年齢によっては早めのステップアップが必要
タイミング法を行っても、結果を得られない場合は少なくありません。一般的に、不妊症治療を行う際、同じ治療法を続けることはありません。ある一定期間行って、結果が出なければ、次の治療法へとステップアップしていきます(図1)。同じ治療法を続けるのは、治療を受ける女性の年齢などにもよりますが、3~6周期ずつが目安となります。
その治療期間中に、妊娠が成立しない場合、治療の見直しが行われます。たとえば、タイミング法を自然周期で3周期、排卵誘発剤を使って3周期といった治療が行われます。しかし、妊娠から出産、そしてさらに次の妊娠の希望までを視野に入れると、年齢によっては早めのステップアップが必要です。
不妊症治療におけるステップアップ
タイミング法
↓
内分泌療法(排卵誘発剤)
※薬剤のタイプを変えることもある
↓
人工授精(AIH)
↓
体外受精(IVF)
↓
顕微授精(ICSI)
タイミング法から人工授精(AIH)へ
人工授精(AIH)は排卵の時期に合わせて、子宮の入り口から管を入れて精液を子宮内へ直接注入する方法です。タイミング法では、精液は子宮の入り口の手前に入るのに対し、人工授精の場合は、直接、子宮内に精液が入ります。精液が子宮内へ入った後は、タイミング法とまったく同じです。このため、妊娠確率はタイミング法に比べて、少し高くなる程度になります。
精液検査に異常がなく、卵管の通過性も確保されている場合、人工授精によって妊娠が成立するケースのほとんどが6周期内といわれています。したがって、人工授精は、約半年続けて、そこで一区切りと考えるのが一般的です。
一方、精液検査が良好でなく、女性の年齢が高い場合は、ここでの治療に長い期間をかけず、体外受精(IVF)へステップアップすることを検討することがあります。
体外受精(IVF)へ一気にステップアップも
タイミング法と人工授精との妊娠確率に大きな差がないため、タイミング法の次に人工授精を行わず、一気に体外受精へステップアップするという方法もあります。また、不妊期間が長く、高齢の場合は、最初から体外受精を検討することもあります。
どの治療を選択し、どれくらいの期間をかけるのがよいのかは、一概にはいえません。タイミング法や人工授精の限界、体外受精や顕微授精の可能性について、医師から説明を聞き、夫婦でよく相談して治療を進めることが大切です。
《参考文献》
吉村泰典(監), 生殖医療ポケットマニュアル. 医学書院 2014
竹田省, 田中温, 黒田恵司(編), データから考える不妊症・不育症治療 希望に応える専門外来の診療指針. メジカルビュー社 2017