体外受精は、タイミング法や人工授精などの一般的な不妊治療では妊娠が難しい不妊症の方に適応される治療法です。これまで、体外受精によってたくさんの新しい命が生まれてきた一方で、体外受精をおこなった際の、早産のリスクや母体・子どもへの影響を気にする方も少なくありません。

ここでは、体外受精のリスクに関する正しい知識と、リスクを回避する方法について解説します。

体外受精による早産の確率は自然妊娠より高いといわれています


体外受精による早産の確率は、自然妊娠よりも高いといわれています。これには体外受精では、自然妊娠に比べて、早産の要因のひとつである多胎妊娠が起こりやすいということも影響しています。しかし単胎妊娠であっても、体外受精で妊娠した場合には早産が起こりやすいとも報告されています。

ただし、体外受精をおこなった人すべてに早産などのリスクが降りかかるわけではありません。むしろ体外受精によって問題なく妊娠し、無事に出産できる方がほとんどです。

また、近年の不妊治療技術の発達により、体外受精での早産のリスクは、自然妊娠の場合に近づきつつあります。自然妊娠であっても、早産になるリスクはある程度ついて回るものなので、必ずしも体外受精だから危険であるとは言い切れません。

これから体外受精を受けたいと考えている方は、過度にリスクを恐れることのないよう、体外受精に関する正しい知識を持っておくことが大切です。

早産を防ぐためにできることがあります


早産を防ぐためにできることは、ビタミンB群のひとつである葉酸を摂取することです。早産を100%防げるわけではありませんが、早産リスクを軽減する方法として有効です。また、葉酸は体外受精の場合に限らず、妊婦には必須の栄養素であるといわれます。

葉酸がもたらす効果とは、主に以下のようなものです。

  • 早産、低体重出産の防止
  • 胎児の神経管閉鎖障害など先天性異常発生の防止
  • 母体の貧血防止
  • 妊娠高血圧症候群などの妊娠中毒症の防止

このように母体にとっても胎児にとっても、葉酸の摂取は重要なものとなります。特に、先天性異常の発生を防ぐためには重要視されており、妊娠初期の葉酸の摂取がすすめられています。

葉酸の摂取量の目安は1日に0.4mg~1.0mgです。この摂取量の上限を超えて摂取した場合には、妊婦は発熱などを起こす可能性があり、胎児はぜんそくのリスクが高まるともいわれています。さらに、魚介類に含まれるn-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)のひとつであるDHAの摂取も早産防止や胎児の脳の発達にも有効だと報告されています。

早産の他にも母体へのリスクがあるのが体外受精です

体外受精では、早産の他にも、母体に対するいくつかのリスクが発生する可能性があります。自然妊娠とは違い、体外受精では採卵のための薬剤の使用や、採卵、胚移植などの特殊な操作を必要とするため、その過程で母体に影響することがあるからです。ここでは、体外受精によって起こりうるリスクについて詳しく解説します。

多胎妊娠

多胎妊娠とは、双子などの2人以上の子どもを同時に妊娠することを指し、早産や低体重での出産が起こりやすくなります。また、妊娠高血圧症候群などの妊娠中毒症の発生リスクが高くなります。体外受精で多胎妊娠が起こりうるのは、1周期に2〜3個の分割した胚を移植した場合であり、通常は多胎妊娠を避けるために、1周期あたり1個の胚を移植するのが基本です。

胎盤異常

胎盤異常とは、胎盤の位置が正常にならないことを指します。体外受精では、胎盤が子宮口をふさいでしまう前置胎盤の確率が若干高くなるといわれています。またこの状態になると、胎盤と子宮が癒着する前置癒着胎盤を引き起こすことがあります。このような胎盤異常が起きた場合、帝王切開での出産となり母子ともに負担が大きくなります。

子宮外妊娠

子宮以外の場所で着床し、妊娠してしまうことを指します。体外受精では、子宮内に胚を移植しますが、子宮外妊娠は、移植後に胚が卵管など別の場所に移動してしまうことで発生します。子宮外妊娠をした場合は手術が必要となり、母体に負担がかかります。

麻酔の合併症

体外受精の採卵の際には、必要に応じて局所麻酔や静脈麻酔をおこないますが、麻酔の効き方などには個人差があります。体質によっては、ごく稀に血圧低下や重症喘息発作などのアレルギーを引き起こすこともあります。歯科治療や手術で麻酔による合併症が出たことがある方は、必ず医師に相談しましょう。

採卵時の出血

採卵は、経膣超音波装置を使って超音波画像を見ながら採卵専用の針でおこないます。通常、採卵にともなう卵巣の出血はごくわずかですが、卵巣のすぐ近くには内腸骨動脈・静脈という太い血管や卵巣動脈・子宮動脈という血管が通っており、これらの血管を傷つけてしまうと腹腔内に大量出血が起こることがあります。また万が一、膀胱や腸、血管などの周囲の組織を損傷した場合は、外科的処置を要することがあります。

