体外受精のスケジュールは?流れをわかりやすく解説

体外受精をはじめとした不妊治療は治療期間がかかり、何度も通院しなけらばならないと不安を感じている方が多いのではないでしょうか。仕事の都合や日常生活と両立して続けられるかが気になるところです。しかし、体外受精にはさまざまな手法があり、治療期間や通院回数を短縮することもできます。

この記事では、体外受精に関して不安を抱える方向けに、スケジュールや流れをわかりやすく解説します。

体外受精のスケジュールは患者さまによって異なります

体外受精の通院スケジュールは、治療方法やクリニック、患者さまによって多少異なります。
体外受精は一人ひとりの身体や年齢、置かれている環境に応じて適した排卵誘発方法が変わってくるからです。

排卵誘発剤を使用しない「自然周期法」という方法もあります。
排卵誘発の有無や方法の選択により、治療期間や通院回数が違ってくるため、体外受精のスケジュールには個人差が生じます。

一般的には、前準備・採卵・胚移植・妊娠判定という流れになります。胚移植後は、着床率を上げるための注射をおこなうこともあります。
治療法や患者さまによって変わりますが、妊娠判定までの通院回数は平均6回程度です。多い人では7〜8回になる場合もあります。

体外受精の基本的な流れ

体外受精は「前準備(事前検査や排卵誘発等)」→「採卵」→「媒精」→「胚移植」→「ホルモン補充」→「妊娠判定」というのが基本的な流れです。
体外受精の基本的な流れ
最初の事前検査から胚移植に至るまでが1〜2ヶ月程度、胚移植から妊娠判定までが2週間とみると、長く見積もっても体外受精の治療には3ヶ月ほどかかるとみておくといいかもしれません。ただしこの期間はあくまで目安であり、治療方法や患者さまによって変わります。
ここでは体外受精の段階ごとにそれぞれ説明します。

Step1.体外受精の説明を受ける

まずは体外受精について、担当医より排卵誘発方法や胚移植の方法、スケジュールなどを詳しく説明します。
ご夫婦でご来院いただき、治療計画についてご納得いただいたうえで治療を開始いたします。

Step2.卵巣を刺激する

より多く質の高い卵子を採取するため、排卵誘発剤で卵巣を刺激します。排卵誘発剤は、良質な卵子をより多く採卵して妊娠成功率を上げるために使用されるものです。

排卵誘発剤の使用は、卵巣過剰刺激症候群を発症するなどのリスクがともないます。副作用や合併症のリスクの説明を受けたうえで、医師と相談しながら決めましょう。

排卵誘発剤を使わない「自然周期法」もありますが、採卵できる卵子の数が少なくなります。排卵誘発方法は、月経中のホルモン採血やAMHの測定結果をもとに、患者さまの年齢や状況を考慮しながら最適な方法が選択されます。

Step3.卵子を取り出す(採卵)

排卵日になったら、卵子を取り出します。細い針を膣から卵胞に刺し、吸引して卵子を採取します。同じタイミングでご主人さまも来院して精子を採取し、質の高い精子を選んでいきます。

採卵の痛みには個人差がありますが、麻酔を使用すれば痛みを感じることはありません。採卵は10〜15分ほどで終わりますが、麻酔を使用する場合は回復室で休む時間が必要です。いずれにしても、日帰りでおこなうことができます。

Step4.精子と卵子を受精させる(媒精)

取り出した精子と卵子を受精させることを媒精といいます。専用の容器に入れ、1個の卵子に振りかけるように約10万個の精子を媒精させます。これが最も一般的な体外受精の方法です。

ほかにも「顕微授精」という方法もあります。
顕微授精は、針のような細い管を使用し、精子を卵子に直接注入する方法です。受精卵は数日かけて培養され、分割をはじめると「胚」に変わります。

Step5.子宮の中に受精卵を戻す(胚移植)

