激しい運動をする場合は葉酸の必要量が増えることがあります


スポーツ選手や運動好きな人など、日常的に激しい運動を好む人は赤血球が壊れやすくなると考えられています。そのため赤血球の材料となる鉄や、赤血球を作るのに必要な葉酸などが不足しがちになる傾向があります。

妊娠前などに激しい運動をしていた人や、妊娠中でも運動を好んで取り入れている人は注意した方がよいでしょう。

スポーツ性貧血が葉酸の需要を増やすことがあります

妊娠が判明してからも、あえて激しい運動をするという人はあまりいないでしょう。しかし妊娠前に激しい運動を好んでいたり、もともとアスリートとして活動していたりした人、インストラクターなど体を激しく動かす職業に就いている人は、鉄や葉酸を積極的に摂るよう注意した方がよいかもしれません。

たとえばジャンプやダッシュなど、激しい運動をすると、着地の衝撃などで体内の赤血球が壊れやすくなります。赤血球は酸素を運ぶ役割をしているため、運動で赤血球が壊れやすくなると体中に酸素が行き渡らなくなり、息切れなどの原因になります。

また血中のヘモグロビン値が下がることによって貧血の症状が現れることがあります。これがいわゆるスポーツ性貧血です。

スポーツ性貧血で赤血球が足りなくなると、当然体は赤血球を生産して補おうとします。しかし生産するにも材料が必要です。

赤血球の材料は鉄であり、また葉酸やビタミンB12などが赤血球の形成を補助します。そのため赤血球の生産量を増やすために鉄や葉酸の必要量が増える、あるいは体内の鉄が不足がちになることがあります。

ウォーキングなど軽い運動で起きる可能性はまずないため、妊婦となって体のために運動している、というような段階でこの貧血を心配する必要は基本的にありません。しかし妊娠前に陸上競技やダンス、バレーボールなど、激しい運動を好んでいた場合は、貧血にまでならずとも体内で鉄不足や葉酸の必要量が増加することがあるため注意しましょう。

とくに女性は、男性よりもスポーツ貧血のリスクが3倍あると言われています。

葉酸は妊娠初期に多くを必要とします


スポーツを好んでいた人が、葉酸不足を気にしなければならない理由として、妊娠初期の葉酸の必要性が挙げられます。葉酸は、妊娠4~5週頃に起こると言われる神経管閉鎖障害という、赤ちゃんの重大な先天異常を防止してくれると言われる栄養素です。

しかし妊娠4~5週頃となると、妊娠に気がついていない段階であることも少なくありません。日常的に重いトレーニングなどをしている人であれば、この重要な時期に葉酸が不足していてもおかしくはないのです。

妊娠に気がついてから葉酸を摂取しても遅いということになってしまいます。

葉酸は日々の食事で一般的な1日の必要量は摂取できているとされている栄養素です。しかし激しい運動で壊れた赤血球を補うために葉酸の必要量が増加していると、妊娠のために必要な分までは足りず神経管閉鎖障害のリスクを高めてしまう可能性があります。

妊娠前であっても、妊娠する可能性がある時は意識して葉酸や鉄を摂取しておくことで、将来授かる赤ちゃんの健康を守ることに繋がるでしょう。

葉酸はサプリメントで補うのが確実です

葉酸は体内で生産できないため、食事やサプリメントを使って補う必要があります。妊娠前であっても、妊娠する可能性がある限りは1日400µgのサプリメントを摂取しておくと、食事と合わせて自然と必要量を摂取することができるでしょう。

また妊娠して激しい運動を控えた後でも、今度は赤ちゃんに鉄分が優先して補給されることや、母親の血液が急激に増えることから、赤血球や葉酸が不足がちになり貧血を起こしやすくなります。貧血防止のためにも、やはり葉酸の摂取は重要です。

食事から摂取できる分には限りがあるため、医師と相談しながらどの程度サプリメントを摂取するべきか決めるとよいでしょう。

運動することそのものは、基本的には妊娠中でも全く問題のないことです。運動が流産のリスクなどと考えられがちですが、実は妊娠12週までの流産は運動する、しないに関係ありません。

妊娠中はほどほどの強度を意識しながら、適度に運動しつつ、葉酸不足や貧血に陥らないよう注意していきましょう。

(まとめ)運動していると葉酸が不足しやすいって本当?

1.激しい運動をする場合は葉酸の必要量が増えることがあります

赤血球は鉄や葉酸から作られますが、運動をしていると赤血球が壊れやすくなってしまいます。そのため必然的に鉄や葉酸が不足しやすくなると考えられています。

運動好きな人は葉酸の不足にも注意しましょう。

2.スポーツ性貧血が葉酸の需要を増やすことがあります

運動で赤血球が壊れる原因にはいくつかありますが、一例として赤血球が激しい運動の物理的な衝撃で壊れてしまうということが挙げられます。普通の軽い運動程度で心配する必要はありませんが、アスリートなど日常的に激しい運動をしている人は注意しましょう。

3.葉酸は妊娠初期に多くを必要とします

妊娠初期には、葉酸が神経管閉鎖障害のリスクを下げてくれると言われています。そのため日常的に運動を好んでいると、妊娠初期に葉酸が不足がちになる可能性が高くなり、結果的に赤ちゃんのリスクも高くなるのです。

4.葉酸はサプリメントで補うのが確実です

葉酸は食事からも摂取できますが、限りがあります。妊娠中は多くの鉄や葉酸を必要とするため、医師と相談しながらサプリメントを活用しましょう。

運動そのものについても、強度に気をつければ妊娠にはよいとされています。


仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

運営者情報

運営クリニック 六本木レディースクリニック
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院長 小松保則医師