卵巣過剰刺激症候群

卵巣過剰刺激症候群とは、採卵に際して使用するFSH製剤やHMG製剤などの排卵誘発剤に対し、卵巣が過剰反応を起こして腫れあがり、血液濃縮、腹水、胸水の貯留などが起こる状態を指します。発症すると、お腹が張る、急に体重が増える、吐き気がする、尿の量が少なくなる、喉が渇くといった自覚症状が見られるようになり、重症例では入院治療が必要です。

体外受精1周期あたりに起こる確率は、軽傷を含めると2~33%と幅があり、重症化するケースは1~2%といわれています。体外受精を受けるすべての方に起きるわけではありませんが、排卵誘発剤を使う場合には卵巣過剰刺激症候群になるリスクがあります。

高齢出産によるリスク

体外受精は高齢になってからおこなわれる傾向があり、高齢出産になるケースが少なくありません。高齢出産になると、自然妊娠の場合でも流産や早産、難産などの分娩リスクが高まると考えられています。これは、老化にともなう卵子の質の低下が関係しており、細胞分裂が正しくおこなわれないことで、着床や胚の成長が難しく、妊娠が維持できなくなるためだと考えられています。

子どもへのリスクは自然妊娠と大きな違いはないといわれています

体外受精による子どもへのリスクはどうでしょうか。

実は、体外受精によって生まれた子どもに、どのような健康上のリスクがあるかは、体外受精自体の歴史が浅いため、よくわかっていないのが現状です。世界で初めて体外受精が行われたのは、1978年、日本での初となる体外受精は、1983年であり、まだ40数年程度のデータしか揃っていないのです。

そのため、今後生まれてくる子どもにどのようなリスクがあるかを明らかにするには、さらなる研究が必要です。しかし今まで体外受精を受けた子どもと、自然妊娠を比べると、それほど大きな違いがないと感じる方も多くいます。

体外受精で閉経が早まるリスクはありません

体外受精をおこなうと、閉経が早まるというリスクはないといわれています。排卵は通常なら1回の周期で1個なのに対して、体外受精では排卵誘発剤を使い、成長する卵胞の数を増やして複数の卵子を採卵します。

このことが、閉経が早くなるといわれてしまう理由と考えられます。しかし実際には、通常のサイクルにおいても一度にいくつもの卵胞が失われています。

複数の卵胞が成長していき、排卵時には一番成熟した卵胞から卵子が卵巣に飛び出しているのです。一番成熟した卵胞は、主席卵胞と呼ばれています。

排卵されなかった残りの卵胞は、そのまましぼんでいって失われていくといわれます。体外受精の治療で複数の卵子が採れるのは、本来失われてしまうはずの卵胞の成熟を促してそこから採卵しているからです。

もともと消費されるはずのものですから、体外受精の治療によって卵胞の消費を本来よりも高めることはないと考えられています。そのため、体外受精の治療をおこなったことが原因で閉経が早まることもないといえるのです。

ちなみに主席卵胞というと質がよい卵胞のように見えますが、主席卵胞と質は関係ありません。偶然にも、生理周期に合わせて見合った大きさまで育ったものを指しています。

体外受精はさまざまな不妊の場合に適用されます

体外受精は、タイミング法や人工授精などの一般的な不妊治療では妊娠が難しい次のような不妊に適応されます。

卵管性不妊や重度男性不妊

卵管が閉鎖してしまっているため、卵子と精子が出会えない場合や男性不妊の場合にも適応されます。一般的に、精子の状態がある程度良くないと妊娠は望めませんが、重度の男性不妊の場合の成功例も多くあります。
その他、免疫性不妊(抗精子抗体を持っている)場合も、体外受精が適応されます。

子宮内膜症

子宮内膜症や排卵障害などがある場合も、体外受精に適応して妊娠を目指すことができます。

ステップアップ

タイミング療法や人工授精からのステップアップとして、体外受精をされる人も多いです。

35歳以上の場合

タイミング法で妊娠を試みるご夫婦も多いかと思いますが、一般的に女性の年齢が35歳を過ぎると卵子の質は低下し、タイミング法では妊娠が難しくなるといわれています。高齢のために自然妊娠が難しくなっている方や、原因不明の不妊がつづいている方も体外受精が適応されます。

体外受精のリスクを回避するためにできること

体外受精では、採卵や薬剤投与、胚移植など、さまざまな治療をおこなうことで、母体負担が大きくなる印象があります。また、どのような治療でも副作用などのリスクはつきものです。ここでは、体外受精のリスクを回避するためにできることを解説します。

胚移植は1個までに留める

体外受精による代表的なリスクである多胎妊娠は、1周期に複数個の胚を移植することを避け、1周期あたり1個の胚を移植することで回避することができます。

多胎妊娠は、母体にも胎児にも危険が大きいため、日本産科婦人科学会も、1周期で移植する受精卵は原則1個までとする見解を出しています。ただし、35歳以上の方や2回以上続けて妊娠不成立であった方などについては、2個まで移植する選択も可能としています。

