なかなか妊娠できない、流産を繰り返してしまうという悩みの背景には、黄体ホルモンの分泌不足が関係している場合があります。しかし黄体ホルモンの不足(黄体機能不全)は、適切な治療をすることで妊娠の可能性を高められるといわれています。
本記事では、黄体機能不全の原因や症状、治療法についてわかりやすく解説します。
目次
黄体ホルモン(プロゲステロン)の妊娠に関する3つの働き
黄体ホルモン(プロゲステロン)は、排卵後に卵巣の黄体と呼ばれる組織から分泌される女性ホルモンのひとつです。妊娠に欠かせない役割を持ち、排卵前に子宮内膜を増殖させる卵胞ホルモン(エストロゲン)と連携して機能します。
以下では、妊娠における具体的な黄体ホルモンの働きを説明します。
基礎体温を上昇させる
黄体ホルモンには、体温を上昇させる作用があります。排卵が起きると卵巣に黄体が形成され、黄体ホルモンの分泌が始まります。この働きによって基礎体温が上昇し、「高温期」が形成されます。
健康的な月経周期では、この高温期がおおむね2週間ほど続くのが目安とされています。毎朝基礎体温を記録すると体温グラフが低温期と高温期の2相に分かれるのは、黄体ホルモンのこの作用によるものです。
子宮内膜を厚くする
黄体ホルモンは、受精卵(胚)が着床しやすいよう、子宮内膜を厚く整える働きをします。子宮内膜は、子宮の内側にできるフカフカのベッドのような役割を果たす組織で、厚さが8mm以上あることが望ましいとされています。黄体ホルモンが十分に分泌されないと、子宮内膜の厚さが不十分となり、胚が着床しにくく、不妊となるリスクが高まります。
妊娠を維持し、流産リスクを下げる
黄体ホルモンは妊娠成立後も、妊娠を維持させるために重要な役割を果たします。子宮内膜を安定させるとともに、子宮が不必要に収縮しないよう抑制する働きがあります。これにより、妊娠を維持して流産リスクを下げる役割があるとされています。
また、母体の免疫反応を調整し、胎児を「異物」として拒絶しないようにサポートする作用もあるとされています。妊娠初期は胎盤が十分に機能するまでの間、この黄体ホルモンが妊娠を支える主役となります。そのため、黄体ホルモンの分泌が不足すると流産のリスクが高まる可能性があると考えられています。
黄体機能不全とは?原因や不妊との関係
黄体機能不全とは、黄体ホルモン分泌量の減少により、妊娠に適した子宮内膜の環境を維持できなくなる状態のことです。受精卵(胚)が着床しにくいことで、不妊症や不育症の要因になります。
また、黄体ホルモンの分泌が減少すると、基礎体温の上昇期間が短くなって生理周期が乱れます。さらに、子宮内膜がすぐに剥がれ落ちることで、不正出血が起こるケースもあります。
黄体ホルモンが原因の不妊についてはこちらの記事でも解説しています。
>「黄体ホルモンが原因の不妊とは?」を読む
黄体機能不全は、主に以下のような原因が挙げられます。
加齢によるホルモンの減少
黄体機能不全となる要因として、加齢にともなうホルモンの分泌の減少が考えられます。年齢を重ねると徐々に卵巣機能が低下します。卵巣機能の低下にともない、黄体ホルモンなどの女性ホルモンの分泌も自然に減少する場合があります。
卵巣機能の低下は一般的には更年期の症状のひとつです。年齢による自然な変化ですが、妊娠を希望されている方にとっては不妊のリスクとなります。
卵胞の未成熟によるホルモンの分泌不足
卵巣内で複数の卵胞が発育し、通常はもっとも成熟したひとつの卵胞のみが排卵されます。この成熟した卵胞から黄体が形成され、黄体ホルモンが適切に分泌される仕組みです。
しかし、卵胞が十分に育たない未成熟のまま排卵するケースもあります。その場合、形成される黄体の機能も不十分になり、黄体ホルモンが十分に分泌されないことがあります。
高プロラクチン血症による影響
黄体ホルモンの分泌量が減り、不妊症を招くリスクがある黄体機能不全は、高プロラクチン血症という病気が原因ともされています。
高プロラクチン血症とは、脳下垂体から分泌されるプロラクチンホルモンの血中濃度が高くなる病気のことです。プロラクチンホルモンは、本来、乳腺を発達させたり産後の子宮回復を促したりする重要な役割を果たします。しかし、プロラクチンの過剰分泌は排卵機能に影響を与え、黄体の形成を妨げることで黄体ホルモンの分泌を低下させ、黄体機能不全の要因になることもあるのです。
なお、高プロラクチン血症の場合、不妊治療よりも先に病気の治療を優先する場合があります。
甲状腺機能異常やホルモンバランス
