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甲状腺疾患が不妊症の原因となる場合があります
首の下方に位置する甲状腺からは、体の新陳代謝機能を司る甲状腺ホルモンが分泌されています。
甲状腺ホルモンは女性ホルモンバランスを保つ役割を担っており、卵胞を育てたり排卵を促したりする作用もあります。
そのため、甲状腺ホルモン分泌の異常により甲状腺疾患を発症すると、不妊症を招くリスクがあると考えられています。
甲状腺疾患には、全身に様々な症状が出るので、当てはまるものがあれば早めに病院を受診したほうがよいと言えます。
甲状腺疾患は甲状腺ホルモンの分泌量に異常が生じることで引き起こされます
甲状腺はちょうど喉仏の下にある蝶の羽のような左右対称の形をした臓器です。
甲状腺からは、甲状腺ホルモンが分泌され、体の成長や神経の発達、エネルギーの生成や糖代謝など体の代謝に関わる役割を担っています。
甲状腺ホルモンの分泌、合成に異常が生じると全身のホルモンバランスが乱れ、女性ホルモンの分泌異常をもたらし、不妊につながる場合があるのです。
甲状腺ホルモンの過剰分泌で起こるのが甲状腺機能亢進症で、中でも多いのがバセドウ病です。
逆に甲状腺ホルモンの分泌不足で起こるのが甲状腺機能低下症で、中でも多いのが橋本病です。
甲状腺ホルモンは卵胞の成長にも大きく関係しているため、甲状腺ホルモンが不足すると卵胞が育たず、排卵障害や無排卵などになる可能性があります。
さらに甲状腺ホルモンの分泌を促すために、プロラクチンの分泌量も増え、血中のプロラクチン濃度が高まる高プロラクチン血症を発症するリスクも高まります。
プロラクチンには、排卵抑制作用や着床阻害作用などがあるため、不妊症につながるリスクが高まるのです。
甲状腺疾患の症状が当てはまれば、早めに病院を受診しましょう
バセドウ病のような甲状腺機能亢進症は、甲状腺の働きが活発になるので全身代謝が高まり、様々な症状が現れます。
まず若い人に多いですが、首の前、ちょうど甲状腺のある部位が腫れます。
さらに動悸が激しくなることや、脈拍が速まり、年配の方だと不整脈が出ることもあります。
また手足が震えて力が入らない、暑がりになって汗をよくかく、喉が渇いて水をよく飲むようになります。
食欲が増して食べても空腹を感じますが、逆に体重が減って疲れやすくなる、腰痛や爪の先が白くなることもあります。
またイライラして物事に集中できない、眼球が飛び出す、月経不順なども起こります。
橋本病などの甲状腺機能低下症は、甲状腺の働きが鈍くなるので代謝が落ちてきます。
症状としては同じく首の前が腫れる、体が重くてだるい、無気力になって物忘れが激しくなる、声がかすれることがあります。
全身がむくんで寒がりになり、汗をほとんどかかない、皮膚がカサカサになります。
また食欲が減退してあまり食べないのに体重が増える、白髪や抜け毛が増える、便秘がちになる、月経時に経血が増えるなどの症状が出ることもあります。
自分で当てはまる症状があるかチェックしてみましょう。
甲状腺疾患は早期発見、治療により妊娠の可能性も十分あります
甲状腺疾患が不妊の原因になる場合があると、妊娠できないのでは?と不安に思う方もいるでしょう。
しかし甲状腺疾患は早期に発見し、適切な治療を行うことで甲状腺ホルモンを適量に保つことが可能なため、妊娠の可能性は十分あると言われています。
早期発見のためにも、気になる症状があれば病院を受診して検査を受けましょう。
病院ではまず血液検査にて、血液中の甲状腺ホルモン量や抗体の種類などを調べます。
超音波検査では、甲状腺の形状や大きさ、腫瘍の有無などを確認していきます。
甲状腺疾患の治療法は甲状腺ホルモン剤を用いた薬物療法が主に行われます。
甲状腺機能亢進症の場合は、甲状腺ホルモンの分泌を抑える薬の投与、甲状腺機能低下症の場合は、不足分の甲状腺ホルモンを補充する治療などが行われます。
こういった薬物療法で改善が見られないようであれば、場合によっては甲状腺の一部もしくは全部を摘出する手術が行われることもあります。
(まとめ)甲状腺疾患が不妊症の原因となるの?
甲状腺ホルモン分泌に異常がおこると、女性ホルモンバランスが崩れてしまい妊娠しにくい状態に陥るリスクが高まります。
甲状腺疾患特有の症状であてはまるものが多ければ、早期に病院を受診する必要があります。
甲状腺疾患には、甲状腺ホルモンの過剰分泌による甲状腺機能亢進症と、分泌不足による甲状腺機能低下症に分けられます。
甲状腺ホルモンバランスの乱れは、女性ホルモン分泌の異常にもつながるため、不妊症の原因となる場合があるのです。
甲状腺疾患の症状は甲状腺の腫れや消化機能の低下などがあり、疾患によって異なります。
当てはまる症状が多ければ、早めに内分泌系の内科を受診して詳しい検査を受けることが大事です。
病院では血液中の甲状腺ホルモン量や、超音波で甲状腺の大きさや形状を調べる検査が行われます。
甲状腺疾患の治療はホルモン剤を使った薬物療法が主となりますが、場合によっては甲状腺の一部を除去する手術が行われることもあります。