移植しない胚は一旦凍結保存し、次の治療周期で使用することもできるので、リスクを理解したうえで、より安全な方法を選ぶことが大切です。

アンタゴニスト法と排卵誘発剤の調整

排卵誘発剤による体調不良や卵巣過剰刺激症候群の発生は、患者さま一人ひとりの体質や年齢などに合った安全な方法を選択し、体調の変化を見ながら慎重に進めることでリスクを軽減できます。

排卵誘発剤には低刺激のものから高刺激のものまで調整でき、高刺激であるほど、卵巣過剰刺激症候群のリスクが上がります。痩せ型の方や多嚢胞性卵巣症候群を持つ方、あるいは18歳~35歳までの方は排卵誘発剤で卵巣過剰刺激症候群を発症するリスクが高いといわれています。これらの条件を持つ方に対しては、低刺激や中刺激など、より副作用のリスクが低い排卵誘発の方法に調整します。

例えば、アンタゴニスト法は、卵巣過剰刺激症候群のリスクになりえるhCG注射を使わない卵巣刺激の方法で、卵巣過剰刺激症候群の発生リスクを抑えることができます。また、必要に応じて採卵時に卵巣過剰刺激症候群の予防薬を投与する方法もあります。

採卵~胚移植のスケジュールに配慮することも、母体負担の回避につながります。採卵周期には受精卵の移植はおこなわず、凍結胚を用いて次周期以降に移植をおこなうことも大切です。

健康な母体を保つ

体外受精で起こりうるリスクを回避するには、健康な母体を保つことも大切です。日頃から自分の体調を把握して健やかに過ごすことを目指しましょう。

そのためにまず意識したいのは質のよい睡眠と、バランスのよい食事をとることです。質のよい睡眠は、傷ついた細胞の修復を促し、卵子の老化や卵巣年齢を若く保つのにも役立つといわれています。また、バランスのよい食事は身体づくりの基本になります。特に、不妊治療や妊娠・出産は普段よりも多くの栄養素が必要になるため、妊娠前から正しい食習慣を身につけることが大切です。

適度な運動を定期的におこなうことも心身をリフレッシュし、健康な母体を維持するのに有効です。人と話しながらでもおこなえるくらいの軽めの運動を、息を止めずにおこなうことがポイントです。適度な運動によって、血行が促進され、必要な栄養素や酸素の運搬、老廃物の排泄がスムーズになります。

体外受精に適切なクリニックの選びも重要です

体外受精は高度な技術を要するだけでなく、いくつかのリスクがともなうものです。起こりうるリスクを想定し、必要に応じて対処する経験と技術を持った、体外受精に適切なクリニックを選ぶことも重要です。

体外受精の実績があるクリニック

一般的な不妊治療で通っていた産婦人科やクリニックでそのまま体外受精をしようとする方は少なくありません。しかし、クリニックによって考え方や得意とする分野、技術も大きく異なります。有名なクリニックだからと思っていても、実は「出産で有名なクリニックだった」ということもあります。

人づてに聞いた評判などを参考にするのはよいですが、Webサイトなどを見て何に力を入れているのか、何を得意とするクリニックなのかなどを自分で事前にチェックし、体外受精などの高度な不妊治療の実績のあるクリニックを選ぶようにしましょう。

腕のよい胚培養士がいるクリニック

体外受精では、採卵した卵子や受精卵を培養する作業を胚培養士がおこなっています。健康な受精卵を培養するには、胚培養士の腕がかかっているといわれるため、腕のよい培養士がいるクリニックを見つけることが大切です。

実際にクリニックにいる胚培養士の腕がよいかを知ることは難しいですが、「生殖医療胚培養士」や「臨床エンブリオロジスト」などの資格を持っていることもひとつの判断材料になります。

体外受精にともなうリスクを知ったうえで治療を受けましょう

体外受精という医療行為を初めて受けるときにはあらゆる不安がよぎることもあるでしょう。しかし医療行為ではどのような治療を受ける場合にもリスクがあることを知っておきましょう。

体外受精には、自然妊娠にはない特有の母体負担のリスクがあります。ただし、体外受精の技術は日々の研究によって、より成功率が高く、母体や子どもへのリスクが低い方法へと進化し、安全性も向上しています。過度に体外受精のリスクを恐れることのないよう、主治医との信頼関係を築き、リスクを正しく知ったうえで治療を受けましょう。

(まとめ)体外受精は早産のリスクがある?母体や子どもへの影響とは

体外受精による子どもへの影響は、まだわかっていないことも多いものの、自然分娩の場合と大きな違いはないといわれています。

その一方で、母体に対しては、採卵や胚移植の過程である程度の負担やリスクが予想されます。しかし、体外受精で起こりうる母体への影響は、適切な治療を選択することで軽減することができます。体外受精にともなうリスクを正しく理解し、適切な治療によってリスクを回避するためにも、体外受精の実績のあるクリニックで治療を受けることが大切です。

当院では、体外受精・不妊治療専門院として体外受精のリスクに向き合い、患者さま一人ひとりに合った治療をご提案いたします。不妊治療をお考えの方はぜひご相談ください。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

運営者情報

運営クリニック 六本木レディースクリニック
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院長 小松保則医師