遺伝性の内分泌疾患や甲状腺機能の異常も、黄体ホルモンの分泌に影響を与える原因のひとつです。甲状腺ホルモンは、黄体機能に深く関わるホルモンであり、甲状腺機能異常によりホルモン分泌が極端に減少すると、黄体機能不全になるリスクがあります。
また、甲状腺機能異常に限らず、日常的なストレスや偏った食生活、急激な体重変動なども、ホルモンのバランスを崩し、黄体の機能に悪影響を及ぼすことがあるとされています。
黄体機能不全の主な症状とセルフチェック
自覚症状に乏しいケースもありますが、以下の症状に当てはまる場合は黄体機能不全の可能性が考えられます。
- 高温期と低温期の平均温度差が0.3℃以内しかない
- 高温期が10日未満と短い
- 高温期の間に不正出血がある
- 月経周期が短い、または月経不順が続いている
黄体ホルモンの血中濃度は、黄体期に5〜30ng/mlが正常値とされており、それ以外の時期は1ng/ml以下と低い値に留まるのが一般的です。
上記に複数当てはまる、またはなかなか妊娠に至らない、流産を繰り返す状況が続いている場合は、黄体機能不全が関係しているかもしれません。
基礎体温の変化だけでは確定的な診断はできないため、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診されることをおすすめします。
黄体機能不全は生活習慣やサプリメントで改善する?
生活習慣の改善やサプリメントの摂取だけでは、黄体機能不全を改善することは難しいとされています。もちろん、生活習慣の改善は、ホルモンバランスを整えるうえで意味のある取り組みです。しかし、それだけで黄体機能不全そのものを根本的に解消するのは難しいのが実際です。
また、特定のサプリメントで黄体機能不全を改善するという効果は確認されていません。黄体機能不全の原因はさまざまあり、根本的な改善のためには、専門のクリニックで検査を受け、原因に応じた適切な治療をおこなうことが重要です。
不妊治療における黄体ホルモン補充療法
黄体ホルモンの分泌量を増やすことで、妊娠の可能性を高めることにつながります。不妊治療において、内服薬や注射で黄体ホルモンを補うのが「ホルモン補充療法」です。
人工授精や体外受精などの不妊治療のプロセスのなかで、並行しておこなわれるのが一般的です。ホルモン値や子宮内膜の状態を確認し、最適な方法が選ばれます。
内服薬(デュファストン)
黄体ホルモンを内服薬で補う方法の代表的な薬剤が、デュファストンです。錠剤を服用するだけで手軽にホルモンを補充できますが、消化管を経由して吸収されるため、体内への吸収率には個人差があります。
不妊治療においては、タイミング法や人工授精、体外受精などのプロセスに並行して処方されることが多く、着床を促す環境を整えたり、妊娠初期の維持をサポートしたりする目的で用いられます。
デュファストンについてはこちらの記事でも解説しています。
>「不妊治療におけるデュファストンの効果は?副作用や飲み方についても解説」を読む
注射(排卵誘発剤・hCG注射)
排卵誘発剤は、採卵前に卵胞を複数育てることを目的に処方されますが、十分に成熟した卵胞が排卵されることで、排卵後の黄体機能を底上げする効果も期待できます。
hCG注射は排卵前後のタイミングで投与することで、黄体そのものを刺激してプロゲステロンの分泌を促す作用があります。
膣坐薬
膣坐薬は、膣に直接薬剤を挿入して黄体ホルモンを補う方法です。膣から投与することで、黄体ホルモンが子宮に直接届くため、内服薬と比べて子宮局所のホルモン濃度を効率よく高められる特徴があります。また、肝臓への負担が比較的少ない点もメリットのひとつです。
体外受精における融解胚移植の周期では、黄体機能不全の有無に関わらず、移植前から膣坐薬による黄体ホルモンの補充をおこないます。移植後も着床の促進や妊娠の維持を目的として継続して使用され、妊娠が確認された場合は妊娠10週ごろまで補充を継続します。
不妊でお悩みの方は六本木レディースクリニックへ
黄体ホルモンは妊娠において欠かせない要素です。不妊治療では、内服薬・注射・膣坐薬などを用いて黄体ホルモンを補い、妊娠を目指します。
当院では、検査結果や身体の状態を丁寧に確認したうえで、患者さまお一人おひとりに適したオーダーメイドの治療を提供しています。「なかなか妊娠できない」「流産を繰り返してしまう」「クリニック選びで迷っている」など、不妊でお悩みの方は、看護師による無料相談もご用意しています。まずはお気軽にご相談ください。

