不妊治療の中でも、妊娠成功率が高いといわれる体外受精ですが、年齢とともにその成功率は下がっていくといわれています。30代女性の体外受精での妊娠成功率はどのくらいなのでしょうか?
ここでは、体外受精と女性の年齢との関係や具体的な妊娠成功率、妊娠成功率を高める移植方法や心がけなど、30代女性が体外受精を考えるうえで大切なポイントについて解説します。
体外受精での妊娠成功率は、女性の年齢と大きく関係しています
妊娠成功率は、女性の年齢で大きな差があり、もっとも妊娠しやすいといわれる20代の場合は、妊娠した方の9割が自然妊娠といいます。その後、年齢が上がるにつれ、自然妊娠も体外受精での妊娠成功率も下がっていきます。
ここでは、30代前半と30代後半、40代の体外受精での妊娠成功率をご紹介します。
目次
30代前半の妊娠成功率
30代前半の体外受精での妊娠成功率は約37%、妊娠しやすいといわれる20代も約40%以上であるといわれています。そのため少し確率は下がるものの、十分妊娠できる可能性は高いといえます。
30代前半であれば、卵子と精子の質も高く、妊活を効果的に進めることが可能です。妊娠・出産を望む場合には、不妊治療の中でも妊娠成功率が高いとされる体外受精を、30代前半からおこなうことをおすすめします。
30代後半の妊娠成功率
30代後半の体外受精での妊娠成功率は、30%程度です。30代前半と比べ、35歳を過ぎた頃から精子や卵子の質が急激に下がる傾向にあるため、妊娠できる可能性も低くなっていきます。
35歳までに妊娠経験がない場合、卵子や精子の検査を兼ねた体外受精をすすめられることも多くなります。年齢が上がるとともに妊娠成功率は低くなるため、少しでも早い妊活が有効になります。
40代の妊娠成功率
40代の体外受精での妊娠成功率は、前半で15~20%、後半では10%以下です。30代での妊娠成功率に比べ、さらに妊娠できる可能性が低くなるため、妊娠・出産を考えている方は早めのアプローチが必要です。
40代になると、卵子の採取も難しい場合があります。また、着床の可能性も低くなるため、妊娠できる可能性が低くなります。また、40代後半では、ホルモンを投与しても卵子が大きくならない、卵胞は大きくなっても卵子が入っていないという問題が出てくる場合もあります。
女性の年齢と卵子の質は深い関係があります
体外受精での胚移植をおこなう場合、質が良いと判断された受精卵を優先的に移植します。受精卵の質を左右する要因はたくさんありますが、そのうちのひとつに卵子の質の問題があります。
卵子の質は女性の年齢と深い関わりがあるため、結果的に、女性の年齢が体外受精での妊娠成功率に関係してくるのです。女性は生まれた時に、一生分の卵子の素となる卵胞を持っています。
自然消滅したり、排卵したりすることで、徐々に卵胞の数は減っていきます。女性が生まれたときに全ての卵胞があるため、女性が年齢を重ねるのと同じように卵胞も年齢を重ねていきます。年齢を重ねると人間の体にはさまざまな変化が起こります。
シミやシワが増えることや、内臓機能の衰え、白髪が生えるなどの老化現象は容易に想像がつくのではないでしょうか?女性の体が老化していくのと同じように、卵胞にも老化現象が起きます。
老化現象はいわゆる卵子の質と深い関係があり、卵子の質を下げることにつながります。こういった現象が結果的に、女性の年齢と妊娠成功率が関係しているというデータに結びついていきます。
体外受精の妊娠成功率は移植方法によっても異なります
体外受精の妊娠成功率は、受精卵の移植方法によっても異なります。受精卵の移植方法は大きくわけて、初期胚を移植する方法、胚盤胞を移植する方法、培養液を注入したあとに胚盤胞を移植するSEET法、凍結胚を移植する方法の4つに分かれます。
ここでは、それぞれのメリットやデメリットについてご紹介します。移植方法で妊娠成功率にも差が出るため、医師と相談しながら、納得のいく方法を選ぶようにしましょう。
初期胚を移植する方法
初期胚を移植する方法とは、体外受精によって誕生した受精卵を培養液の中で初期胚まで成長させ、子宮へ戻す移植方法です。採卵から2〜3日培養し、分割が進んだのを確認してから戻します。従来からある一般的な体外受精の方法です。
- 初期胚までは成長しやすく、キャンセル率(移植に用いない受精卵の割合)が低い
- 培養期間が短いため、金銭的な負担が小さい
- 初期胚では受精卵の質を見分けるのが難しく、途中で成長が止まることがある
- すぐに着床できないため、子宮外妊娠のリスクがある
胚盤胞を移植する方法
胚盤胞を移植する方法とは、体外受精で受精させた受精卵を胚盤胞の状態にまで培養し、子宮へ戻す移植方法です。採卵から5〜6日培養し、初期胚よりさらに分割が進んだ状態で移植します。近年、新しい培養液が開発されたことにより、受精卵を胚盤胞まで培養できるようになりました。
