不妊治療に取り組むなかで、年齢による焦りや治療を何歳まで続けるべきかと悩む方は少なくありません。実際、妊娠率や流産率は年齢とともに変化することがわかっています。
本記事では、治療を続ける年齢の目安や妊娠率、加齢による身体の変化などをわかりやすく解説し、今後の妊活や治療計画のヒントをお届けします。
目次
不妊治療は何歳まで続けられる?年齢の目安と始めどき
不妊治療に取り組むにあたり、女性の年齢は妊娠の可能性に大きく影響します。治療を早めに始めるかどうかで選択肢や妊娠率も異なるため、自分に合ったタイミングを知ることが大切です。
ここでは治療を始める目安や、続ける期間の基準について解説します。
治療を始める適切なタイミング
不妊治療を始めるタイミングは、年齢や身体の状態によって異なります。
ただし、一般的には女性の年齢が35歳未満で「妊活をして1年以上妊娠しない場合」がひとつの目安とされています。さらに35歳以上の場合は、1年を待たずに半年経過しても妊娠に至らなかった場合、不妊治療を検討するタイミングです。
女性の年齢が35歳以上になると、統計的に妊娠率が低下するとされているため、早めに不妊治療に取り組むことが望ましいとされています。
女性の妊娠適齢期とは
妊娠適齢期とは、女性が妊娠や出産をしやすいとされる年齢のことです。一般的には20代前半から30代前半が最も妊娠率が高いとされ、この時期は卵子の質や子宮内環境、ホルモンの分泌が整っているため妊娠しやすい状態です。
しかし年齢を重ねるにつれ、卵巣機能は徐々に低下し、卵子の質の低下や数の減少が起こります。妊娠適齢期は限られているため、将来子どもを望む方は、年齢を意識したライフプランを考える必要があるといえます。
治療をやめる年齢の判断基準
不妊治療に明確な年齢制限はありませんが、多くの医療機関では45歳前後が治療終了の目安とされています。女性の年齢が40歳以上になると、妊娠率が急激に低下するためです。不妊治療の保険適用における年齢制限では、43歳未満とされています。
身体への負担やリスク、妊娠の可能性やご自身の希望も踏まえながら、医師と相談して治療方針を決めることが重要です。
40代半ばが不妊治療の一区切りとされる理由
前述のとおり、40代に入ると妊娠率は大きく低下し、特に45歳を過ぎると高齢出産にともなうリスクが一層高まります。実際の統計でも、40代での妊娠例は41歳や42歳に集中しているといわれています。
さらに、不妊治療は心身への負担だけでなく、経済的な負担も少なくありません。年齢が高くなるほど治療が長期化しやすく、先の見えない状況で治療を続けることは、生活の質の低下や夫婦関係に影響を与えかねません。
こうした背景から、多くの医療機関で40代半ばを不妊治療の一区切りとする目安にしているのです。
年齢別!不妊治療の妊娠率と自然流産率
| 年齢 | 妊娠率/総治療 | 流産率/総妊娠 |
|---|---|---|
| 26〜29歳 | 約28〜30% | 約17〜18% |
| 30〜34歳 | 約26〜28% | 約20〜22% |
| 35〜39歳 | 約18〜22% | 約28〜35% |
| 40〜44歳 | 約6〜12% | 約40〜55% |
| 45〜48歳 | 約1〜5% | 約60〜75% |
妊娠率は20代と30代前半で高く、年齢とともに低下していることがわかります。45歳以降では妊娠率が1桁台となります。一方、流産率は年齢とともに上昇し、40代前半で半数前後、45歳以降では60〜75%超えとなります。
このように女性の年齢は、将来の妊娠可能性に大きく影響します。
加齢で妊娠率が下がる主な理由とは
妊娠率が年齢とともに低下する背景には、卵子の数や質の低下、女性ホルモンの分泌減少、卵巣機能の衰えといった身体的な要因があります。さらに加齢にともなう婦人科系疾患のリスクも関係します。
ここでは、加齢による妊娠率低下の主な理由について詳しく見ていきましょう。
卵子の数と質が低下
女性は生まれたときにすでに卵子のもとである原始卵胞を持っており、その数は年齢とともに減少していきます。新しく卵子が作られることはなく、思春期以降は排卵を繰り返すたびに卵子は減り続けます。
また、加齢にともなって卵子の質も低下しやすくなります。質の低下は染色体異常や受精後の発育不全を招き、着床率の低下や流産率の上昇につながることもあるのです。そのため、年齢が高くなるほど自然妊娠は難しくなり、不妊治療でも40代以降では結果が得られにくくなる傾向にあります。
女性ホルモンの分泌減少
女性ホルモンにはエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)があり、月経周期や妊娠準備に欠かせない役割を果たしています。これらのホルモンは20〜30代前半で分泌量がピークに達し、その後は年齢とともに少しずつ減少していきます。特に40代半ば頃からホルモンの分泌も大きく減るため、受精卵が着床しにくくなる要因のひとつです。
卵巣の機能(卵巣予備能)が低下
卵巣予備能とは「卵巣にどれだけ卵子が残っているか」を示す指標で、年齢とともに自然に低下していきます。血液中のAMH(抗ミュラー管ホルモン)を測定することで、卵巣予備能の目安を調べられます。このAMHの値が低いほど卵子の残りが少なく、妊娠の可能性が下がっていることを示唆します。
加齢により卵巣機能が低下すると排卵の周期が乱れたり、採卵できる卵子の数が減ったりするため、その後の妊娠率の低下に直結する要因といえます。
