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体外受精させた受精卵を子宮内に戻すのが胚移植です
卵子と精子を体外受精させ、受精卵を培養液の中で育てた後に子宮内へ戻す方法を胚移植と言います。
採卵から2日目で受精卵の細胞が4個以上、または 3日目で受精卵の細胞が6個以上となったのを確認した後に子宮内に移植するのが一般的な流れとなっています。
日本産科婦人科学会では「生殖補助医療の胚移植において、移植する胚(受精卵)は原則として単一とする」と定めています。
35歳以上または2回以上続けて妊娠に至らなかった場合については、2個の胚移植が許容されています。
胚移植には新鮮胚移植と凍結胚移植があります
胚移植には二通りの方法があります。
採卵した周期に子宮内へ受精卵を戻す新鮮胚移植と、採卵周期には移植を行わず、一度受精卵を凍結してから次の周期以降に子宮内へ戻す凍結融解胚移植です。
さらに凍結融解胚移植には、薬剤を使用することなくより自然に近い状態で子宮内へ戻す自然周期移植とホルモン剤を使用し、胚移植する際のホルモンの状態をコントロールしながら子宮内へ戻すホルモン補充周期移植があります。
体外受精の胚移植の流れを大まかにまとめると、次のようになります。
- 排卵を誘発する
卵子を発育させ、妊娠可能なグレードの高い卵子を作り出すために薬剤によって排卵を誘発させます。使われることが多い薬剤は卵子を育てるホルモン剤、排卵を促す薬剤、排卵誘発剤を効きやすくするための薬剤、早く排卵するのを防ぐための薬剤です。
- 卵子と精子の採取
超音波で確認しながら卵胞から卵子を取り出します。採卵の当日、自宅もしくはクリニックにて精子の採取を行います。
- 受精
培養容器にて卵子と精子を受精させて培養し、分割を進行させます。採卵から2日目で4分割以上、または3日目で6分割以上になったら子宮内に移植するのが一般的です。
- 胚移植
受精卵を子宮内に戻します。
使われず余った受精卵は凍結保存することもあります。およそ1ヶ月後に妊娠判定の検査を行います。
妊娠に至らなかった場合は月経周期に合わせ、凍結保存した受精卵を移植します。
新鮮胚移植よりも凍結胚移植を選ぶ割合が高いです
日本産科婦人科学会のデータによると、新鮮胚移植の妊娠率は凍結胚移植の妊娠率を下回っています。
理由としては、凍結胚移植は質のよい受精卵のみを選ぶことが多いですが、新鮮胚移植では一定の基準に達していない胚移植も含まれているためと考えられます。
クリニックでは胚凍結を行う際に、良質と判断された受精卵のみを選んで凍結保存します。
グレードの高くない受精卵は凍結や融解の影響を受けやすく、解凍した時にさらに状態が悪化することがあるからです。
凍結胚移植では良質な受精卵のみを移植しますので、結果として妊娠率は高くなります。
また凍結胚移植は卵巣過剰刺激症候群新鮮(OHSS)を回避することができるため、新鮮胚移植よりも凍結胚移植を選択する割合のほうが高くなっています。
凍結胚移植を選択した方が着床率が高くなる場合もあり、新鮮胚移植より積極的に行っているという側面があります。
ホルモンを補充することで着床率を上げる効果があります
体外受精で胚移植を行う際、なるべく妊娠しやすいタイミングで胚移植するために「ホルモン補充周期」を利用することがあります。
自然妊娠であれば受精卵の成長に伴い子宮内膜の着床準備が進みますが、体外受精では子宮内膜の準備が整う時期と胚移植のタイミングを人工的に合わせる必要があります。
自然の排卵周期に合わせると排卵日を正確に特定するのが難しく、着床日を決定しにくいという問題があります。
そこでホルモン剤を投与することで排卵周期を調整し、移植する日を決められるようにします。
このホルモン補充周期法であれば、着床に最も適したタイミングで移植することが可能となります。
ホルモン補充周期のメリットは、ホルモン剤の投与によって着床率が上がることです。
排卵しにくい、子宮内膜が厚くなりにくいといった方でも妊娠する可能性があります。
ホルモン剤の投与についてわからない点は、クリニックに尋ねてみましょう。
(まとめ)体外受精の胚移植ってどんな治療法?
卵子と精子を体外受精させ、発育させた受精卵を再び子宮内へ戻す方法が胚移植です。
日本産科婦人科学会では移植する受精卵は原則として1個のみと定めていますが、35歳以上または2回続けて妊娠不成立だった女性に対しては2個まで移植可としています。
胚移植には新鮮胚移植と凍結胚移植の2つがあります。
採卵した周期に子宮内へ受精卵を戻す新鮮胚移植と、採卵周期には移植をせず、いったん受精卵を凍結してから次の周期以降に戻す凍結融解胚移植です。
新鮮胚移植よりも凍結胚移植を選ぶ割合が高いのは、凍結胚移植の方が妊娠率の上昇が認められるためです。
また凍結胚移植には、卵巣過剰刺激症候群新鮮を防ぐ効果が期待されています。
体外受精の胚移植では、なるべく妊娠しやすいタイミングで胚移植するために、ホルモン補充周期を利用することがあります。
ホルモン剤を投与することで排卵周期を調整し、着床に適したタイミングで移植することができるようになります。