妊婦が葉酸を過剰摂取すると、ぜんそくのリスクの懸念もあります


妊婦にとって、葉酸が子供の健全な成長のためには欠かせない栄養素であることは、すでに国でもしっかりとしたデータのもと確認されています。

しかしその一方で過剰摂取した場合に、子供のぜんそくなどのリスクがあるという研究も発表されているのです。

過剰摂取が問題になっているだけであるため、適量の摂取を心がけましょう。

葉酸の過剰摂取が、子供のぜんそくを招く可能性があります

葉酸を摂取してもよいか、妊婦が心配する原因は、2009年にオーストラリアの大学が発表した論文に端を発しています。この論文内では、557人の妊婦とその子供を調査したところ、妊娠中、葉酸を1日に1000μg以上摂取した妊婦の子供に、小児ぜんそくのリスクがある旨が報告されているのです。

そのため葉酸は妊婦が摂取するとかえって危険なのではないか、またどのように摂取したらよいのかと悩む人も出てきています。

結局、この衝撃的な論文についてはその後否定的な見解も出てきており、葉酸の摂取とぜんそくの関係については確かなものとは言い切れません。

しかし逆に葉酸の1日あたり1000μg以上の摂取が、体によい影響があるとしたデータもまた存在しません。

むしろ厚生労働省では1日あたりの葉酸の摂取上限を、900~1000μgとしています。論文内で挙げられている妊婦の葉酸の摂取量は1000μgを超えており、日本の基準でいえば過剰摂取にあたるのです。

葉酸そのものは、適切な摂取量であれば妊娠に必要不可欠な栄養素となります。葉酸が子供に影響する可能性を心配している場合、あくまで摂取上限を守るようにしていれば問題ないでしょう。

適量の葉酸が、妊娠初期に胎児によい影響を与えます


葉酸が妊婦によいとされている大きな理由の1つが、胎児の先天異常を防止してくれるという点です。

とくに葉酸は妊娠前~妊娠3ヶ月までに継続して摂取することで、胎児の神経管が形成されていく際に、胎児が神経管閉鎖障害を引き起こしてしまうリスクを5~7割も下げてくれると言われています。

神経管閉鎖障害を起こすと、無脳症という文字通り脳がないか、縮小した状態になってしまう状態になったり、あるいは二分脊椎といって脊椎管に収まるはずの神経が飛び出し、下半身麻痺や運動障害などを引き起こしたりしてしまいます。

この神経管閉鎖障害を持って生まれてくる子供は1万人に6人ほどの確率です。

確率は少ないものの、決して引き当てないとは言い切れない数字となっています。葉酸を適量摂取するだけで、この神経管閉鎖障害のリスクをぐっと引き下げることができるのです。

つまり葉酸の摂取を怖がって意図的に摂取しないでいることは、かえってリスキーなこととなります。

葉酸は造血作用もあることから、胎児に栄養を送ることや、出産後に母乳を出すこと、また自身の健康のためにも必要不可欠な存在です。

日頃から意識して、適量を摂取するようにしましょう。

妊娠3ヶ月を過ぎたら、過剰摂取に気をつけましょう

葉酸は妊娠初期において大きな役割を果たすため、妊娠前からの摂取が重要です。しかし妊娠初期を過ぎたらもう摂取しなくてもよいのかというと、そんなことはありません。

厚生労働省の基準では、妊婦の葉酸摂取量の目安を1日に480μgとしています。妊娠初期の食事プラス400μgよりは少なくなるものの、この480μgという数字は、一般的な摂取量の2倍の量にあたります。

そこで人によってはサプリメントを利用して不足しがちな栄養素を補おうと考える人もいるはずです。

葉酸が子供にぜんそくなどの悪影響を与えないかどうか心配な場合は、このサプリメントの摂り方に注意した方がよいでしょう。

葉酸は、緑黄色野菜などに含まれるため、バランスのよい食事をしていれば極端に不足することはありません。つまり普段の食事でもう一般の摂取基準である240μgはおおむね摂れています。

そこへもし、サプリメントを利用してたとえば500μgを摂取してしまうと、もう摂取上限まではわずかしかなくなってしまいます。そこに、妊娠中で増えた食事の分も含めると、過剰摂取になる危険性も出てくるのです。

このようなことを踏まえ、サプリメントの葉酸含有量に注意して摂取量を調節することが、お腹の赤ちゃんを守る秘訣となるでしょう。

(まとめ)妊婦が葉酸を摂ると子供がぜんそくになるって本当?

1.妊婦が葉酸を過剰摂取すると、ぜんそくのリスクの懸念もあります

葉酸そのものは妊婦や胎児に必要な栄養素であるため、摂取そのものは問題ありません。

ただし過剰摂取すると子供がぜんそくになるリスクが高まるという研究もあるため、摂取基準は守りましょう。

2.葉酸の過剰摂取が、子供のぜんそくを招く可能性があります

オーストラリアの研究で1日1000μg以上の葉酸摂取が、子供にぜんそくの危険を与えると報告されています。しかし日本でも摂取上限は1000μgまでです。

葉酸摂取の際は基準値を超えないよう、よく計算しましょう。

3.適量の葉酸が、妊娠初期に胎児によい影響を与えます

葉酸そのものは、胎児が神経管閉鎖障害という先天異常を引き起こすリスクを下げたり、胎児にたっぷりの栄養を送ったり、母乳を出したりすることに必要な栄養素です。

摂取しないのはリスキーであるため、日頃から意識して摂っていきましょう。

4.妊娠3ヶ月を過ぎたら、過剰摂取に気をつけましょう

妊娠初期の頃は比較的多めに要求される葉酸ですが、初期を過ぎるとやや控えめになります。それでも通常の2倍必要となるため、サプリメントを利用することになるでしょう。

サプリメントは過剰摂取しやすいため、食事と合わせて控えめに飲むのがおすすめです。


仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

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院長 小松保則医師