- 初期胚より成長が進むため、良質な受精卵の選別ができる
- 子宮に戻した時点で着床が可能なため、着床率が高く、子宮外妊娠のリスクも少ない
- 受精卵の約40~50%しか胚盤胞まで成長できないため、キャンセル率が高い
SEET法
SEET(子宮内膜刺激胚移植)法とは、体外受精であっても自然妊娠と同じようなシグナル(受精卵の成長過程でつくられるエキス)を子宮に送ることで、より着床しやすい子宮内膜をつくり、妊娠成功率を高める方法です。
胚盤胞の状態まで育てた受精卵と、受精卵の成長過程でつくられるエキスを含む培養液をそれぞれ凍結します。移植をおこなう際には、エキスを含む培養液を先に子宮内に注入し、子宮内膜を着床しやすい状態にします。その2~3日後に、胚盤胞を1つ移植するという方法です。
- シグナルを先に注入することで着床しやすい子宮内膜となり、妊娠成功率が高まる
- 従来の二段階胚移植法(受精卵2つを移植する方法)と異なり、多胎妊娠を避けられる
- エキスを含む培養液の注入と胚盤胞の移植のために2回の受診が必要になる
凍結胚を移植する方法
凍結胚を移植する方法とは、体外受精で受精させた受精卵を-196℃の特別な環境下で凍結させ、妊娠成功率が高まるタイミングで子宮に戻す移植方法です。排卵日に合わせて移植する自然周期移植と、ホルモン剤を使用し月経周期をつくって移植するホルモン周期移植があります。
- 受精卵は凍結しているため、移植に適した子宮内環境が整うまで保存できる
- 着床率が高く、流産率が低いため、妊娠成功率が高い
- 凍結や融解で凍結胚にダメージが加わり、移植できないことがある
- 採卵後に凍結するため、移植までに1~2ヵ月かかる
30代後半でも体外受精の妊娠成功率を上げるには
30代前半と後半では体外受精の妊娠成功率に差があります。ここでは、30代後半になっても体外受精の妊娠成功率を上げる3つの方法をご紹介します。
最適な治療法を選択する
妊娠成功率を上げるには、最適な治療法を選択することが必要です。体外受精は受精卵の移植方法により妊娠成功率が変わるため、加齢とともに妊娠しにくくなる30代後半では、最適な治療法を早めに選択することが重要になります。
移植方法は前述した4つの方法が主にありますが、初期胚より胚盤胞の移植のほうが移植後の着床率が高くなります。
また、子宮内膜の状態を妊娠しやすい状態に整えることも有効です。身体の状態を検査して医師と相談しながら、SEET法や凍結胚の移植で妊娠成功率を高めるという選択もあるでしょう。
受精卵の凍結保存をしておく
妊娠成功率を上げるには、受精卵の凍結保存もおすすめです。受精卵の凍結保存とは、体外受精で受精し、発育した受精卵を凍らせて保存する方法です。-196℃の特別な環境下では、受精卵の状態を何十年もまったく変化させずに保存できます。
現在、妊娠を望んでいない場合も、若いうちの受精卵を凍結保存することが可能です。なお、受精卵の保存期間は1年となり、保存を延長する場合には手続きが必要になります。
生活習慣を見直す
妊娠成功率を上げるには、生活習慣の見直しも必要です。卵子の老化の一因とされる、不規則な生活や偏った食事などを見直し、生活習慣を改善していきましょう。十分な睡眠や栄養バランスの摂れた食事は、心身を健やかな状態に導きます。
また卵子の質を維持するには、女性ホルモンのバランスを整える必要があります。30代後半は仕事などでもストレスがかかることが多く、ホルモンバランスを整えるためにも、気分転換やリラックスが大切です。基本的な生活習慣を見直すとともに、心穏やかに不妊治療を続けていけるよう、ストレスをため込まない生活を意識していきましょう。
(まとめ)30代女性の体外受精での妊娠成功率はどのくらい?
30代女性の体外受精の妊娠成功率は、30代前半で約37%、30代後半で30%程度です。30代前半であれば、20代とほぼ同等に妊娠しやすいのですが、35歳をすぎると、卵子や精子の質が急激に下がり、妊娠成功率も下がっていきます。40代になると、もっと妊娠成功率は下がるため、30代でどのように不妊治療を進めていくかが重要です。
体外受精は卵子と精子を体外に取り出し、受精させてできた受精卵を子宮に移植します。その移植方法はさまざまです。ご自身にあった移植方法をおこなうことで、妊娠成功率を上げることができるため、医師と相談しながら、最適な治療法を選択することが重要です。
当院では30代の女性はもちろん、不妊治療に臨まれる皆さまに寄り添い、一人ひとりとしっかり向き合った不妊治療をご提案いたします。不妊治療をお考えの方はぜひご相談ください。