不妊治療は無排卵でも可能です


無排卵のように重症な排卵障害の場合でも、排卵誘発剤を注射するなどの不妊治療法があります。
排卵障害の症状も原因も種類ごとに異なりますから、まずは障害の原因を探ることが解決への糸口になるでしょう。

無排卵だからといって、必ずしも妊娠をあきらめることはありません。
検査を受けてから、医師とどのような治療が適切か相談することができます。

薬で排卵を誘発する治療法があります

排卵障害には、排卵誘発剤を用いる治療法があります。
軽症の場合は、経口タイプの排卵誘発剤が処方されるケースが一般的で、重症の場合でも、排卵誘発剤を注射するなどの方法で無排卵の治療ができます。

排卵誘発剤を用いる治療は、排卵誘発法と呼ばれています。
妊娠が成立するためには排卵が不可欠ですから、スムーズな排卵が行われないか無排卵の場合は問題です。

このため内服薬や注射によって排卵を人工的に起こさせるのです。
排卵は、脳の視床下部にあるホルモンの中枢からGnRHというホルモンが分泌されることから始まります。

視床下部の真下にある脳下垂体がGnRHによって刺激されると、今度は脳下垂体から2種類の卵巣刺激ホルモンが分泌されます。
FSHと呼ばれる卵胞刺激ホルモンと、LHと呼ばれる黄体化ホルモンです。

この2種類のホルモンが卵巣を刺激することによって、卵子が排出されます。
排卵があるかどうかはわかりにくいことのようですが、実は排卵が起こっていない場合は必ず月経異常があるといいます。

何ヶ月も月経がなかったり、生理が遅れていたりするようなときは、排卵するために日数が多くかかってしまっているのかもしれません。
出血があっても、排卵を伴わないケースもあります。

この場合、頻繁に出血していたり、出血が長時間続いたりするような症状が出ている可能性があります。

こうした異変に気付き、早めに排卵についての検査を受けてみることも、不妊治療の有効性につながるでしょう。

排卵誘発剤には複数の種類があります


排卵を人工的に誘発する治療法を行う場合、主に3つの状況が目安となります。
まったく排卵していないことから月経が3ヶ月以上止まっている場合や、月経が遅れがちな場合、自力で排卵はしていてもさらに薬で多くの排卵を起こして妊娠の確率を高めようとする場合です。

排卵誘発剤にも、複数の種類があります。
排卵障害が軽症の場合に用いられることが多いのは、クロミフェンやシクロフェニールです。

いずれも、ホルモンの中枢である脳の視床下部に働きかけて、排卵を人工的に促します。
クロミフェンは月経の3~8日目から1日に0.5~3錠を5日間服用しますが、副作用のリスクもあります。

これに対して、シクロフェニールはクロミフェンより穏やかな効果に期待できるのが特徴です。
クロミフェンやシクロフェニールのような経口薬にて排卵しても妊娠に結びつかなかった場合、排卵誘発剤を注射する治療法を受けることができます。

月経開始後5日目から筋肉注射することで、卵巣の卵胞に働きかけて卵胞を発育させることができるのです。
注射の方法や薬剤の量などについては、無排卵の原因によっても加減されます。

また経口薬と併用されるケースもあります。
排卵誘発剤の注射は、超音波で卵胞のサイズや量をモニタリングしながら、タイミングを計って行うのが肝心です。
排卵が起こるのは、注射した後36~48時間後です。

無排卵の原因別に治療法があるのが頼りになります

排卵障害の原因は、人によってさまざまです。
排卵誘発療法は、無排卵の原因別に治療法の種類が選ばれます。

たとえば母乳を出す働きがあるホルモンプロラクチンが多く分泌されてしまう高プロラクチン血症では、排卵がうまくいかないことがあります。

とくに原因が見つからないこともあるものの、下垂体の腫瘍や甲状腺機能低下症によって影響を受けている可能性も大です。

突発性の場合は、麦角製剤と呼ばれる薬を用いる治療法があります。
プロラクチンの数値が低下して、排卵がうまく可能性が出てきます。

多嚢胞卵巣の場合は、経口薬のクロミフェンから始めて、効果が出なければ糖代謝を改善するメトホルミンという薬などを併用します。

段階的な治療が行われますが、どうしても排卵が難しい場合は、腹腔鏡手術にて卵巣に小さな穴を開けることで排卵を促します。
手術をすると効果が1~1年半続くため、妊娠のチャンスを長期間に延ばすこともできるでしょう。

卵巣の卵胞が育たない、あるいは卵胞がない卵巣性無排卵症の場合は、カウフマン療法やスプレキュア・ナサニール・リュープリンなどの薬を用いる治療法があります。

ただし卵胞がない場合は排卵が不可能ですから、第三者から提供された卵子を用いての体外受精が残された妊娠の方法です。

卵胞があっても育っていないときは、下垂体が卵巣に指示を送り、FSHという性腺刺激ホルモンを大量に分泌させようとします。

FSHは卵胞を大きくできるものの、大量に分泌され続けていると卵巣でFSHの受容体が減少してしまうのが問題です。

こうなると、卵胞の反応が鈍くなり、排卵しにくくなるわけです。
FSHの量が低下すれば、排卵する可能性が出てきます。

そこで卵胞ホルモンと黄体ホルモンを周期的に服用してFSHを低下させるのが、カウフマン療法です。
卵巣がFSHに反応するようになったら、別の療法で排卵を起こすように働きかけます。

(まとめ)無排卵と診断されても不妊治療はできる?

1.不妊治療は無排卵でも可能です

排卵障害の原因や症状は複数あり、検査をしてみることが解決への一歩となります。

無排卵でも排卵誘発剤を用いるなどの方法を用いて不妊治療を行う事ができるため、あきらめる必要はないでしょう。

2.薬で排卵を誘発する治療法があります

排卵障害には、排卵誘発剤を用いる治療が可能です。
軽症では経口薬で、重症の場合は注射で排卵を誘発します。

無排卵には原因があり、必ず月経に異常が出ているといわれます。
自覚症状に早めに気付き、排卵検査を受けてみることも大切です。

3.排卵誘発剤には複数の種類があります

排卵誘発療法を行うことが決まったら、複数の排卵誘発剤の中から適切な種類を選びます。

軽症の場合は経口薬が用いられることが多く、排卵障害が重い場合は注射による投薬が行われることもあります。

4.無排卵の原因別に治療法があるのが頼りになります

排卵障害の治療は、原因別に異なる方法で行います。
いくつかの治療法を組み合わせることもあり、段階的に治療が行われることもあります。

ただし卵巣に卵胞がない場合は、第三者からの卵子提供で体外受精を行うのが唯一の妊娠方法です。



仕事や趣味を続けながら、無理のない不妊治療を

監修医情報

六本木レディースクリニック
小松保則医師
こまつ やすのり/Yasunori komatsu

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経歴
帝京大学医学部付属溝口病院勤務
母子愛育会総合母子保健センター愛育病院
国立成育医療研究センター不妊診療科
六本木レディースクリニック勤務
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 専門医
日本産科婦人科学会
日本生殖医学会
日本産婦人科内視鏡学会

運営者情報

運営クリニック 六本木レディースクリニック
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院長 小松保則医師