卵子凍結とは、卵巣から採取した卵子を凍結保存し、将来妊娠を希望する際に体外受精へ活用する生殖補助医療(ART)のひとつです。女性の社会進出にともなう晩婚化や出産年齢の高齢化を背景に、利用する方は年々増えています。

しかし、加齢とともに卵子の質や妊娠率は低下するため、卵子凍結には年齢的な制限の目安があります。本記事では卵子凍結が何歳まで可能なのか、さらに推奨される時期や注意すべきリスクについてわかりやすく解説します。

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卵子凍結の年齢制限は?

卵子凍結は、年齢に応じてその有効性やリスクが大きく変わります。日本生殖医学会のガイドラインでは、40歳以上での卵子凍結(未受精卵子)は推奨されず、また凍結した卵子の使用についても45歳以上は推奨されていません。

これは、加齢による卵子の質の低下や妊娠・出産にともなうリスクの上昇を踏まえた基準です。

参考:日本生殖医学会「社会的適応による未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存のガイドライン

卵子凍結の推奨年齢:40歳未満

卵子の数や質は年齢とともに減少します。特に40歳前後を境に、妊娠率の低下や流産のリスク上昇が顕著です。そのため、日本生殖医学会のガイドラインに基づいて、卵子凍結は39歳までとしている医療機関が多い傾向にあります。「将来の妊娠の選択肢を残したい」という方は、できるだけ若いうちに凍結しておくことが推奨されます。

凍結した卵子の使用:45歳未満

卵子凍結の年齢だけでなく、実際に凍結卵子を使用する時点の推奨年齢も示されています。45歳以上での妊娠は、高齢出産による母体や胎児に対するリスクが高まるため、多くの医療機関では44歳までの使用を基準としています。

そのため凍結保存するだけでなく、その後に使用することも踏まえて卵子凍結を検討することが重要です。

採卵時の年齢:有効性なら34歳、必要性なら36歳前後

20〜34歳までの卵子は質の低下が少なく、妊娠につながりやすい妊娠適齢期です。そのため、質のよい卵子を保存する観点では、34歳までに卵子凍結をおこなうのが望ましいと考えられています。

一方で、現実的な将来の妊娠を見据えると36歳前後までの採卵が必要であるとされています。日本生殖医学会の「未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関する指針」においても、未受精卵子等の採取時の年齢は36歳未満が望ましいとされています。

卵子の質の観点からの有効性は34歳未満、妊娠を見据えた場合の必要性は36歳前後を目安と考えてよいでしょう。

参考:日本生殖医学会「医学的適応のない未受精卵子あるいは卵巣組織の凍結・保存について

40歳以上の卵子凍結のリスク|卵子凍結に年齢制限がある理由

卵子凍結は40歳未満が望ましいですが、あくまで推奨年齢であり、40歳以上の卵子凍結も不可能ではありません。実際に対応可能なクリニックも存在します。

しかし、40歳以上の卵子凍結は以下のようなリスクがあるため、慎重に検討する必要があります。

妊娠率が低い

前述のとおり、40歳を超えると卵子の質が低下し、妊娠に至る確率は著しく下がります。そのため、卵子凍結に要する時間・費用に対して、得られる妊娠の可能性が低くなる場合があります。

妊娠の可能性を確保するには、若年層よりも多くの卵子を採取・凍結しておく必要があります。しかし、加齢にともない卵巣機能が低下するため、十分な数を確保しにくく、採取できた卵子の質も低下している可能性が大きいのです。

かかるコストと期待できる成果(妊娠に至る確率)のバランスを踏まえ、慎重に検討しましょう。

流産リスクが高い

年齢にともない流産リスクも高まります。卵子の質によって受精卵(胚)が着床しなかったり、妊娠できたとしても、着床後に育たなかったりする可能性があります。流産は卵子の質の低下が大きく影響しており、40歳以上では流産率が高くなることが統計的にもわかっています。

そのため、妊娠成立だけでなく、その後の妊娠維持の難しさも考慮する必要があります。

妊娠合併症のリスクが高い

高年齢での出産は、母体と胎児の双方に負担がかかり、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病、前置胎盤などの妊娠合併症のリスクが高くなります。これにともない、早産や帝王切開の可能性も上昇してしまいます。

実際に、34歳未満と比較すると40歳以上では妊娠合併症の発症リスクがおよそ2倍以上に増えることが報告されています。

卵子凍結に40歳未満の年齢制限を設けているクリニックが多いのは、これらのリスクがともなうことが理由といえるでしょう。

卵子凍結の妊娠率や成績

凍結卵子によってどの程度の確率で妊娠・出産につながるかは、多くの方が気になる点です。ここでは、日本産婦人科学会や各種調査データをもとに、卵子凍結の妊娠率や成績について解説します。

卵子1個あたりの出生率は4.5〜12%

日本産婦人科学会が公表しているデータによると、凍結卵子を利用した場合の着床率は17〜41%、出生率は4.5〜12%程度にとどまるとされています。

ひとつの卵子を凍結しても、必ずしも妊娠・出産に結びつくわけではないことは留意しておきたい点です。また、妊娠の可能性を上げるためにも、複数の卵子を凍結することが望ましいといえます。

参考:日本産婦人科学会「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」より〈4. 卵子凍結のデメリット 「未授精卵子凍結の成績」 〉

