心理的な切迫感は心身の疲弊につながる

不妊症治療を続けていると、今度こそという期待を抱く一方、いつ成果が出るのかという不安も感じます。不妊症治療をしているのに、なかなか妊娠に至らず、「生理に気づくたび、泣いてしまう」「友人から出産の知らせが届き、落ち込んだ」「夫と険悪な雰囲気になった」といった状況に陥り、心理的に追い詰められる人も少なくありません。

厚生労働省でも、不妊症治療で生じる悩みについて、身体面や精神面、経済面の負担感とともに、妊娠・出産に至らない辛さ、夫婦間の関係性の変化、生活と治療の調整、治療の休息や終結の決断などで、さまざまな悩みが生じると分析し、「心理的な切迫感はジェットコースターに例えられることもあるほど心身とも疲弊する」と指摘しています1)

こうした悩みに対応するため、全国の自治体では、それぞれ不妊専門の相談窓口を設置して対応に当たっています。精神的に辛いと感じたら、こうした窓口を利用するのも一つの方法です。厚生労働省の下記のサイトに、不妊に関して相談できる全国の窓口が紹介されています。医学的な問い合わせや心の悩みの相談まで、医師・助産師などの専門家が対応するほか、診療機関ごとの不妊症治療の実施状況も提供しています。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000181591.html

自治体によっては、相談窓口の設置だけでなく、悩みをもつ人同士の交流会を開催しているところもあります。この分野で先進的な取り組みをしている大阪府不妊専門相談センターでは、1のようなテーマで交流会を実施しています(2016年度の実施例)1

表1 大阪府における不妊の悩みを抱える人同士の交流会(2016年度実施例)

厚生労働省, 不妊のこと、1人で悩まないで-「不妊専門相談センター」の相談対応を中心とした取組に関する調査より抜粋. 平成30年1月

https://www.mhlw.go.jp/iken/after-service-20180119/dl/after-service-20180119_houkoku.pdf

心理的なサポートを行う専門カウンセラー

自治体による相談窓口とは別に、不妊症治療を受ける患者の心理的なサポートを手がける日本不妊カウンセリング学会や日本生殖心理学会が、それぞれ専門家を育成する取り組みを行っており、資格認定制度を設けています。

日本不妊カウンセリング学会は「不妊カウンセラー」、日本生殖心理学会は「生殖心理カウンセラー」の養成講座を開講し、試験を実施して合格者に資格を授与しています。これらのカウンセラーは、不妊で悩んでいる人々に対して、妊娠・出産や不妊に関する適切な情報を提供し、最適な不妊症治療を選択できるように不妊カウンセリング・ケアを行います。

不妊症治療を行うクリニックでも、こうした資格取得者をカウンセラーとして配置し、相談できる体制を整えているところがあります。

このほか、不妊症治療の体験者同士が情報を交換するサイトがあります。体験者ならではの言葉に安心したり、気づかされたりすることがある一方、情報の正確性や妥当性などに問題がある可能性もあるので、利用する場合は、自分にとって有益な情報かどうかを見極め、取捨選択する冷静な判断が必要です。

 

1)厚生労働省, 不妊のこと、1人で悩まないで-「不妊専門相談センター」の相談対応を中心とした取組に関する調査. 平成30年1月

https://www.mhlw.go.jp/iken/after-service-20180119/dl/after-service-20180119_houkoku.pdf

 

《参考資料》

山本篤ほか, HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY. 2018; 25(3): 37-41

平山史朗, 不妊治療におけるメンタルケア. 精神科治療学. 2013; 28(6)



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

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院長 小松保則医師