妊婦が葉酸をとるとダウン症の確率を下げる可能性があります


長らく、葉酸は妊娠初期において胎児の神経管閉鎖障害を防止すると言われ、妊婦への摂取が勧められてきました。先天異常のリスクを下げてくれる点から、ダウン症にも効果的であると考える人もいるようです。

しかし科学的な証明は今のところありません。一方でダウン症の予防に役立つという論文も発表されていることから、葉酸は摂取しておいた方が後悔しないでしょう。

ダウン症は染色体異常が原因で起こるものです

とくに35歳以上、あるいは40歳以上での高齢出産となると、ダウン症の子供が生まれる確率が高くなることが知られています。しかし具体的にダウン症とはどんな状態なのか、定義がよくわかっていない人もいるかもしれません。

ダウン症は、正式にはダウン症候群と呼びます。子供ではなく、精子と卵子の時点ですでに少なくともどちらかに、染色体の異常が生じており、その異常を持った精子と卵子が受精してしまうことで、ダウン症の子供が生まれると言われています。

また正常な精子と卵子であっても、受精卵から細胞分裂していく過程で、染色体異常を起こしてしまっても、やはりその子供はダウン症になってしまいます。またまれではありますが遺伝によってダウン症になる場合もあります。

ダウン症となった子供の特徴として、全体的に発達が遅いことと、つりあがった目や低い鼻など特徴的な外見を持つことが挙げられます。また心疾患や白内障、知的障害や難聴など、なんらかの合併症を起こしやすいことでも知られています。

症状には個人差があるため、これ以外にさまざまなリスクやハンデを抱える場合もあるでしょう。

高齢出産でダウン症の子が生まれやすいと言われるのは、加齢によって体内の遺伝子情報を司る染色体やDNAがダメージを受けるからです。精子や卵子が劣化していき、染色体異常を起こす確率が高くなります。

劣化には加齢のほかに生活習慣なども関係していると言われていますが、一度劣化したものを元に戻す方法はありません。

葉酸は神経管閉鎖障害を防止すると言われています


ダウン症のリスク低減に葉酸がよい、と言われている理由の1つは、葉酸が妊娠初期において、神経管閉鎖障害という先天異常を防止する点にあると考えられます。この神経管閉鎖障害はダウン症とはまったく別のものです。

妊娠6週までのごく初期に、受精卵は分裂を繰り返し、赤ちゃんの神経管という部分を形成します。しかし細胞分裂を滞りなく進める役目のある葉酸が不足していると、神経管の形成がうまく行かず、神経管閉鎖障害が起きてしまうことがあるのです。

神経管閉鎖障害になると、二分脊椎や無脳症といった状態になり、流産や産まれた子供の下半身麻痺や知的障害などが起こると言われています。そこで妊娠初期の段階で葉酸を十分に摂取することで、神経管閉鎖障害のリスクを50~70%減らせると言われているのです。

このようにダウン症と神経管閉鎖障害は原因も症状もまったく異なるものです。そのため基本的には葉酸を摂取したからといって、ダウン症まで防げるという証明や根拠はありません。

葉酸がダウン症を防ぐという論文も発表されています

一方海外で発表された論文では、葉酸をよく摂取していた妊婦はそうでない妊婦に比べてダウン症の子供を産むリスクが減ったと指摘するものがあります。具体的に葉酸がなぜダウン症を防ぐのか、どれくらい摂取すればよいのかなどについては明らかになっていませんが、可能性としては考えてみてもよいかもしれません。

葉酸はもともと、前述したように神経管閉鎖障害を防止する役目もあり、妊婦には必須の栄養素です。妊婦は通常時の2倍の量が必要になるとされているため、妊婦が葉酸を多めに摂ることは、まったく悪いことではありません。

また神経管閉鎖障害児を出産した経験のある方が、ダウン症児を妊娠するリスクは通常の5倍以上であるという説も唱えられています。あくまで一説ではありますが、意識しておくことも必要かもしれません。

葉酸を取ることが、必ずしもダウン症の予防になるとは断言できません。ですがもし心配であるならば葉酸をよく摂っておくとよいでしょう。

ただ葉酸は過剰摂取しすぎても体に害となります。摂取する量は1日に900µg~1000µgを超えないようにとどめ、葉酸以外の栄養素もバランス良く摂取するようにしましょう。

(まとめ)妊婦が葉酸をしっかりとればダウン症児にならないの?

1.妊婦が葉酸をとるとダウン症の確率を下げる可能性があります
葉酸は先天異常のリスクを下げてくれるといわれるため、ダウン症にも効果があると考える人や研究者がいます。科学的に証明されてはいませんが、葉酸を摂取しておくに越したことはないでしょう。
2.ダウン症は染色体異常が原因で起こるものです

ダウン症は高齢出産にありがちな精子と卵子の劣化による染色体異常や、細胞分裂の際の染色体異常、遺伝などで起こります。ダウン症になってしまうと発達が遅く、顔立ちにも特徴があり、さまざまなリスクを負ってしまうのです。

3.葉酸は神経管閉鎖障害を防止すると言われています

葉酸の摂取によって、神経管閉鎖障害のリスクを50~70%下げてくれると考えられています。葉酸が防ぐのはあくまでこの神経管閉鎖障害であるため、発症の仕組みが違うダウン症を防いでくれるという証明はありません。

4.葉酸がダウン症を防ぐという論文も発表されています

海外では、結果として葉酸を摂取していたグループの方がダウン症の発症率が低かったとする論文も登場しています。もともと葉酸は妊婦には必須の栄養素です。

確実な予防とはいえませんが、葉酸を摂取しておいた方が結果的にはよい方向へと向かうでしょう。


仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

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院長 小松保則医師