子宮内膜症と診断されて不安を感じていませんか?「子宮内膜症になると妊娠しにくい」といわれていますが、必ずしも妊娠できないわけではありません。早期発見と適切な治療によって妊娠の可能性を高められるケースも多くあります。
本記事では、子宮内膜症と妊娠の関係や治療の選び方について解説します。
目次
子宮内膜症とは?主な4つの病態
子宮内膜症は、子宮の内側以外の部位に内膜に似た組織が増殖する病気です。月経のたびに悪化する傾向があり、下腹部痛や腰痛、性交痛などを引き起こします。また、子宮周りの組織と癒着が生じ、不妊の原因になることもあります。
組織ができる部位や増殖の仕方などによって、子宮内膜症は主に以下の4つの種類に分けられます。
腹膜子宮内膜症
腹膜子宮内膜症は、子宮内膜症のなかでもっとも基本的な病変とされており、数ミリほどの病変が腹膜や臓器の表面に発生します。経腟超音波検査やMRI検査などの画像検査では発見が難しく、開腹または腹腔鏡手術でないと正確な診断ができないケースも多くみられます。
また、自覚症状に乏しいため、早期の段階では気づかないことが多いとされています。別の疾患の検査時に偶然発見されたり、症状が進行して腹痛や月経痛の悪化が起こってから初めて見つかることも少なくありません。
チョコレート嚢胞
チョコレート嚢胞(卵巣チョコレート嚢胞)は、卵巣の内部に経血が排出されず溜まり続けることで、袋状の腫瘍が形成される病変です。溜まった血液が時間とともに変性し、チョコレートのような焦げ茶色になることからこの名で呼ばれています。
月経のたびに血液が蓄積して進行するため、放置すると嚢胞が大きくなっていきます。強い月経痛をともなうことが多く、また卵巣機能に影響を及ぼすことがあるため、妊娠を希望する場合は治療方針を慎重に検討する必要があります。
深部子宮内膜症
深部子宮内膜症は、腹膜の表面にとどまらず、仙骨子宮靱帯や腸管周囲などの深部組織まで生じる病変です。子宮と直腸の間にあるくぼみ(ダグラス窩)の奥に発生するケースが多く、子宮と直腸が癒着した状態がよくみられます。
腹膜の深部に生じるため、発見や手術が難しい病変です。強い月経痛や性交痛、排便痛、慢性的な骨盤痛などをともなうことがあります。
子宮腺筋症
子宮腺筋症は、現在では厳密に子宮内膜症のひとつとは分類されていませんが、病態は子宮内膜症と共通する部分が多い疾患です。子宮の壁を構成する平滑筋組織の中に、子宮内膜に類似した組織が入り込むことで発症します。
月経痛や経血量の増加といった症状が現れる他、病変がある部分の子宮筋層が肥厚するため、進行すると子宮が肥大することもあります。
子宮内膜症になると妊娠しにくい理由
子宮内膜症を発症している場合、妊娠しにくい傾向にあります。実際、子宮内膜症の患者の30〜50%程度は、不妊症になるとされています。
具体的には、以下のような理由が妊娠の妨げになります。
卵管・卵巣周囲の癒着によるピックアップ障害
子宮内膜症によって骨盤内に癒着が生じると、卵管の動きや卵子と精子の受精が妨げられる場合があります。
通常、排卵期に卵巣から飛び出した卵子は、卵管の先端にある卵管采がキャッチして卵管内にピックアップされます。しかし癒着によってこの動きが阻害されると、卵子をうまく取り込めない「ピックアップ障害」が起こるケースがあるのです。また癒着によって卵管が塞がれると、卵管内で精子と卵子が出会うことが困難になり、受精そのものが難しくなります。
卵巣予備能(AMH)や卵子の質の低下
特に卵巣に発生するチョコレート嚢胞の場合、卵巣機能や卵子の質が低下する要因になります。卵巣に慢性的な炎症が起きやすくなり、その影響で卵子の数や質に影響が及ぶとされています。
実際、卵巣に子宮内膜症を持つ方のAMH値(卵巣予備能の数値)は、年齢に関わらず低くなる傾向があります。採卵できる卵子の数が減少し、体外受精などの不妊治療においても妊娠率に影響が出ることも想定されます。
性交痛などの痛みで夫婦生活が困難
子宮内膜症では、病変の部位によって性交渉時に強い痛みをともなうことがあります。特に、子宮と直腸の間(ダグラス窩)に病変が生じている場合、性交痛が起こりやすいといわれています。
痛みが続くと積極的な性交渉が難しくなるケースがあり、妊娠の機会そのものが減少することで、不妊につながることもあります。
子宮内膜症でも自然妊娠はできる?
