体外受精後の下腹部痛は妊娠の可能性があるといえます


体外受精後の下腹部痛の原因はさまざまなものがあるため一概にいえませんが、そのひとつとして妊娠の可能性が考えられます。
胚移植後から次の生理までの間、妊娠していれば下腹部が重い感じがする方もいるといえます。

この段階ではまだ受精卵を肉眼では見ることはできず、生理もきていないため本人が妊娠に気が付くことはありません。
胚移植から何日かすると、胸の張りや軽い吐き気・下腹部痛を感じる方もいます。

妊娠していたときに起こる下腹部痛もあります

妊娠初期症状の下腹部痛は、妊婦さんの多くが経験していることです。
下腹部痛といっても人によって感じ方が異なり、チクチクするような痛み、お腹が重だるいような痛み、生理痛に似た痛みと表現することがあります。

この痛みの原因は受精卵が着床するときに、子宮が変化するからだと考えられている症状です。
下腹部痛が起こる時期とは、次の生理予定日の1週間くらい前です。

このころにちょうど受精卵が着床し、胎芽へと変化しています。
受精卵が子宮にたどり着くと、子宮内膜に潜り込み母体の血管がつながっていく時期です。

妊娠初期には少量の着床出血を起こすこともあります。
体外受精の場合は、妊娠判定で妊娠しているかがわかるため、生理痛の痛みと勘違いしないようにしましょう。
生理痛と妊娠初期の下腹部痛は、症状が似ているため区別は難しいです。

妊娠初期には胸の張りや乳首が敏感になり、ニオイに敏感になって軽い吐き気を感じる人がいます。
頻尿や下痢・便秘などの変化もおこる場合があるでしょう。

いつもと体調が違う場合は、妊娠している可能性も考えてみてください。
妊娠による下腹部痛があるようなら、できるだけムリを避けて体を冷やさないようにしましょう。

下腹部痛は子宮外妊娠の可能性もあります

子宮外妊娠とは子宮以外の部分に着床することです。
その多くは卵管での妊娠となっています。
体外受精は子宮に移植するため、子宮外妊娠はおこらないと考えられがちです。

しかし子宮から卵管へと逆送され子宮外妊娠をおこすことが知られています。
体外受精による子宮外妊娠は、子宮内膜の厚さや、受精卵の分割とは関係なくおこるものです。

胚を複数移植する場合では、子宮内と卵管の2か所で同時に受精する例もみられており、自然妊娠と比べて割合は高くなります。

何度か子宮外妊娠を経験され、卵管を温存する処置をした場合、次回の体外受精でも子宮外妊娠になる可能性はあるでしょう。
子宮外妊娠を防ぐために、卵管を根元から結紮する方法がありますから、事前に対策することは可能です。

自然妊娠での子宮外妊娠の割合は0.5~1%ですが、体外受精ではその割合が増加する傾向があります。
超音波検査を利用して妊娠5週目で胎嚢がみられなければ、子宮外妊娠を早期発見することが可能です。

下腹部痛がある際には、医師に相談し診断してもらうと安心でしょう。

卵巣過剰刺激症候群の可能性も考えられます


体外受精での下腹部痛は、ひとつの可能性として卵巣過剰刺激症候群が挙げられます。
これはhMG(ヒト閉経ゴナドトロピン)による刺激の副作用で、hCG注射を使用した後におこる症状です。

hMGは閉経した女性の尿から抽出した成分で、卵胞を刺激するために使用します。
多数の卵胞を育てていくため、卵胞が過剰に刺激されることによって、卵巣が腫れることがあるのが特徴です。
お腹や胸に水が溜まり、お腹の張りや下腹部痛などがあります。

卵巣が大きくなると息苦しさを感じるのが特徴です。
軽症・中等症・重症の3段階に分けられ、体外受精では軽症となる可能性があります。
基本的には安静を心がけ、痛み止めで経過をみることが可能です。

妊娠しなければ症状は軽減されるため、様子をみるようにしましょう。
卵巣過剰刺激症候群は、超音波を用いて卵胞数と卵胞径をモニターすることで予防することができます。

最初からhCG注射は多い量にせず調節することでも予防が可能です。
hCG注射の代わりに、プレセリン点鼻薬を使用する方法もあります。

重症化する例では、妊娠していることが多く、人工妊娠中絶が必要です。
卵巣過剰刺激症候群をおこさない体外受精の方法もありますから、医師とよく相談しながら治療を決めましょう。

(まとめ)体外受精後に下腹部痛があるのはなぜ?

1.体外受精後の下腹部痛は妊娠の可能性があるといえます

体外受精後の下腹部痛の原因は、妊娠初期の症状かもしれません。

胚移植から次の生理までの間で、胸の張り・軽い吐き気・下腹部の重い感じが出る方がいます。
このような変化が現れたら妊娠の可能性があるため、妊娠判定日に来院してください。

2.妊娠していたときに起こる下腹部痛もあります

体外受精後の下腹部痛は、ひとつの可能性として妊娠による痛みが予想できます。

妊娠した方の多くが下腹部の違和感があるといわれています。
生理予定日の1週間くらい前からチクチクしたような、お腹が重いような痛みがあるようなら、妊娠を疑ってみましょう。

3.下腹部痛は子宮外妊娠の可能性もあります

体外受精後の下腹部痛は、ひとつの原因として子宮外妊娠が挙げられます。

卵管へと受精卵が逆流することで子宮外妊娠となる場合もあるため、注意してみましょう。
超音波検査の発展により早期発見が可能ですから、いつもと違う痛みなら医師に相談してください。

4.卵巣過剰刺激症候群の可能性も考えられます

体外受精後の下腹部痛は、卵巣過剰刺激症候群の可能性も考えられます。

腹水や下腹部痛があるのが特徴です。
軽症であれば安静を心がけると回復し、妊娠していなければ症状は治まります。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

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院長 小松保則医師