タイミング法の実施条件

女性の不妊症の原因には、排卵障害(排卵させるまでの過程に異常が起き、卵が育たない、また育ってもうまく排卵できない状態)、卵管性不妊(精子や受精卵の通り道になる卵管が詰まっていたり、狭くなっていたりする状態)、子宮関連の病気(子宮内膜症など)が代表的なものとして挙げられます。

男性の不妊症では、性機能障害(勃起障害など)と、精子の数や運動率が悪くなっている状態が原因として挙げられます。

このうち、排卵障害、卵管性不妊、男性不妊の3つは頻度が高く、不妊症の3大原因といわれています。タイミング法をすすめられるのは、基本検査でこのような異常がみられず、自然妊娠が可能であると認められた場合です。具体的には、女性の場合は卵管に異常がないこと、排卵障害があっても軽症なこと、男性では精液検査の結果が正常なことなどが条件になります(1)。

図1 タイミング法の主な実施条件

タイミング法の実際

妊娠に至る性交のタイミングは、排卵日を最後とする6日間が適していて、とくに排卵日の前々日、あるいは前日が効果的だとわかっています1。そこで、排卵日を正確に予測することが、タイミング法を実践するうえで大切です。

排卵日は自分で基礎体温表を使ってある程度予測することもできますが、医師に排卵日を予測してもらうと、かなり正確にわかります。受診の際、医師は超音波検査で卵胞の変化を測定しています。排卵時、卵胞のサイズは18~22mmになりますから、卵胞のサイズをみれば、排卵時期がおおよそ推定されます。

また、排卵が起きる時期にはLHサージがはじまります。LHサージとは、排卵時に黄体形成ホルモン(LH)が大量に分泌されることです。排卵はLHサージがはじまって34~42時間後、LHサージのピークから10~12時間後とされます。

排卵日近く、指示された日時に受診し、超音波検査と尿中LHを測定し、正確な排卵日を予測してもらいましょう。それに加えて、自宅で簡易キットを用いて尿中LHを測定する場合は、陽性になった日に性交するように指導されます。

その他、エストラジオール(E2)、プロゲステロン(P4)、卵胞刺激ホルモン(FSH)など血液中のホルモン値の変化を参考にする場合もあります。

排卵誘発剤を使いながらタイミング法を続ける

タイミング法を行う期間は、女性が35歳以下ならば、最長でも1年程度、それ以上の年齢であれば、3~4回程度の月経周期がおおよその目安といえます。その過程で、ホルモンバランスが崩れたり、排卵がなかったりしたときは、排卵誘発剤を使って、より妊娠率を上げる方法をとることがあります。代表的な排卵誘発剤を紹介します。

クロミフェン療法

クロミフェンは抗エストロゲン薬で、下垂体由来の卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH)が継続的に分泌され、排卵誘発につながります。排卵率は高く、副作用が比較的少ないといわれています。

クロミフェン-hCG療法

クロミフェンに加えて、黄体を活性化するヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)を注射し、排卵を促します。

hMG療法

クロミフェンで排卵しない場合、ヒト下垂体性性腺刺激ホルモン(hMG)製剤を注射します。hMGは直接卵巣を刺激するため、複数の排卵がみられる場合があり、双子や三つ子の確率が比較的高いとされています。

タイミング法や排卵誘発を行っても、妊娠に至らないこともあります。その場合は、次のステップである人工授精がすすめられます。

 

1)Practice Committee of the ASRM. Fertil Steril. 2017; 107(1): 52-8.

 

《参考文献》

日本生殖医学会, 不妊症Q&A 平成25年4月 http://www.jsrm.or.jp/document/funinshou_qa.pdf

吉村泰典(監), 生殖医療ポケットマニュアル. 医学書院 2014

竹田省, 田中温, 黒田恵司(編), データから考える不妊症・不育症治療 希望に応える専門外来の診療指針. メジカルビュー社 2017

 



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

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