子宮内膜症であっても、早期発見で適切な治療をおこなえば、自然妊娠できる可能性はあります。一般的には、薬物療法や手術によって改善されるケースも多くあります。
ただし、自然妊娠の確率は、正常な女性に比べると低下することは事実です。通常の場合、月経周期ごとの自然妊娠の確率が15〜20%程度あるのに対し、子宮内膜症の患者では、2〜10%程度にとどまるとされています。
子宮内膜症の進行程度や年齢によっても、妊娠率は変わります。
薬物療法では、薬によって閉経状態を作る、もしくは妊娠状態を作り、排卵や月経を一時的に止めることで病気の進行もストップさせるという方法があります。
手術の場合は、直接病巣を除去します。
月経がある限り進行してしまう病気のため、子どもを望む方は、なるべく妊娠を急ぐ、もしくは早い段階での治療を検討したほうがよいでしょう。
子宮内膜症の治療と不妊治療、どちらを優先すべき?
子宮内膜症は、病変の広がりや癒着の程度によって進行段階がⅠ期〜Ⅳ期に分類されます(ビーチャム分類)。程度によっては、治療や手術が優先される場合がありますが、年齢や身体の状態によって不妊治療が優先と判断されることもあります。
以下では、子宮内膜症の場合の判断基準や治療方針について解説します。
参考:公益社団法人日本産婦人科医会「(4)子宮内膜症性不妊への対応」
子宮内膜症の治療を優先するケース
子宮内膜症のなかでも、特にチョコレート嚢胞が大きく強い痛みをともなう場合や、広範囲の癒着が認められる場合は、まず治療が優先されるケースがあります。治療の方法は大きく「薬物療法」と「手術」の2つがあり、症状や妊娠の希望などを踏まえて選択されます。
薬物療法
子宮内膜症の痛みがともなう場合、まず鎮痛剤で痛みに対処するケースがあります。それだけでは効果が十分でない場合は、GnRHの促進剤(アゴニスト)や拮抗剤(アンタゴニスト)を用いてエストロゲンの分泌を抑え、子宮内膜症の進行を抑制する場合があります。
ただし、ホルモン剤による治療中は、妊娠ができない点に注意が必要です。症状が緩和されてから、不妊治療を開始する流れになるケースが多いですが、その分の時間がかかることになります。
手術
チョコレート嚢胞が7cm以上ある場合は、妊娠後の破裂・感染リスクや、体外受精の採卵時のリスクなどを考慮して、手術が優先されるケースがあります。また7cm未満であっても、痛みが強い場合や、卵巣予備能が十分に保たれている若年層では、4cm以上を目安に手術を検討します。
なお、手術では卵巣の嚢胞部分を切除することから、卵巣機能が低下するリスクもあります。妊娠を希望する場合は、年齢やAMH値を考慮し、医師と十分に相談したうえで治療方針を決められます。
不妊治療を優先するケース
悪性の可能性が低く、症状も比較的軽度で卵管に癒着がないケースでは、不妊治療を優先する場合があります。チョコレート嚢胞のサイズが比較的小さい場合は、妊娠をしても問題は少ないとされています。
また、月経が止まる(妊娠する)ことで、症状も緩和されることも多いため、早めの妊娠を第一優先として不妊治療を検討することがあります。
年齢が35歳以上で不妊期間が3年以上の場合などは、積極的に不妊治療をおこなう必要があるとされています。
子宮内膜症の不妊治療
子宮内膜症で不妊治療が優先されるケースでは、年齢・不妊期間・病変の程度などによって、以下のように推奨されるアプローチは異なります。
軽度の子宮内膜症、35歳以下:タイミング法・人工授精
日本産婦人科医会の指針によると、30歳以下で不妊期間が短く、他に不妊の原因が認められない場合は、まず経過観察やタイミング法が第一選択とされています。
30〜35歳では、排卵誘発や人工授精、またはその併用療法を検討します。複数回おこなって妊娠に至らない場合は、体外受精(ART)へのステップアップを考慮します。
重度の子宮内膜症、38歳以上:体外受精・顕微授精
重度の子宮内膜症(ステージⅢ・Ⅳ)の場合、癒着や卵管因子により、自然妊娠が難しく、人工授精の効果が見込めないことがあります。また、日本産婦人科医会の指針では、年齢が35〜38歳以上の場合は、体外受精(IVF)または顕微授精(ICSI)を第一選択とするとされています。
なお、子宮内膜症が重度の場合、手術を優先するケースもありますが、クリニックや医師の方針によって判断が異なることがあります。癒着の剥離や病巣の除去・焼却によって、妊娠率が向上すると考えられることもあるため、慎重な判断が必要です。
子宮内膜症による不妊は早期治療がカギ
子宮内膜症は妊娠しにくくなる一因になりえますが、必ずしも妊娠できないわけではありません。早期発見と適切な治療で、自然妊娠や不妊治療の可能性を高められるケースも多くあります。月経痛がだんだんひどくなってきた、性交痛があるといった症状が続く場合は、子宮内膜症のサインかもしれません。自覚症状が気になる方は、放置せず早めに婦人科を受診することが大切です。
六本木レディースクリニックは、人工授精から体外受精・顕微授精まで取り扱う不妊の専門クリニックです。「まず相談したい」という方には、六本木レディースクリニックの看護師による無料相談をご活用いただけます。子宮内膜症や不妊治療に関するお悩みや疑問は、お気軽にご相談ください。