妊娠に影響する持病のリスク増加
加齢によって、女性特有の疾患にかかるリスクも高まります。代表的なものに子宮筋腫、子宮内膜症、子宮がんなどがあります。これらの病気は必ずしも不妊に直結するわけではありませんが、発症部位や大きさによっては卵管の閉塞や子宮内膜の環境悪化を引き起こし、着床不全や妊娠維持の困難さにつながる場合があります。
特に子宮筋腫や子宮内膜症は妊娠可能年齢で発症しやすいとされています。年齢とともに病気の罹患リスクが増加するため、妊娠率低下の一因として考慮すべき点です。
妊娠率を高めるためにできること
年齢は妊娠率を左右する大きな要素ですが、人によって年齢適齢期に妊活ができない場合もあります。特に、女性の社会進出や晩婚化を背景に、さまざまな事情で妊活や不妊治療が遅れてしまうことも少なくありません。
ここでは、年齢に関わらず妊娠率を高めるために取り組みたいポイントをご紹介します。
妊娠に備えて身体を整える
妊娠は健やかな母体があってこそ成立します。
まず意識したいのは、栄養バランスのとれた食生活です。特に、妊娠を望む女性に欠かせない栄養素が葉酸・鉄・亜鉛です。葉酸は胎児の発育に重要で、妊活中から積極的に摂ることが推奨されています。鉄は貧血予防、亜鉛はホルモン分泌や卵子の質の維持に関わります。
加えて、適度な運動を取り入れて適正体重を保つことも大切です。肥満はもちろん、痩せすぎも排卵やホルモンバランスに影響し、不妊の一因となります。無理なダイエットは避け、日常の食事と運動で健康的な身体を整えておくことが大切です。
健康的な生活習慣を整える
十分な睡眠と規則正しい生活は、妊娠に向けた身体づくりの基本です。理想的な睡眠時間は1日7〜8時間とされています。規則正しい睡眠習慣を意識し、寝室環境を整えて質のよい睡眠をとるようにしましょう。
また、タバコや過度の飲酒、カフェインの摂りすぎは妊娠の妨げとなるため必ず控えてください。特にタバコは妊娠率の低下や胎児に影響を及ぼすことが明らかになっています。さらに、強いストレスはホルモンバランスの乱れを引き起こし、排卵や着床にも悪影響を及ぼす可能性があります。妊活・不妊治療中は、なるべくリラックスできる時間を設けてストレスを溜め込まないようにしましょう。
早めの治療ステップアップを検討する
不妊治療では、タイミング法から始め、人工授精→体外受精→顕微授精と段階的にステップアップするのが一般的です。しかし、年齢や卵巣機能の状態によっては、早めに次の段階へ進む方が妊娠率を高められる場合があります。
特に40歳前後では、最初から体外受精へ進むことが有効なケースも少なくありません。また、安全に妊娠・出産を迎えるためには、感染症の有無や子宮頸がんの定期検診を受けておくことも大切です。年齢や身体の状態を踏まえ、適切な治療ステップを医師と相談しながら選択していくことが、結果として妊娠への最短ルートとなります。
卵子凍結も選択肢のひとつに
将来の妊娠に備え、卵子凍結を検討する女性も増えています。卵子凍結とは、若くて質のよい卵子を採取して凍結保存しておき、将来子どもを望むときに体外受精で使用する方法です。
加齢とともに卵子の数や質は低下するため、若いうちに採取しておくことで、将来的な妊娠の可能性を高められるメリットがあります。すぐに妊娠を希望しない場合や、現在パートナーがいない、キャリアやライフプランの都合などで妊娠・出産ができない場合に有効な選択肢となります。
不妊治療の保険適用について
一般不妊治療や生殖補助医療の基本的な不妊治療は保険診療で受けられます。
ただし、より高度な生殖補助医療に関しては、年齢と回数制限があるため注意が必要です。
保険適用が受けられる年齢の上限
生殖補助医療(体外受精・顕微授精など)には年齢制限があり、女性の治療開始時の年齢が43歳未満でなければ保険は適用されません。43歳以上の場合はすべて自由診療(自己負担)となり、費用は大きく変わります。不妊治療を考えている方は、費用面も含めて早めに取り組むことがおすすめです。
年齢ごとの治療回数の制限
保険適用には年齢に応じた以下のような回数制限があります。
- 40歳未満:通算6回まで
- 40歳以上43歳未満:通算3回まで
40歳未満(39歳まで)の場合は1子につき通算6回まで、40歳以上43歳未満(40〜42歳まで)では通算3回までが保険適用の対象です。女性の年齢が43歳に達すると自由診療となり、自己負担での治療継続が必要になります。
不妊治療の保険適用においては、年齢と回数の両方に制限があるため、医師と相談し、自分にとって最適な治療計画を立てることが大切です。
> 不妊治療の保険適用料金について詳しくはこちら
不妊治療でお悩みなら六本木レディースクリニックへ
不妊治療は年齢や身体の状態によって選べる方法や妊娠率、保険適用の条件が変わります。不妊治療を「いつから始めるべきか」「何歳まで続けるか」はご自身の現在の年齢も踏まえて、パートナーや医師と相談しながら決めましょう。
六本木レディースクリニックでは、一人ひとりのご年齢やお身体の状態、ご希望に合わせたオーダーメイド治療をご提案しています。当院の体外受精における妊娠率は、いずれの年代でも日本産科婦人科学会が公表した2021年のデータを上回る実績を残しています。年齢に関わらず安心して治療を進められるよう、妊娠までを二人三脚でサポートいたしますので、お気軽にご相談ください。