「胚」になった受精卵を子宮の中に戻すことを「胚移植」といいます。
質のよい胚を選んでカテーテルで子宮内に戻します。胚移植の方法は主に「初期胚移植」と「胚盤胞移植」の2種類があります。

初期胚移植は、培養して2〜3日後の分割胚を移植する方法です。胚盤胞移植は、5〜6日培養して、着床率の高い胚を移植する方法です。

Step6.ホルモンを補充する

妊娠率を上げるために、ホルモン補充をおこないます。女性ホルモンを補うためのもので、子宮内膜を厚くし着床率を高めてくれます。
黄体ホルモンの補充は、主に内服薬・注射・膣剤の3種類あります。

Step7.妊娠判定をおこなう

胚移植の10日目前後に、妊娠判定をおこないます。
妊娠判定では主に血液検査をおこないます。血中にあるhCGホルモンの分泌があるかどうかで妊娠が判断されます。

患者さまの通院スケジュール例

次に、より具体的な通院スケジュールを確認してみましょう。
体外受精のための通院回数は、平均で6回程度といわれています。事前検査から妊娠判定までのスケジュール例を参考に、だいたいの通院ペースを把握してみてください。

診察・検査

まずは体外受精の治療を始める前に、男女それぞれ診察と検査をおこないます。
体外受精に関わる女性の検査は、月経周期に合わせておこなわるのが通常です。この時点での事前検査は、不妊の原因特定を主な目的としており、月経周期に関わらず実施できます。
男性は体外受精の治療開始前に検査を受ける必要があります。

女性の診察・検査

女性の主な診察・検査項目は以下のとおりです。

  • 医師の問診
  • 超音波検査
  • 採血検査

上記以外にも検査項目があります。検査項目はクリニックによって多少異なりますが、事前に他院で受けた検査結果も1年以内のものであれば、有効な場合があります。
当院の女性不妊治療の診察・検査について詳しくは、「一般不妊検査」をご覧ください。

男性の診察・検査

男性の主な診察・検査項目は以下のとおりです。

  • 感染症の採血検査
  • 精液検査
  • 精子DFI検査

男性と女性どちらにも不妊の原因がひそんでいるといいます。事前検査でしっかり不妊の原因が特定できると、それに応じた適切な治療を選択できます。

月経周期1~3日目:卵巣の確認

体外受精は、月経周期に合わせて検査や治療がおこなわれます。
まずは卵巣の確認のため、月経周期の1〜3日目に受診します。卵巣の状態や子宮の状態を超音波で検査し、患者さまに合わせた卵巣刺激方法を選択します。

月経周期8~11日目:卵胞の確認

月経周期8〜11日目には、卵胞の成長の状態を確認するため、ホルモン採血や超音波検査をします。卵胞とは卵子を包んでいる袋のようなもので、卵巣で発育します。卵胞が良好なサイズに達し、成熟したことを確認ができたら、採卵日を決めます。

月経周期10〜14日目:採卵

人によって異なりますが、だいたい生理周期10〜14日目に採卵をおこないます。
採卵は膣から超音波で卵巣の様子を確認しながら、細く長い専用の針を穿刺して卵子を採取します。

同じ日に採精もおこないます。男性は採精室で採取する方法と、自宅で採取したものを持ち込む方法があります。
自宅から持ち込みの場合は、採取してから3時間以内の精子が必要です。

採卵後2~5日目:胚の移植

受精して胚(将来胎児になる細胞)の発生が確認できたら、胚を移植します。
採卵後約2〜5日目にご来院いただき、経膣エコーで子宮内膜の状態や移植位置を確認しながら胚の移植をおこないます。
胚移植専用の柔らかいカテーテル(細い管)を挿入して子宮に移植します。

胚移植後10日目前後:妊娠判定

胚移植した10日目前後にご来院いただきます。血液検査で妊娠の有無を判定します。

採卵当日に気を付けること・注意点

痛みに配慮するためにも、基本的に採卵は麻酔下でおこなわれます。
そのため採卵の前日は、24時から水以外の飲食はできません。また採卵当日にも以下のような注意点があります。