年齢別・卵子数別の出生率

以下は、年齢別・卵子数別の出生率をまとめた表です。
34歳で20個の卵子があれば91%の確率で1人の赤ちゃんを得ることができますが、40歳では52%となります。

年齢 10個 20個 30個 40個
28歳 80% 94%
34歳 75% 91% 95%
37歳 53% 75% 87% 92%
40歳 30% 52% 65% 76%
42歳 21% 36% 49% 60%
44歳 7% 15% 21% 26%

参考:日本産婦人科学会「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」より〈4.卵子凍結のデメリット「年齢別・卵子数別の、少なくとも1人の赤ちゃんを持てる確率」〉

凍結できた卵子の数が多いほど出生率も上がりますが、どの年齢でも卵子の数にともなって出生率も倍になるわけではないことがわかります。

実際の凍結できる卵子の数の割合

一般的には、1人の子どもを得るために必要な卵子の数は10〜15個程度とされています。しかし、東京都の卵子凍結に係る調査によると、実際に凍結できた卵子の数が10個未満の方が全体の58%にのぼる結果になりました。

〈実際に凍結できた卵子の数〉

  • 1〜4個:25%
  • 5〜9個:33%
  • 10〜14個:22%
  • 15〜19個:13%
  • 20個以上:7%

参考:東京都福祉局 子供・子育て支援部「卵子凍結への支援に係る調査結果

つまり、十分な数の卵子を凍結できるかどうかは個人差が大きく、必ずしも理想的な数に到達できるとは限らないことを理解しておく必要があります。

卵子凍結をおこなうメリット

卵子凍結は、将来の妊娠の可能性を残すだけでなく、ライフプランやキャリアを考えるきっかけにもなります。ここでは、卵子凍結をおこなう主なメリットを紹介します。

将来の妊娠率を維持できる

卵子は年齢とともに質が低下し、妊孕性(妊娠のしやすさ)も低下します。しかし卵子凍結であれば、例えば30歳の時点で卵子を凍結し、40歳で凍結卵子を使用した場合、30歳時点の妊娠率の維持が期待できるとされています。

現在パートナーがいない方や、いずれは子どもを考えたい方にとって、将来の妊娠可能性を広げることにつながります。

ライフプランを立てやすくなる

卵子凍結をすることで、妊娠・出産の時期をコントロールでき、ライフプランが立てやすくなります。結婚や妊活を見据えた現実的な将来設計を考えるきっかけにもなるでしょう。
卵子凍結をしたことで、前向きにパートナーを見つけたい、将来に希望が持てるようになったという方もいらっしゃいます。

今の生活や仕事に専念できる

20代や30代は妊娠適齢期である一方、キャリア形成や自己実現にとっても重要な時期です。卵子凍結をおこなうことで、妊娠や出産の焦りや将来への不安を軽減でき、現在の生活や仕事に専念しやすくなります。
働く女性にとっては、人生の選択肢を広げる有効な手段となり、心の余裕をもたらしてくれる点も大きなメリットです。

卵子凍結のデメリットや注意点

卵子凍結にはメリットがある一方で、以下のようなデメリット・注意点があります。

  • 将来の妊娠を確約できるわけではない
  • 融解時に卵子へのダメージがある
  • 自費診療で費用がかかる
  • 身体に負担がかかる

卵子凍結によるその後の妊娠率は、年齢や卵子の個数によっても変わります。必ずしも妊娠・出産に至るとは限らないため注意が必要です。

また、卵子凍結は保険適用外となり費用は自己負担になります。ただし、東京都をはじめ各自治体が助成金を設けている場合があるため、支援制度を活用することで費用負担は軽減できるでしょう。

これらのデメリットや注意点、また年齢によるリスクなどを理解したうえで検討することが大切です。

卵子凍結をするなら少しでも若いうちに

卵子凍結は、加齢による卵子の質の低下を考えると、有効性の観点では34歳未満、必要性の観点では36歳前後が目安とされています。多くのクリニックでは39歳までを上限とする場合が一般的です。いずれにしても、できるだけ若いうちに卵子凍結をおこなうことが推奨されます。

六本木レディースクリニックは、東京都から認可を受けた登録医療機関であり、不妊治療を専門に卵子凍結を実施しています。助成金を活用して卵子凍結を受ける方も多く、経済的な負担を軽減しながら治療に取り組むことが可能です。都内で卵子凍結を検討されている方は、まずはお気軽にご相談ください。

六本木駅・池袋駅から徒歩3分!
当院は六本木と池袋にクリニックがございます。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

ドクターのご紹介

帝京大学医学部付属溝口病院、母子愛育会総合母子保健センター愛育病院、国立成育医療研究センター不妊診療科を経て、2019年より現職。
資格・所属学会は、日本産科婦人科学会専門医のほか、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、日本産婦人科内視鏡学会。

医師からのメッセージ

当院は、不妊検査やタイミング指導、人工授精といった一般不妊治療から高度生殖補助医療までの不妊治療を専門としたクリニックです。
痛みが心配な方、ご安心ください。卓越した技術と最大限の配慮をお約束します。
また夜間や休日も診療を行い、不妊治療の苦労を少しでも軽減できるように努めています。

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運営クリニック 六本木レディースクリニック
住所 〒106-0032
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院長 小松保則医師