精子と卵子のドッキングまでサポート

卵子と精子の出会いの場を確実にセッティングするのが、体外受精です。女性から採卵した卵子の培養液に、調製を施した元気な精子たちを加え(ふりかけ法とも呼ばれる)、受精を待つ方法です。ただし、精子に自力で卵子内に侵入する力がなかったり、卵子が受精しにくい性質をもっていたりする場合などでは、受精が難しいことがあります。

そこで、卵子と精子の出会いから、さらにドッキングまで手助けして受精を促す治療法が、顕微授精(卵細胞質内精子注入法intracytoplasmic sperm injection:ICSI)です。顕微授精は、顕微鏡下でただ1つの精子を選び、その精子を針のように細いガラス管を用いて吸引し、直接卵子内まで導く方法です。

精子には異常が見当たらないのに体外受精を行っても受精が成立しなかった夫婦や、重度の乏精子症、精子無力症、奇形精子症、抗精子抗体陽性などの要因により、体外受精を行っても受精が困難だと判断される夫婦にとって選択肢となる治療法です。

顕微授精の大きなメリットは、精巣内では精子がつくられているのに精液中に精子が出てこない「閉塞性無精子症」であっても、閉塞がないのに精子をつくる能力が極めて低下している「非閉塞性無精子症」でも、精巣内から採取した精子を用いることで妊娠を期待できる点です。

一連の作業はスペシャリストが担う

顕微授精の具体的な手順は、(1)精子を集める(無精子症の場合は、適切な方法で精巣より採取)、(2)酵素処理し、卵子の周囲を取り囲んでいる卵丘細胞を取り除く、(3)運動能力が高く形が正常な精子を選ぶ、(4)顕微鏡で観察しながら、選択した精子を細いガラス針で吸引する、(5)そのガラス針を卵子に刺し入れ、卵子の細胞質の中に精子を注入する、という流れで進められます(表1)。この一連の作業には熟練した技術が必要とされ、多くの施設では、胚培養士(エンブリオロジスト)と呼ばれるスペシャリストが行っています。

表1 顕微授精の手順

(1) 精子を集める
(2) 卵子を取り囲む卵丘細胞を取り除く
(3) 正常な精子を選ぶ
(4) 精子をガラス針で吸引
(5) 卵子の細胞質に精子を注入

(3)の精子の選定は、結果に大きく影響を与えるプロセスですが、現時点では、「見た目」と「動き方」が主な目安となっています。

受精が確認されたら、培養を続けて成長を見届け、良好に成長した胚を選んで子宮に移植します。

 

 

《参考資料》

竹田省, 田中温, 黒田恵司(編), データから考える不妊症・不育症治療 希望に応える専門外来の診療指針. メジカルビュー社 2017

成田収(著), 未来の赤ちゃんに出会うために 不妊治療・体外受精のすすめ(第3版). 南山堂 2019

日本生殖医学会, 不妊症Q&A 平成25年4月 http://www.jsrm.or.jp/document/funinshou_qa.pdf

 



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

運営者情報

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院長 小松保則医師