余裕をもってスケジュールを立てる

採卵自体は10〜15分程度で完了し、日帰りが可能な処置になります。忙しい方は採卵日に他の予定を入れることも実質可能です。

しかし採卵当日は、実際の処置の前に着替えをしたり、麻酔の為の点滴を準備したりします。
また処置後は麻酔から回復するために、30分~1時間程度安静にする時間が必要です。

安静にしたあとは、医師から採卵した結果の報告や今後のスケジュール、採卵後の注意事項の説明があります。
そのため採卵当日は、朝に来院して午後もしくは夕方に帰宅といったスケジュール感になります。採卵数によっては時間が長くなることも考えられるでしょう。
採卵日は無理に予定を入れず、余裕のあるスケジュールを組むことをおすすめします。

メイクとネイルは落とす

採卵日は、マニキュアやジェルネイルなどを落としましょう。
「採卵なのにどうしてネイルが関係あるの?」と疑問を抱く方が多いですが、これにはきちんと理由があります。

採卵をおこなう際にはほとんどの場合、麻酔を使います。
この採卵の術中には手の指の先に血液中の酸素濃度を測る機械をつけますが、ネイルをされている場合、測定ができなくなってしまうためです。
マニキュアであれば前日に自分で簡単に落とすことができますが、ジェルネイルはサロンに行かないと落とせません。採卵日付近にジェルネイルをおこなうのは避け、採卵の日までにはオフしておきましょう。

また、採卵当日の顔色を確認するためメイクも基本的にはNGとされています。なかにはメイクが可能なクリニックもありますので、担当の医師に確認しておきましょう。

車や自転車を自分で運転しない

採卵日に麻酔をおこなう場合、自分で車や自転車を運転して来院しないようにしましょう。術後30分~1時間は安静にしてから帰宅しますが、それでも運転は危険です。
公共交通機関を利用するか、夫婦で来院するとよいでしょう。

帰宅後はゆっくり体を休める

採卵は日帰り可能で比較的痛みが少ないですが、身体には少なからず負担がかかっています。採卵から帰宅後に予定を入れたり、仕事をしたりして無理をするのは禁物です。

医師から説明のあった採卵後の過ごし方や注意事項を守って、しばらくは安静にすることが推奨されます。採卵当日はなるべく丸一日予定を入れず、しっかり休むことに努めましょう。

短期間で体外受精を進めたい人におすすめの方法

体外受精の治療期間は、事前検査の期間を含めて3ヶ月程度かかります。通院回数は約6回で、スケジュールどおりにやりくりができるか不安に思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。
仕事や家事など忙しい毎日を過ごされている方には、度重なる通院や時間のかかる治療は負担となってしまうかもしれません。

しかし卵巣刺激法によっては、通院回数を少なくできることがあります。
卵巣刺激法は卵巣刺激のために、注射で薬を投与します。注射を打つために来院が必要になりますが、自宅で自己注射をすることで来院回数を減らすことも可能です。

卵巣刺激法には、さまざまな方法があります。一人ひとりの卵巣機能やお体の状態に合った適切な方法を選択することが、ひいては治療期間の短縮にもつながり、妊娠成功への最短コースといえるでしょう。
ここでは、なかでも通院回数を少なくできる「クロミッドHMG法」と「PPOS法」を紹介します。

クロミッドHMG法

クロミッドHMG法は、クロミッドという内服薬とFSH/HMG製剤の注射を併用した卵巣刺激法です。
クロミッドは低刺激の経口排卵誘発剤で、卵巣を刺激するとともに、自然排卵を抑制する働きがあります。

