なります。体外受精(IVF)では、培養皿の中で精子自身の力で受精させるのに対し、顕微授精(ICSI)では、顕微鏡下で針のように細い管で精子を直接卵子の中に注入して受精させます。

体外受精・胚移植法のスケジュール

1. 体外受精(IVF)

まず排卵を誘発し、経腟超音波下で採卵専用の針を使って採卵します。採卵した卵子を受精に適した状態に整えて培養器で培養し、受精に備えます。次に男性の精液から運動精子を回収して、培養していた卵子1個に対して約10万個の精子をふりかけて、自然に受精するのを待ちます。そうしてできた受精卵(胚)を子宮内に戻し、着床させます。

2. 顕微授精(ICSI)

まず排卵を誘発し、経腟超音波下で採卵専用の針を使って採卵します。採卵した卵子を受精に適した状態に整えて培養器で培養し、受精に備えます。次に男性の精液から、顕微鏡でみながら細い針を使って状態の良い精子を1個回収し、それを卵子の中に直接注入して受精させます。そうしてできた受精卵(胚)を子宮内に戻し、着床させます。

当院のこだわりポイント1
「安心無痛採卵」

当院では、採卵時の痛みに配慮し、静脈麻酔を用いた「安心無痛採卵」を実施しています。採卵後は、入院の必要がありません。院内で安静後に診察し問題なければ、ご自宅にお帰りいただけます。

1.採卵の針が細い

当院では通常より細い針を使用しています。

静脈麻酔

2.静脈麻酔の使用

静脈麻酔(イソゾール)を使用し、眠った状態で採卵を終えることができます。
採卵の痛みが不安・怖い方におすすめです。

3.麻酔を希望されない方も座薬の痛み止めの使用

通常、採卵は麻酔なしでも行えます。採卵後、お仕事などで静脈麻酔を希望されない方には座薬の痛み止めをお渡ししております。

4.点滴の痛みにも配慮

希望者には麻酔テープ(ペンレス)を使用いたします。
点滴のための針の痛みが苦手な方もご安心ください。

当院のこだわりポイント2
「タイムラプスインキュベーターの導入」

当院では、受精卵を培養器内で培養したまま、患者さまの胚を一定時間ごとにカメラで撮影し、分割の様子をモニターで動画のように観察できる「タイムラプスインキュベーター」を採用しており、受精卵にやさしい培養環境を提供しています。

1.外気に触れず、受精卵の負担軽減

従来のインキュベーターでは、胚の発育状況を観察するためには、インキュベーターから外に取り出し、顕微鏡下で観察する必要がありました。しかし、空気中にさらされることは胚にとって負担がかかります。

タイムラプスインキュベーターを用いることで、胚の観察の際にインキュベーターから取り出す必要がなくなり、安定的な培養環境を作り出すことができます。

タイムラプスインキュベーター 画像

2.胚の動的な観察ができ、受精卵選択のヒントに

従来の定時の観察では、胚発育のある瞬間のみをとらえることしかできませんでした。
タイムラプスインキュベーターの使用で、これまで観察できなかった情報を得ることができるようになり、安定的な培養環境と移植に適した受精卵選択のヒントが増えました。その結果、タイムラプスインキュベーターから得られた情報は、妊娠を手助けする貴重なものとなっています。

生殖補助医療(ART)の副作用

生殖補助医療(ART)における排卵誘発剤の使用や、採卵の行程などで副作用が発生するリスクがあります。生殖補助医療(ART)を実施するにあたり、起こりうる副作用について解説します。

1.薬物治療(主に排卵誘発剤)のリスク

体外受精を行う際には、一度に複数の卵子を採取するために排卵誘発剤を使用する場合があります。
排卵誘発剤で卵巣を刺激すると卵巣が腫れ、腹水やときに胸水の貯留などの症状が起こることを卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といいます。重度のOHSSになると、腎不全や血栓症を起こす場合があります。卵巣過剰刺激症候群は必ず発症するものではありませんが、息苦しさ・お腹が張る・腹痛および腰痛・吐き気・下痢・尿量の減少・急激な体重増加などの症状が出た場合には、念のためすぐに受診してください。

2.採卵のリスク

経膣超音波装置を使って超音波画像を見ながら採卵専用の針で卵胞を刺して卵胞液と卵子を採取します。通常、採卵にともなう卵巣の出血はごくわずかですが、稀に腹腔内出血を起こし輸血が必要になったり、感染症を起こしたりするリスクがあります。また万が一、膀胱や腸、血管などの周囲の組織を損傷した場合は、外科的処置を要することがあります。

3.胚移植のリスク

胚を子宮内に移植する際、子宮頸部や子宮内膜、卵管に軽い炎症が起きるリスクがあります。

4.妊娠でのリスク

生殖補助医療(ART)による妊娠では、自然妊娠の場合に比べて、2人以上の胎児を同時に妊娠する、多胎妊娠のリスクが高くなります。多胎妊娠は、単胎妊娠と比べると、母体側には貧血や妊娠高血圧症候群などのリスクが高まり、胎児側には切迫早産や早産、発育不全などのリスクが高まります。また分娩時には帝王切開になる可能性があります。
その他、生殖補助医療(ART)による妊娠では、子宮外(卵管)妊娠の危険性が5%増加します。

5.ストレス

生殖補助医療(ART)を受ける患者さまは心理的なストレスを感じやすいといわれています。患者さま自身が生殖補助医療(ART)に関する正しい知識を身に着けるとともに、日常生活に運動や規則正しい生活リズム、リフレッシュできる時間や空間を取り入れ、こころとからだの調子を整えられるよう意識しましょう。

生殖補助医療(ART)に関してよくある質問

生殖補助医療(ART)の成功率について知りたいです。

日本産科婦人科学会の全国統計2019年版によると、生殖補助医療による胚移植あたりの妊娠率は、新鮮胚移植の場合、体外受精(IVF)で23.1%、顕微授精(ICSI)で18.7%、凍結胚の場合、35.4%と報告されています。

参考:日本産科婦人科学会雑誌第73巻第9号「令和 2 年度倫理委員会 登録・調査小委員会報告

生殖補助医療(ART)を受けるのに年齢制限はありますか?

生殖補助医療(ART)を受けるのに法的な年齢制限はありませんが、医学的には女性の年齢が30代後半から急速にART治療の成績が低下することがわかっています。加齢により、採卵や受精が難しくなったり、着床障害などの問題が起きやすくなったりするからです。生殖補助医療(ART)の適応がある場合は、年齢による影響を受ける前に、早めに検討されることをおすすめします。

監修医師紹介

小松 保則

六本木レディースクリニック

小松 保則医師

(こまつ やすのり/Yasunori komatsu)

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  • 経歴
  • 帝京大学医学部付属溝口病院勤務
  • 母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
  • 国立成育医療研究センター不妊診療科
  • 緑風荘病院 血液浄化療法センター
  • 六本木レディースクリニック勤務
  • 資格・所属学会
  • 日本産科婦人科学会 専門医
  • 日本産科婦人科学会
  • 日本抗加齢医学会
  • 日本産婦人科内視鏡学会

体外受精・不妊治療の六本木レディースクリニック