FSH/HMG製剤は、卵巣刺激ホルモン注射剤です。注射のタイミングや注射量を変えることで、中刺激〜高刺激に調整ができます。

クロミッドHMG法の基本スケジュール

クロミッドHMG法の基本スケジュールは以下のとおりです。

月経3日目

クロミッドHMG法は、月経3日目からクロミッドの内服を開始します。1日1錠毎日内服する必要があります。

月経5日目

月経5日目には、FSH/HMG注射も開始します。
注射の回数は卵胞の育ち方によって変わり、超音波検査で卵胞のサイズを測る検査が必要です。

採卵日35時間前

採卵日の35時間前には、夜間にhCGホルモンの注射をおこないます。
hCG注射は、卵子を成熟させるための注射です。また、希望採卵日の調整のためにGnRHアンタゴニスト製剤(セトロタイド)を最後の方に使用することがあります。

採卵日前日

採卵日前日は24時以降の飲食は禁止です。

採卵当日

事前準備のあと採卵します。採卵後は30分~1時間程度回復室で過ごす時間が必要なため、時間に余裕をもって来院してください。その後の診察にて胚移植の日程が決まります。

採卵後2〜5日目

培養した胚を移植します。妊娠判定日は、移植から10日目前後です。妊娠判定当日は血液検査と診察が必要となります。

PPOS法

PPOS法は、FSH/HMG製剤の注射と黄体ホルモン剤の内服薬を併用した高刺激な卵巣刺激法です。
アンタゴニスト法と呼ばれる同じ高刺激法と比べると、PPOS法は使用する薬が少なく、内服薬が安価であるといわれています。

FSH/HMG製剤で卵巣を刺激し、排卵を抑えるために黄体ホルモン剤を使用します。
使用する黄体ホルモン剤はクリニックによって異なりますが、当院ではデュファストンという製剤を使用しています。

黄体ホルモンは、妊娠しやすい身体作りの役割を果たす他、排卵抑制の目的で使用されることがあります。PPOS法は、排卵をコントロールしながら一度に多くの採卵が可能であるため、来院回数が少なくて済むのがメリットです。
自宅でできる自己注射を用いることで、さらに来院回数を少なくできます。
万が一、卵巣刺激症候群(OHSS)のリスクがある場合でも、hCGを用いないでアゴニスト点鼻薬を使うことも可能です。

デメリットは新鮮胚移植が行えないことで、凍結胚移植を考えている方に向いています。

PPOS法の基本スケジュール

PPOS法の基本スケジュールは以下のとおりです。

月経1〜3日目

月経2〜3日目からFSH/HMG注射を打ち、同時に黄体ホルモン剤の内服薬も兼用します。

月経8日〜11日目

卵胞のサイズや血液中のホルモン値を検査し、卵胞の育ち具合によって使用する薬の量を調整していきます。

採卵日35時間前

採卵する約35時間前に、hCG注射をおこない、卵子を成熟させます。
OHSSのリスクがある方は、hCG注射の代わりにアゴニスト点鼻薬が使用できます。

採卵日前日

24時以降の飲食は禁止です。

採卵当日

採卵します。採卵後は30分~1時間程度は回復室で安静にします。

採卵後2〜5日目

新鮮胚移植はできないため、採卵後2~5日目で胚を凍結します。凍結した胚は、次の生理周期でホルモン補充をおこない、移植します。

通院しやすい不妊治療専門の六本木レディースクリニック

不妊治療は時間がかかって大変なイメージが多く、不安に思う方も多いのではないでしょうか。しかし、大まかなスケジュールや期間を把握することでイメージしやすく、治療前の不安が取り除かれます。

不妊治療は、時間を必要とする治療法です。信頼のおける、実績のあるクリニックを選び、医師と納得がいくまで相談し、治療計画を立てることが大切です。

六本木レディースクリニックは、不妊治療を専門とした実績のあるクリニックです。経験豊富なスタッフが成功までしっかりサポートします。また、夜間や休日診療もおこなっているので、忙しい方にも通院しやすくスケジュールが立てやすくなっています。不妊で悩まれている方、不妊治療を検討している方は、まずは相談してみてはいかがでしょうか。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

運営者情報

運営クリニック 六本木レディースクリニック
住所 〒106-0032
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院長 小松保則医師